急性期・回復期・慢性期の違い。看護師の役割・やりがい・キャリアプラン

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病棟は主に急性期・回復期・慢性期の3つに分類され、それぞれ特徴や魅力が異なります。今回は各区分の定義や特徴に加えて、看護師の役割、仕事内容、やりがいなどをまとめました。それぞれの違いを理解して、キャリアプランを検討しましょう。

医療機能3分類(急性期・回復期・慢性期)の定義

病棟は急性期・回復期・慢性期のように医療機能で分類されます。それぞれの定義には、以下のような違いがあります。

医療機能の名称 医療機能の内容
急性期 急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能
回復期 急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能
慢性期 長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能

引用:地域医療構想の概要 厚生労働省

発病した患者さんの状態は急性期から回復期、そして慢性期へと移行します。各区分に応じた最適な治療を提供できるように病棟単位で医療機能が分かれています。

急性期から回復期、慢性期への移行過程

そのため、各区分で看護師の役割や仕事内容・やりがいなどに違いが見られます。
各医療機能における看護師の役割ややりがいを解説します。

迅速な対応が求められる「急性期」

急性期とは「病気になりはじめの時期」を指します。患者さんの症状が重篤で、緊急的な治療や迅速な対応が必要になります。

急性期の看護師の役割ややりがい

急性期の看護師の役割は、生命の危機にある患者さんに対し、医療処置や看護ケアを提供することです。全身状態が安定せず集中的な治療や観察が必要な患者さんが多いため、素早い状態把握や的確なアセスメントなど迅速な対応が求められます。

生命を維持するために人工呼吸器やドレーンの管理、輸血・点滴の投与などを行う機会が多く、専門的な知識や経験が必要です。検査や処置の数が多く常に時間に追われることから、綿密なスケジュール管理やマルチタスクスキルも要求されます。

急性期の患者さんは突然の容体悪化のリスクが高いため、急変対応のスキルも必須です。それに加えて、危機的状況に置かれてショックを受ける患者さんとその家族の精神的ケアなども行います。

急性期看護は、求められるスキルが高い分やりがいを強く感じられます。高度な知識や最新の医療技術を磨くことで成長を実感でき、患者さんの急変時に即座に対応することで「命を救った」という充実感が得られるでしょう。
また、生死の瀬戸際にいる患者さんが回復していく様子を間近で見られるため、「状態改善に貢献できた」という達成感を得られることも多いです。

急性期の看護師の働く場所と働き方

急性期看護に携わるためには、急性期病棟・救急外来・ICU/HCUなどで勤務すると良いでしょう。2交代制、または3交代制のシフト勤務を採用している施設が多いです。多忙であり、残業が多くなる傾向にあります。詳しくは個別記事で解説していますので参考にしてください。

急性期に向いている人の特徴

忙しい中でも高度なスキルを求められる急性期看護には、以下のような人が向いていると言えます。

  • ストレスやプレッシャーに負けない強いメンタルを持っている
  • 患者さんの状態が急変した際に冷静に対応できる
  • 高度なスキルを身につけたいという向上心がある

急性期では、多忙な状況にも負けない強い精神力や冷静さを持つことが大切です。それに加えて「スキルアップしたい」という向上心を併せ持つ人こそが、急性期看護に向いていると言えるでしょう。

治癒を目指し支援する「回復期」

回復期とは「急性期治療を終え、病状が安定し始めた時期」を指します。在宅復帰に向けた支援が必要になります。

回復期の看護師の役割ややりがい

回復期の看護師の役割は、急性期治療を終えて在宅復帰・職場復帰を目指す患者さんの治癒や退院をサポートすることです。退院後の生活を見据えたADL支援や、退院を円滑にするための多職種連携などが求められます。

バイタルチェックやアセスメントを行い、患者さんがリハビリを安全に行えるのかを判断します。また、リハビリで獲得した能力を患者さんが日常生活で発揮できるように「自分でできることはしてもらう」など、能力を伸ばすためのコミュニケーションも必要です。

回復期では、医師・看護師・ソーシャルワーカーなど、多職種が連携して退院支援を進めます。その中でも看護師は、患者さんと多職種との橋渡し役として活躍しています。

退院後の生活に不安を抱える患者さんとその家族が多いため精神的サポートを行います。会話を通して不安の軽減を図りつつ、患者さんとその家族のニーズを引き出すことも重要な役割だと言えるでしょう。

