【2023年】看護師の平均年収は?年齢・地域・役職別に解説

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厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに看護師の平均年収を年齢別や地域別、施設規模別など項目ごとに比較して紹介。ほかの職種と比べて年収が高いといわれている看護師の年収の実態、年収を上げるためにできることや年収1,000万円を目指すことは可能かどうかについても解説します。

看護師の平均年収はいくら?

2023年版 看護師の平均年収

看護師の平均年収は約508万円です。
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査から、以下のように算出しました。

351,600円(平均月収)×12ヶ月+862,100(平均ボーナス)=5,081,300円(平均年収)

給料は所得税や住民税、社会保険料などが天引きされた上で支払われ、一般的に手取り額は総支給額の8割といわれるため、推定手取り額はおよそ460万円となります。

看護師の年収・給与の内訳

看護師の給与の内訳は主に、基本給、夜勤手当、残業手当、ボーナスで構成されています。これら4つの要素の合計によって年収が算出されます。それぞれ見ていきましょう。

基本給

基本給は、看護師の経験年数やスキルなどに応じて定められています。

日本看護協会の2022年 病院看護・助産実態調査報告書によると、新卒と勤続10年の看護師の平均基本給は以下の通りです。

分類 平均基本給与額
新卒(高卒+3年課程専門卒) 203,276円
新卒(大卒) 209,616円
勤続10年(31~32歳、非管理職) 246,770円

新卒時と10年目では、基本給に約4万円の差があります。勤続年数が多いほど、リーダー業務や教育担当など業務内容が増えていくに従い、基本給も上がります。

また管理職へのキャリアアップなど職務責任が変化することで、さらに基本給も上がります。他の職種であっても、基本給は経験年数に応じて上がっていくケースがほとんどです。

夜勤手当

夜勤手当は、夜間に勤務する人に任意で支払われる手当です。看護師の場合は1回の夜勤ごとに支給されるケースが多く、夜勤の形態は二交代制や準夜勤を挟む三交代制が一般的です。それぞれの形態で、夜勤手当の平均額と平均夜勤回数は異なります。

日本看護協会の2020年 病院看護実態調査 報告書によると、以下のようなデータが示されています。

夜勤形態 平均夜勤手当
(1回あたり)
平均夜勤回数
(1ヶ月あたり)
三交代制:準夜勤 4,154円 7.7回
三交代制:深夜勤 5,122円
二交代制 11,286円 4.7回

例えば二交代制の場合、年間で支給される夜勤手当の平均的な合計は約636,530円です。

11,286円(平均夜勤手当)×4.7回(1ヶ月あたりの平均夜勤回数)×12ヶ月

夜勤手当が看護師の平均年収5,081,300円のうちおよそ13%を占めており、看護師の年収に大きな影響を与える要素であることがわかります。

残業手当

残業手当は、所定労働時間を超えて働いた時間に対して支払われるものです。一般的に看護師の業務は患者の状況によって変わるため、スケジュールに変更を生じやすく、残業が発生しやすい職種とされています。

日本看護協会の2022年 病院看護・助産実態調査 報告書によると、看護師の平均残業時間は月約5.4時間でした。病院規模別にみた1人あたりの月平均残業時間をみると、残業1時間未満は200床未満の医療施設が最も多く、500床以上の大規模病院では10~15時間未満が最も多くなっています。
このことから看護師の残業時間は、働く施設によって大きく差があることがわかります。

ボーナス

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、看護師の年間ボーナスの平均は約862,100円です。以下に、年齢別・男女別に平均ボーナスをまとめました。

※各金額は夏冬合算の平均です
年齢 男性看護師 女性看護師
20〜24歳 415,100円 466,500円
25〜29歳 886,800円 750,300円
30〜34歳 876,700円 761,700円
35〜39歳 973,200円 895,800円
40〜44歳 1,106,100円 940,300円
45〜49歳 996,600円 1,039,300円
50〜54歳 1,065,300円 1,057,800円
55〜59歳 898,200円 1,101,500円
60〜64歳 639,900円 705,800円

ボーナスは年齢が上がるにつれて増加し、60代以降は低下傾向にあります。40代後半から50代にかけて女性のほうが高額なのは、この年代の看護師は女性の管理職者が多いためと考えられます。

