専門看護師の種類一覧。分野ごとの役割と給料アップなどのメリット

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看護のスペシャリストといわれる専門看護師としてキャリアアップを目指す看護師のために、14の看護分野(種類)について解説。各分野(種類)に求められる役割、給料・年収アップなどのメリットを理解して看護師キャリアの選択肢を広げましょう。

専門看護師とは?求められる6つの役割

専門看護師とは、「複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族 及び集団に対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門 看護分野の知識及び技術を深めた看護師のこと」で、日本看護協会が認定している資格です。2022年12月時点では専門看護師の資格登録者数は全国で3155人となっています。

引用:日本看護協会「専門看護師」

専門看護師の役割

日本看護協会では、専門看護師には以下の役割があるとしています。

  1. 実践:個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する
  2. 相談:看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う
  3. 調整:必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う
  4. 倫理調整:個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る
  5. 教育看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす
  6. 研究:専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う

引用:日本看護協会「専門看護師」

専門看護師は、専門分野での患者・家族に対する現場でのケアだけでなく、問題を総合的に捉え、他職種との連携による問題解決を図ることや、研究・教育など施設全体、看護の質の向上に貢献するための役割を担っています。

同じくキャリアアップを目指す看護師向けの資格として、「認定看護師」があります。「専門看護師」と「認定看護師」の違いについては、下記の記事を参考にしてください。

専門看護師の専門看護分野(種類)一覧

専門看護師が携わる専門看護分野(種類)は、2022年12月現在で14分野あります。各分野(種類)の特徴と、登録者数を一覧でまとめました。

分野 登録者数 特徴
がん看護 1054 がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する。
精神看護 411 精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。
地域看護 31 産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。
老人看護 248 高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。
小児看護 300 子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。
母性看護 93 周産期の母子および家族への支援、女性のライフサイクル全般にわたる健康への援助等、水準の高い看護ケアを提供する。
慢性疾患看護 262 生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う。
急性・重症患者看護 387 緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。
感染症看護 100 施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。
家族支援 89 患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。
在宅看護 119 在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する。
遺伝看護 21 対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する。
災害看護 37 災害の特性をふまえ、限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供する。平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する。
放射線看護 3 放射線がもたらす身体、心理社会的影響の特性をふまえ、放射線事故・災害における平時からの体制構築と健康課題を有する対象へ長期的な看護を提供する。また、放射線診療を受ける対象者とその家族へ水準の高い看護を提供するとともに、職業被ばく低減の方策等、施設における体制を構築する。

※登録者数は2022年12月のもの

引用:日本看護協会「専門看護師」

専門看護師になるには?資格取得条件から合格率まで

専門看護師になるには看護系大学院修士課程で必要な単位を取得・修了し、認定審査に合格する必要があります。ここからは専門看護師になるまでの流れや費用について解説します。

専門看護師資格取得のための条件

専門看護師の資格を取得するための条件は以下の3つです。

  • 国内の看護師免許を保有していること
  • 看護系大学院修士課程修了者で、所定の単位を取得していること
    (26単位もしくは38単位。2024年度から38単位のみの申請となる)
  • 実務研修が通算5年以上あること(うち3年間は専門看護分野の実務研修)

看護師として働きながら大学院に通うことはできる?

専門看護師になるために、看護師として働きながら大学院に通うことも可能です。長期履修制度・集中講義などを設けた柔軟なカリキュラムや、夜間・土日の講義実施など、社会人が学びやすい体制を整えている大学院もあるため、チェックしてみましょう。

また、働きながら大学院に通うには職場の理解を得ることも必要であるほか、家庭のある看護師は家族のサポートも必要となるでしょう。周囲に相談のうえ、自分にとって無理のない履修方法を選択し学んでいくことが大切です。

参考:日本赤十字看護大学

参考:福岡大学 医学部

専門看護師の資格取得までのスケジュール

看護大学院での修士課程を修了した看護師は認定審査を受けます。専門看護師の認定審査は年1回のみの実施であることにも注意しましょう。

認定審査のスケジュール
6~7 月 申請(Web 申請、審査料振込、審査書類の提出など)
9 月 書類審査の合否発表
10 月 筆記試験
12 月 筆記試験の合否発表
翌年 2 月 認定証交付

以上が資格取得までの大まかなスケジュールです。詳細は日本看護協会を確認してください。また、取得認定後は5年ごとに書類による認定更新審査がありますので、注意しましょう。

参考:日本看護協会:「2023年第33回専門看護師認定審査『認定の手引き』」

専門看護師の資格取得にかかる費用

専門看護師になるには大学院修士課程(2年間)に入学する必要があるため、学費がかかります。学費は国公立と私立で差があり、目安として国公立で約135万円、私立で約210万円です。

専門看護師になるためにかかる費用の目安は以下になります。

  • 大学修士課程(2年間) 約135〜210万円
  • 審査料と認定料     約10万円

そのほか、テキスト代や教育機関までの交通費も必要となり、場合によっては宿泊費と仕事を辞めた場合の生活費の確保なども考慮する必要があります。専門看護師の取得を検討している人は十分な資金計画を立てておく必要があるでしょう。