回復期看護では、元気になった患者さんが無事に退院していく姿を間近で見られる喜びや、多職種連携の中心となって退院準備を進めることで充実感を得られます。また、退院支援を通して患者さんやその家族と深い信頼関係を築けた時に、やりがいを感じることが多いです。

回復期の看護師の働く場所と働き方

回復期看護に携わりたい場合、回復期リハビリテーション病棟で勤務すると良いでしょう。2交代制、または3交代制のシフト勤務を採用している施設が多いです。落ち着いた環境で、残業は少ない傾向にあります。

回復期に向いている人の特徴

多職種と連携しながら患者さんの退院を支援する回復期看護には、以下のような人が向いていると言えます。

  • 患者さんやその家族と良好な関係を築ける
  • 多職種との連携を大切にできる
  • 無事に退院する姿に喜びを感じる

患者さんとその家族や多職種と密に関わり、積極的にコミュニケーションをとれる人が回復期に向いています。それに加えて、患者さんが無事に退院することに強く喜びを感じられるなら、特に相性が良いと言えるでしょう。

長期的な治療を支援する「慢性期」

慢性期とは「病状が比較的安定している時期」を指します。病気の再発予防や体力の維持を目指した、長期にわたる支援が必要になります。

慢性期の看護師の役割ややりがい

慢性期の看護師の役割は、残りの人生を病気と共に生きていく患者さんの療養生活をサポートすることです。治癒が難しく入院期間が長い患者さんの日常生活の支援や合併症予防を行います。施設内で最期を迎えた時には、看取りやグリーフケアにも携わります。

慢性期の患者さんは、病気の進行が緩やかで気づきにくいため、小さな病状の変化を見逃さないことが大切です。特に、寝たきりで会話ができない患者さんを担当する時には、バイタルサインや非言語的コミュニケーションから全身状態を把握する鋭い観察力が求められます。

ADLが低下した患者さんが多いため、経管栄養・吸引などの医療的処置を行うことが多いです。また、褥瘡予防のための体位調整や、食事介助・排泄介助などの日常生活支援も行います。

患者さんが最期までその人らしい生活を送れるように家族や介護者と連携することも重要な役割です。積極的にコミュニケーションを取り、深い信頼関係を築くことが求められます。

慢性期看護では、患者さんとその家族にじっくり寄り添える充実感が得られます。患者さんが尊厳を保ちながら最期を迎えられるようチームで協力する日々に、強いやりがいを感じることも多いです。

慢性期の看護師の働く場所と働き方

慢性期看護に携わるためには、慢性期病棟・高齢者介護施設などで勤務すると良いでしょう。2交代制、または3交代制のシフト勤務を採用している施設が多いです。落ち着いた環境で、残業は少ない傾向にあります。詳しくは個別記事で解説していますので参考にしてください。

慢性期に向いている人の特徴

ADLが低下した患者さんを長期で支える慢性期看護には、以下のような人が向いていると言えます。

  • 一人ひとりの患者さんにじっくり関わりたい
  • 小さな変化を敏感に察知できる
  • 日常生活の支援にやりがいを感じる

慢性期の患者さんとの関わりは長期にわたるため、患者さんの状態改善のために日々コツコツと取り組むことが大切です。細やかな観察をしながら日常生活の支援に尽力できる人は、慢性期看護に向いていると言えるでしょう。

急性期・回復期・慢性期それぞれから描けるキャリアプランを解説

各分野で働き始めた後のキャリア形成は多岐に渡ります。
ここでは、各区分から描けるキャリアプランについて、認定看護師資格・専門看護師資格のそれぞれを一例ずつ挙げて紹介します。

急性期から描けるキャリアプラン

急性期から描けるキャリアプランの一例を以下に示します。

クリティカルケア認定看護師

クリティカルケア認定看護師は、従来の救急看護認定看護師と集中ケア認定看護師を統合した新しい認定看護分野です。

クリティカルケア認定看護師の役割を日本看護協会は以下のように定義しています。
(※一部抜粋)

  • 急性かつ重篤な患者の重篤化回避と合併症予防に向けた全身管理
  • 安全・安楽に配慮した早期回復支援

引用:日本看護協会「認定看護師」

急性期にある患者さんの症状および重症度・緊急度に応じて、適切な初期対応や全身管理を行います。また、患者さんとその家族に対し、心理・社会的状況をアセスメントし、必要なケアを提供します。クリティカルケア分野における良い役割モデルとなることで、看護師の指導役として活躍することも可能です。