男性看護師は年々増えているため、今後は40代後半から50代においても男性看護師の平均ボーナス額が女性看護師を上回る可能性もあるでしょう。

看護師の平均年収を年齢別・地域別などで比較

ここからは看護師の年収を学歴や性別、年齢、地域、施設規模、役職と項目別に見ていきます。

【大卒/専門卒】初任給ではほとんど差がない

日本看護協会の2022年 病院看護・助産実態調査 報告書によると、看護師の初任給において大卒と専門卒の間にはほとんど差がなく平均初任給の差は8,019円でした。

学歴 平均初任給(税込総額)
大卒 271,730円
高卒+3年課程専門卒 263,711円

看護師の仕事においては、学歴よりも知識や技術が重視されます。大卒者と専門卒者が同じ看護師という国家資格を取得していることも、初任給に大きな差が生じない要因の1つと言えるでしょう。

しかし経験を重ねるにつれて、大卒者の給与の方が高くなる場合があります。これは管理職に就くには大卒者の方が有利な病院があったり、大学院修士課程の修了を前提とする専門看護師などへのキャリアアップは大卒者が有利であり、資格手当がついたりする可能性が高くなるためと考えられます。

【男女別】男性の方がやや高い

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、男性看護師の平均年収のほうが128,600円高いことがわかりました。

性別(平均年齢) 平均月収 平均ボーナス 平均年収
男性(37.9歳) 359,900円 908,400円 5,227,200円
女性(41.1歳) 350,600円 856,600円 5,063,800円

一般的に、男性看護師も女性看護師も基本給やボーナスに大きな差はないでしょう。

しかし男性看護師は女性看護師と比べてライフスタイルの変化が少ないことから、キャリアを途切れさせることなく積みやすい傾向があります。経験年数が長いほど基本給やボーナスは増加するため、平均年収に男女差が生じてくると考えられます。

【年齢別】50代後半がピーク

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、看護師の年齢別の平均年収は50代後半がピークとなっています。

年齢別 看護師の平均年収

結婚や育児など一般的にライフスタイルに変化が多い20代後半~30代は、働き方にも制限があるため伸び悩む傾向にあるものの、50代後半で平均年収はおよそ580万円となります。50代では管理職に就いているケースも多いことが、平均額に反映されていると考えられます。

60代になると、非常勤になったり夜勤のシフトに入らないなど勤務形態を変更したり、訪問看護事業所や福祉施設に転職するなど勤務先を変更することが多く見受けられます。基本給が低くなったり手当がつかない分、平均年収が下がる傾向にあるようです。

【地域別】都市部ほど高く地域差が大きい

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、地域別の看護師の平均年収は都市部ほど高いことがわかります。

都道府県 平均月収(円) 平均ボーナス 平均年収(円)
北海道 346,100円 891,400円 5,044,600円
青森 309,700円 776,400円 4,492,800円
岩手 324,400円 894,200円 4,787,000円
宮城 343,600円 917,100円 5,040,300円
秋田 337,300円 823,000円 4,870,600円
山形 315,800円 935,400円 4,725,000円
福島 336,800円 848,700円 4,890,300円
茨城 348,000円 848,400円 5,024,400円
栃木 316,000円 705,700円 4,497,700円
群馬 335,700円 817,500円 4,845,900円
埼玉 375,700円 904,100円 5,412,500円
千葉 356,600円 862,600円 5,141,800円
東京 396,400円 883,700円 5,640,500円
神奈川 372,700円 806,200円 5,278,600円
新潟 360,300円 973,400円 5,297,000円
富山 357,300円 1,062,100円 5,349,700円
石川 323,200円 884,600円 4,763,000円
福井 340,300円 1,032,900円 5,116,500円
山梨 339,000円 915,300円 4,983,300円
長野 357,000円 683,800円 4,967,800円
岐阜 355,200円 1,056,200円 5,318,600円
静岡 357,700円 937,300円 5,229,700円
愛知 357,100円 926,800円 5,212,000円
三重 344,500円 766,900円 4,900,900円
滋賀 359,900円 863,700円 5,182,500円
京都 364,900円 782,900円 5,161,700円
大阪 370,800円 845,900円 5,295,500円
兵庫 380,900円 844,000円 5,414,800円
奈良 374,900円 958,700円 5,457,500円
和歌山 361,400円 964,800円 5,301,600円
鳥取 314,300円 738,300円 4,509,900円
島根 330,300円 871,100円 4,834,700円
岡山 326,300円 906,600円 4,822,200円
広島 332,500円 918,800円 4,908,800円
山口 342,700円 1,021,400円 5,133,800円
徳島 352,800円 715,600円 4,949,200円
香川 336,400円 932,400円 4,969,200円
愛媛 307,300円 690,400円 4,378,000円
高知 311,900円 837,200円 4,580,000円
福岡 340,100円 900,600円 4,981,800円
佐賀 324,600円 948,600円 4,843,800円
長崎 325,900円 899,400円 4,810,200円
熊本 305,700円 770,500円 4,438,900円
大分 299,700円 736,100円 4,332,500円
宮崎 296,300円 717,000円 4,272,600円
鹿児島 279,500円 609,700円 3,963,700円
沖縄 330,700円 806,700円 4,775,100円