参考:群馬大学 大学院保健学研究科

参考:埼玉医科大学院

参考:横浜市立大学

参考:第32回 専門看護師(CNS)認定審査 『認定の手引き』

専門看護師認定審査の合格率

過去に行われた専門看護師認定審査のデータをもとに、専門看護師の合格率を調査しました。

受験者数 合格者 合格率
がん看護 60 56 93.30%
精神看護 33 23 69.70%
地域看護 1 1 0%
老人看護 24 21 87.50%
小児看護 34 22 64.70%
母性看護 4 3 75%
慢性疾患看護 27 22 81.50%
急性・重症患者看護 33 20 60.60%
感染症看護 14 10 71.40%
家族支援 5 5 100%
在宅看護 14 7 50%
遺伝看護 1 1 100%
災害看護 7 6 85.70%
合計 257 196 76.30%


引用:日本看護協会「2018 年度 専門看護師認定審査および認定更新審査結果について」

専門看護師全体の合格率は76.3%ですが、各分野によって受験者数に差があり合格率も異なります。最も合格率が高い分野は「がん看護」の93.3%であるのに対し、「精神看護」は69.7%、「小児看護」64.7%、「急性・重症患者看護」60.6%とやや低めの合格率です。分野ごとでも難易度が大きく異なることがわかります。

専門看護師資格の取得による給料・年収やキャリアのメリット

専門看護師の資格を取得することで、給料・年収やキャリア面でのメリットが期待できます。

メリット1:活躍できる幅が広がる

専門看護師は、院内の教育・調整などの役割を担っています。看護管理部門、看護部全体のマネジメントに携われるほか、院外で行われる研修会やセミナー講師など、院外での活躍も期待できます。

メリット2:給料・年収アップが期待できる

日本看護協会のデータによると、専門看護師に対して手当がない施設は全体の61.1%で、手当のある施設は17.7%と低めとなっています。ただ、手当を支給している施設で最も高い手当額の平均は1万832円となっているので、資格取得を検討している人は、職場へ確認してみましょう。

引用:日本看護協会「看護職の賃金処遇の現状と改善に向けたポイント」

引用:日本看護協会「看護職の賃金の実態」

専門看護師が活躍する職場

実際に専門看護師はどんな職場で活躍しているのか、データをもとに紹介します。

専門看護師が所属する施設

日本看護協会のデータから、専門看護師が所属する施設は以下の通りです。

  • 病院:2398人
  • 学校・大学:339人
  • 訪問看護ステーション:143人
  • クリニック・診療所:41人
  • 介護保険施設等:22人
  • 認定看護師教育機関:7人
  • 会社:9人
  • 看護協会:5人
  • その他:48人
  • 離職中:103人

参考:日本看護協会:「専門看護師 分野別所属先種別登録者一覧(2022年12月)」

少数派として認定看護師教育機関や会社、看護協会に所属するなどさまざまな職場で活躍していますが、多くの専門看護師は病院に所属していることがわかります。

病院勤務の専門看護師が所属する部署

専門看護師が最も多く活躍している施設は病院ですが、さらに病院内において所属している部署は以下になります。

病棟

専門看護師が最も多く所属するのが病棟で、各専門分野を扱う病棟で勤務しています。「がん看護」「小児看護」「老人看護」分野の看護師が多くみられますが、どの分野でも活躍が期待できるでしょう。

看護管理部(室)

看護管理部は、看護部のマネジメントを行う部署です。看護職員の教育やメンタルヘルス、医療安全・防災などの危機管理などに携わるため、専門看護師の役割を大いに発揮できる部署といえます。

外来

外来では主に「がん看護」「精神看護」「慢性疾患看護」分野の専門看護師が多い傾向があります。外来でも専門的なケアが必要とされる患者が多いため、どの分野でも活躍ができる部署といえるでしょう。

ICU、CCU、HCUなど

ICUやCCU、HCUには「急性・重症患者看護」分野の専門看護師が所属しており、緊急度・重症度の高い患者へのケア提供や家族への支援、スタッフ間の調整を行なっています。

救命救急センター

救命救急センターでは「急性・重症患者看護」分野の専門看護師が多く活躍しており、緊急度・重症度が高い患者やその家族のケアを行います。「災害看護」分野の専門看護師も所属しており、災害救急を担う病院での活躍も期待されます。

訪問看護ステーション

訪問看護ステーションなどの地域部門では、「がん看護」「在宅看護」分野の看護師が多く所属しています。患者だけでなく家族のケアや他職種との連携が必須である地域部門では、専門看護師のスキルが多く求められるでしょう。

参考:日本看護協会:「専門看護師 病院勤務者の分野別所属部署別登録者数・分野別所属先種別登録者数一覧(2022年12月)」

「専門看護師」を看護師キャリアの選択肢として検討しよう

14の看護分野に分類される専門看護師には、実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究という6つの役割が求められます。専門看護師になるには、実務経験と大学院修士課程で単位を取得し、認定審査に合格する必要があります。医療サービスの拡大にともなって看護師のニーズも高まっており、スペシャリストとしての専門看護師の需要が増えるでしょう。自分が目指す看護師のキャリアに合わせて、専門看護師の資格取得を検討しましょう。

伊藤雪乃
この記事を書いた人
伊藤雪乃
2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力

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