認定看護師の資格取得方法については、下記の記事を参考にしてください。

急性・重症患者看護専門看護師

急性・重症患者看護専門看護師の役割を日本看護協会は以下のように定義しています。

緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。

引用:日本看護協会「専門看護師」

急性期にある患者さんとその家族の問題点を明らかにし、ケア計画の立案や評価、意思決定支援などを行います。また、看護師や多職種のコンサルテーションおよび看護研究支援を行うことも重要な役割の1つです。専門的な知識を生かしてリーダーシップを発揮することで、急性期領域におけるチーム医療の促進や支援体制の構築などにも携わります。

専門看護師の資格取得方法については、下記の記事を参考にしてください。

回復期から描けるキャリアプランの一例

回復期から描けるキャリアプランの一例を以下に示します。

認知症看護認定看護師

認知症看護認定看護師の役割を日本看護協会は以下のように定義しています。
(※一部抜粋)

  • 認知症の症状マネジメント及び生活・療養環境の調整
  • 認知症の病期に応じたコミュニケーション手段の提案と意思決定支援

引用:日本看護協会「認定看護師」

認知症の発症から終末期まで、各期に応じたケアの実践や体制づくりを行います。また、認知症の患者さんとの関わり方に悩む家族や看護師に対し、適切なサポートを行います。回復期では、認知症が原因で退院困難となる事例がよくあるため、多職種連携の中心となり退院支援を進める機会も多くあります。

家族支援専門看護師

家族支援専門看護師の役割を日本看護協会は以下のように定義しています。

患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。

引用:日本看護協会「専門看護師」

患者さんとその家族のセルフケア機能を高めることで、家族全体が主体となって問題解決できるように支援します。また、家族内の役割調整を行い療養環境を整えることで、患者さんの在宅復帰を円滑に進めます。家族支援に関連する研究や教育に携わり、家族看護学分野の発展に寄与することも重要な役割の1つです。

慢性期から描けるキャリアプランの一例

慢性期から描けるキャリアプランの一例を以下に示します。

摂食嚥下障害看護認定看護師

摂食嚥下障害看護認定看護師の役割を日本看護協会は以下のように定義しています。
(※一部抜粋)

  • 摂食嚥下機能とその障害の評価
  • 摂食嚥下機能の評価結果に基づく適切な援助・訓練方法の選択

引用:日本看護協会「認定看護師」

患者さんの摂食嚥下機能の評価を行い、口腔ケア方法や食事摂取方法、食事内容の調整を行います。また、誤嚥性肺炎、窒息、栄養低下、脱水などを予防するため、適切な訓練方法を選択し実施します。慢性期では、摂食嚥下機能が低下した患者さんが多いため、専門知識を生かして活躍できる機会が特に多いと言えるでしょう。

慢性疾患看護専門看護師

慢性疾患看護専門看護師の役割を日本看護協会は以下のように定義しています。

生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う。

引用:日本看護協会「専門看護師」

慢性疾患を抱える患者さんとその家族に対して適切なケアを提供し、セルフケア能力の向上や療養生活の支援を行います。また、看護師の臨床実践能力の向上を目的とした教育プログラムの立案や、慢性看護学分野に関連する研究活動にも携わります。慢性期の患者さんが最期までその人らしく過ごせるように、チーム医療の中心となって活躍できるでしょう。

急性期・回復期・慢性期の違いを理解してキャリアプランを検討しよう

急性期・回復期・慢性期の特徴ややりがいはそれぞれ異なり、身に着けられるスキルも違います。そのため、看護師として有意義に働くためには、自身が行いたい看護が実践できる場所を選ぶことが大切です。
どの環境に身を置くかで、後に描けるキャリアプランも大きく変わります。各区分の違いを理解して、自分はどこで何を学びたいのか、どんな看護師になりたいのかを明確にし、自身のキャリアプランを検討しましょう。

引用・参考

地域医療構想の概要 厚生労働省

認定看護師 日本看護協会

専門看護師 日本看護協会

田口ひづる
この記事を書いた人
田口ひづる
和歌山県立医科大学保健看護学部卒業(看護師・保健師免許取得)。2015年から大阪の小児専門病院で3年間勤務し、神経消化器内科・ICUを経験。2018年から現在に至るまで、大阪の急性期病院に勤務(血液・腫瘍内科)。「実習指導者講習会」履修済。2023年より看護師と兼業しながらフリーライターとして活動中。

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