看護師の全国平均年収が508万1300円であるのに対し、地域別の平均年収で最も高かったのは東京都で、564万500円でした。一方で最も平均年収が低かったのは鹿児島県で396万3700円。首都圏や大阪府などの都市部は平均より高く、鹿児島県や青森県などの地方都市は平均より低い傾向にあることがわかります。

都市部では病院や診療所の数が多いため競争が激しく、看護師を1人でも多く採用するために給料が高く設定されがちです。また都市部では生活費などの物価が高いため、看護師のみならず全体に給料が高くなる傾向があります。

地方都市では逆の理由から、給料が低くなる傾向があるようです。

【施設規模別】規模の大きさに比例する

日本看護協会の2022年 病院看護・助産実態調査 報告書によると、看護師の年収は施設の規模が大きくなるほど高くなる傾向があります。

※ボーナスを含まない年収額
施設規模(病床数) 平均月収(税込総額) 平均年収※
99床以下 311,133円 3,733,596円
100〜199床 319,479円 3,833,748円
200〜299床 322,252円 3,867,024円
300〜399床 336,987円 4,043,844円
400〜499床 341,150円 4,093,800円
500床以上 354,173円 4,250,076円

規模の大きな病院はより高度な急性期に対応している施設が多く、それだけ患者の医療度も高くなります。また患者数や症例の種類も多いため、看護師の負担は大きくなりがちです。
急性期治療に必要とされる先端の医療機器や高度な医療技術に対応できる専門的なスキルを必要とされる場面も多くなります。看護師の数も多いため、リーダー看護師や教育担当、管理職など役職者の数も多くなるため、大規模病院ほど給与は高くなる傾向です。

一方、小規模病院では前述と逆の理由や経営規模が小さいことによる経済的な制約もあるため、給料が抑えられる可能性が考えられます。

【役職別】経営層に近くなるほど高くなる

古いデータになりますが、看護協会の2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査によると、看護師の役職別の年収は経営層に近いほど高くなる傾向があります。

※中間管理職平均賞与124万5,754円、管理職平均賞与149万389 円の賞与を入れて算出
役職 平均給与 平均年収※
看護部長 427,573円 6,621,265円
副看護部長 405,373円 6,354,865円
看護師長 370,949円 5,697,142円
副看護師長 350,882円 5,456,338円
主任 327,143円 5,171,470円

管理職の平均年齢は50代です。なお年齢別の項目で解説したように、看護師の平均給与は50代でピークでした。管理職になり役職手当が付くことが平均年収を上げる要因の1つといえるでしょう。

役職 管理職手当平均額
看護部長 81,307円
副看護部長 60,856円
看護師長 45,439円
副看護師長 26,159円

役職が上がるにつれて、責任範囲が広がり仕事の難易度や負担も増えます。組織やチームのマネジメント、病院の方針決定に関与する機会が増え、経営層に近くなるほど給料が高くなる傾向があります。

また高い役職に選任されるということは、看護師としての経験や専門知識、リーダーシップ能力が評価された結果といえます。

看護師の生涯年収はいくら?

看護師の生涯年収は、以下の通りです。

性別 生涯年収
男性看護師 2億706万2,900円
女性看護師 2億80万9,600円

厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査の年齢別データをもとに、大学卒業後から定年(22〜60歳)までの年収(ボーナスを含む)を算出しました。

なお、全職種の生涯年収平均は男性が2億2,523万7,500円、女性が1億6,358万円です。
男性看護師は全職種平均より1,817万4,600円低く、女性では看護師のほうが3,722万9,600円上回る結果となっています。

ここからは、看護師としてさらに年収アップするためにできることや年収の高い職種について解説していきます。

看護師が年収アップのためにできること

このセクションでは、看護師が年収アップを実現するための具体的な方法やポイントを見ていきましょう。

管理職を目指す

前述のように、管理職を目指すことで、年収アップが期待できます。豊富な臨床経験を積み、知識や技術を高め、マネジメントの力をつけてリーダーシップを発揮できるようになりましょう。

また、コミュニケーション能力や問題解決能力などは、マネジメントスキルにも直結します。現場での経験だけでなく研修やセミナーなどに積極的に参加することもこうしたスキルをより磨くことにつながります。

管理職へのキャリアアップには、一つの施設に長く勤めることが有効になる場合もあります。長年勤め、病院の文化をよく知った人のほうが組織のマネジメントに向いているという考え方からです。
看護部長・副部長職にキャリアップすれば、組織や病院の運営に関わる役割が増えるため、責任とともに年収・給料も高くなります。

年収・給料の高い部署に異動する

年収アップを目指す場合、給料が高い傾向にある部署への異動も一つの手段です。病院や施設によっては、勤務内容や負担の大きさから、特定の部署で働く看護師の給料は高くなることがあります。

例えば夜勤専従を募集している病棟があれば、基本給は同じでも異動することで夜勤手当が増え年収が上がるはずです。また手術室勤務では、手術室勤務手当やオンコール手当によって他の部署よりも年収が高くなる可能性があります。ある程度スキルに自信がついた段階で、所属部署を見直してみましょう。

転職して年収アップを図る

看護師が年収を上げるなら、転職も検討しましょう。病院や施設によっては臨床経験の長さや専門スキルを重視して中途採用を行っており、給料面で優遇してもらえる可能性があります。また都市部の病院や大規模な医療機関では、地方や小規模施設に比べて高い給料が支払われる傾向にあるため、転職によって年収アップを目指しやすいでしょう。

ナース人材バンク

独立して開業する

独立して開業することも、看護師の年収アップを目指す方法の一つです。独立して訪問看護ステーションを開業する看護師も多くいます。経営者として自分自身のビジョンに基づいたサービスを提供できるため、やりがいも持てるでしょう。
開業には資金や経営ノウハウが必要ですが、成功して収益を順調に伸ばすことができれば年収アップが期待できます。経営を担うリスクと責任もありますが、独立開業は看護師としてのキャリアをさらに広げる大きなチャンスとも言えます。

副業する

看護師の年収アップを目指すためには、副業も視野に入れてみてください。本業もあるためプライベートの時間は減りますが、副業によって追加の収入を得られます。

看護師のスキルや知識を活かせる副業には、クリニックや健康診断などでの単発バイト、コールセンターや訪問による健康相談業務、ライター活動などが考えられます。副業は年収アップだけでなく、新たなスキルの習得や人脈の拡大にもつながります。

ただし、副業を始める前に勤務先の規定や労働条件の確認は必要です。副業を禁止している職場では、戒告や減給などのペナルティが与えられる可能性があるためです。

看護師が年収1,000万を目指すことはできる?

看護師が年収1,000万円を目指すことはできるのでしょうか?看護師のスキルを活かせる年収・給料の高い主な職種のうち、美容外科、治験コーディネーター、臨床開発モニター、フィールドナースの特徴について見ていきましょう。

美容外科

美容外科は美容に関する手術や治療を行う医療機関で、高い年収が期待できる分野の1つです。美容治療に関する専門的な知識・技術とともに、患者さんへのカウンセリングや接遇などに用いる高いコミュニケーション能力が必要とされます。

美容分野は収益性が高く、利益が従業員に還元されやすいため高年収が期待できます。また美容外科は競争が激しい分野でもあり、優秀なスタッフを1人でも多く確保したいという目的から、高待遇を設定している病院もあるでしょう。

美容に興味があり、自身も施術を受けた経験があれば知識やスキル取得はスムーズに進むはずです。

治験コーディネーター

治験コーディネーターは、新薬開発における治験の実施や進行をサポートする専門職で、看護師がキャリアチェンジして活躍することができる職種の1つです。治験実施医療機関やこれを支援する治験施設支援機関(SMO)に属し、治験責任医師または治験分担医師のもとで治験に係る業務に協力します。

正確なデータ収集や管理など病棟での看護業務とは異なる知識やスキルが必要である点が、高い給料・年収につながっていると考えられます。

臨床開発モニター

臨床開発モニターの業務は、治験を行う医療機関・担当医師の選定や治験の進捗状況のモニタリングです。製薬会社や医療品開発業務受託機関(CRO)に属し、新薬の開発過程において治験の進行状況を監視し、治験実施施設や治験実施医のサポートを行います。

臨床開発モニターの給料が高い理由は、専門性が高く、治験の品質や安全性を確保する重要な役割を担っていることが挙げられます。

フィールドナース

フィールドナースは医療機器メーカーに属し、自社製品のプロモーション活動を行うことが主な役割です。営業スタッフと共に病院やクリニックを訪れ、医師や看護師など医療機関で働く医療従事者に製品を紹介したり、デモンストレーションを行ったりします。

また、納品後のアフターフォローまで担当するケースもあります。医療職というより営業に近い職種のため、営業スキルが高い場合や管理職になった場合に、高年収を目指せる可能性があるでしょう。

看護師・助産師・保健師で年収に差はある?

看護師、助産師、保健師は以下のような年収の差があります。

引用:令和4年賃金構造基本統計調査
職種 平均年収
看護師 5,081,300円
助産師 5,842,100円
保健師 4,812,800円

助産師の年収が最も高く、看護師との差は約76万円です。この差は、助産師が出産や産後ケアなど、妊婦さんや産後の母親のケアに特化した専門的な知識や技術を持っているためです。また、夜勤やオンコール対応が発生する職種であることや、独立して自分の助産所を開業できる点も平均年収を引き上げる要因と言えるでしょう。

一方で保健師の年収は看護師より低い水準にあり、平均年収の差は約27万円です。保健師は地域住民の健康増進や予防に関わる仕事を担当し、公衆衛生や健康教育に関する専門知識を持っています。しかし夜勤や緊急対応がないこと、残業や休日出勤なども比較的少なく業務時間が安定していることから、多くの手当が発生しにくい業種であることが要因と考えられます。

看護師の年収はほかの職種に比べて高い?

看護師の年収は高いといわれていますが、実際はどうなのでしょうか。

看護師と全職種平均年収を比較

ここからは看護師の平均年収と全職種の平均年収を比較し、看護師の年収が全体に対してどの程度の水準にあるのかを解説します。

平均年収の推移(5年間)

看護師と全職種平均年収の推移引用:令和4年賃金構造基本統計調査

過去5年間の看護師・全職種の平均年収の推移を比較すると、そこまで大きな差はありませんが、2020年から3年間は看護師の平均年収が全職種の平均年収をやや上回っています。
全職種データからは、2020年以降にボーナスや残業代などの超過勤務手当が大幅に減少していることがわかり、新型コロナウイルスの流行が年収に大きな影響を与えていることが想定されます。

一方、看護師の平均年収は微増を続けています。また、2025年には団塊の世代が後期高齢者の年齢に達することから、医療や介護の逼迫が懸念されています。新型コロナウイルスの流行は落ち着きましたが、こうした社会背景からも、看護師の需要は高まっていくことが推測されます。

看護師と全職種の平均年収を年齢別に比較

年齢別 看護師・全職種・全職種女性平均年収※看護師は男女計
引用:令和4年賃金構造基本統計調査

看護師と全職種の平均年収を年齢別に比較すると、新卒にあたる年代では全職種平均より731,700円上回っています。さらに全職種女性平均の年収と比較すると、872,300円と大幅に高い結果でした。

全職種の女性平均と比較した場合では、どの年代でも100万円前後の差があることから、看護師は女性の中では年収の高い職業であることがわかります。

ただし、30代以降は全職種の女性平均と同じく伸び悩み、30代後半には男女合わせた全職種平均と逆転します。

給与水準が全職種の平均よりも高いことは、看護師の専門性や重要性が高く評価されているものと考えられるでしょう。

【職種別】平均年収ランキング(男女計)

引用:令和4年賃金構造基本統計調査
順位 職種 年収
1 航空機操縦士 16,003,100円
2 医師 14,288,900円
3 法務従事者(弁護士・行政書士) 9,713,900円
4 歯科医師 8,104,100円
5 公認会計士,税理士 7,466,400円
6 獣医師 6,866,200円
7 機械器具・通信・システム営業職業従事者(自動車を除く) 6,545,500円
8 電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く) 6,444,500円
9 化学技術者(化学分析技能士) 6,192,000円
10 助産師 5,842,100円
11 薬剤師 5,833,900円
12 金属技術者 5,503,300円
13 診療放射線技師 5,437,400円
14 クレーン・ウインチ運転従事者 5,133,200円
15 臨床検査技師 5,089,200円
16 看護師 5,081,300円
17 測量技術者(測量士補) 4,871,900円
18 配管従事者 4,852,800円
19 保健師 4,812,800円
20 営業用大型貨物自動車運転者 4,773,700円
21 金属彫刻・表面処理従事者(金属彫刻技能士・めっき技能士・研磨技能士) 4,498,700円
22 機械検査従事者(機械検査技能士) 4,481,000円
23 営業用貨物自動車運転者(大型車を除く) 4,379,400円
24 窯業・土石製品製造従事者(ガラス製品技能士・陶磁器技能士、石材施工技能士) 4,377,200円
25 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士 4,306,800円
26 歯科技工士 4,298,700円
27 印刷・製本従事者(製本技能士) 4,234,800円
28 板金従事者(工場板金技能士・建築板金技能士) 4,202,900円
29 大工(建築大工技能士) 4,066,600円
30 歯科衛生士 3,824,700円

国家資格が役立つ、もしくは必要な職業別の平均年収ランキングTOP30です。看護師は16位に位置しており、国家資格が必要な職種の中でも比較的高い給与水準が得られる職業の1つであることがわかります。他の医療職種については、医師、歯科医師、助産師、薬剤師などがさらに上位にランクインしています。

医療職種以外では、弁護士や公認会計士などがランクインしており、より専門性の高い知識やスキルが必要な職種の場合には給与水準が高くなることがわかります。

【医療職種別】平均年収ランキング

引用:令和4年賃金構造基本統計調査
順位 職種 年収
1 医師 14,288,900円
2 歯科医師 8,104,100円
3 獣医師 6,866,200円
4 助産師 5,842,100円
5 薬剤師 5,833,900円
6 診療放射線技師 5,437,400円
7 臨床検査技師 5,089,200円
8 看護師 5,081,300円
9 保健師 4,812,800円
10 理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士 4,306,800円
11 歯科技工士 4,298,700円
12 介護支援専門職員(ケアマネージャー) 4,057,900円
13 歯科衛生士 3,824,700円
14 栄養士 3,790,700円
15 介護職員(医療・福祉施設等) 3,629,300円

医療職種別の平均年収ランキングTOP15です。看護師は8位にランクインしています。医師、歯科医師、獣医師のように、各分野で医療を司る立場にある医療系職種であるほど年収も高く、TOP3を占めています。

看護師の平均年収は手当次第。働き方次第で年収アップも可能

看護師の平均年収は他の職種に比べて高いことがわかりましたが、手当が多く含まれるため、基本給だけをみると一概に高いとは言い切れません。また、年齢別の平均年収推移を見ると、20代後半以降は他の職種と同様に伸び悩む傾向があります。さらに、看護師の年収は経歴だけでなく、地域や施設規模によっても大きく左右されます。

年収アップは働き方次第で可能です。管理職を目指したり、給料の高い部署に異動したり、転職や独立、副業を検討することで年収を上げるチャンスがあります。

自分に合った働き方でキャリアアップを目指し、看護師としての充実感とともに年収アップを実現しましょう。

【注】
・この記事は「令和4年賃金構造基本統計調査」に基づき算出しています
・平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12か月分+「賞与その他特別給与額(ボーナス)」で算出しています
※一部例外を除く

村上舞
この記事を書いた人
村上舞
帝京大学医療技術学部看護学科を卒業後、医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会 整形外科病棟勤務に勤務し、整形・脊椎外科の急性期看護を経験。以降は、循環期病棟、呼吸器内科病棟、回復期病棟で勤務。出産を機に退職し、特養やデイサービス、クリニック、健診センター等など幅広い施設での経験を活かし、ライターとして活動中。

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