看護師の産休と育休はいつから取得できる?手当の申請方法から注意点まで

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妊娠・出産を控える看護師は、産休や育休について理解しておく必要があります。 産休や育休はいつから取得できるのか、給料や手当、産休・育休前にしておくべきことなどを把握し出産や育児、復帰に向けてゆとりを持った準備をしていきましょう。

産休とは

産休とは、「産前産後休業」といい、出産の準備と産後の体力回復のために設けられた休暇制度です。 労働基準法で定められており、この期間、事業主は妊産婦を就業させることはできない決まりとなっています。ただし、産後に関しては6週間は強制的な休業としていますが、産前休業は妊婦側の任意取得です。

出産したときは、「出産育児一時金」のほか、自分自身で職場の社会保険に加入している女性はこの期間に「出産手当金」が支給されます。

参考:厚生労働省/労働基準法における母性保護規定

産休の対象者

産休は出産を控えた女性が対象となります。正社員はもちろん、契約社員やパートの看護師も含め雇用形態に関わらず産休を取得することができます。ただし、「出産手当金」の申請に関しては、職場の社会保険に加入している妊産婦に限ります。

産後休暇は正規産だけでなく、妊娠4ヶ月以上の「流産」や「死産」(人工妊娠中絶も含む)も含まれる点を覚えておきましょう。

産休の申請方法

産休を取得する際は、勤務先の職場に申し出ることで手続き可能です。職場で所定の申請用紙があれば記入します。職場によっては妊娠を証明する書類の提出や、出産予定日や復帰の意思、育休取得の希望の確認されることがあります。

産休はいつから取得できる?

産休は「産前休暇」と「産後休暇」の2つがあります。産前休暇は出産予定日の6週間前(双子の場合は14週間前)から、産後休暇は出産後8週間まで取得可能です。

なお、出産当日は「産前休業」に含まれます。出産日の翌日から、8週間は就業することはできませんが、本人の申し出があれば、医師の認めた業務に限り産後6週間から復帰可能です。

早めに産休に入りたい場合

体調面などの事情により、予定より前倒しで産休に入りたい場合は、有給を使うか、有給がない場合は欠勤扱いとして休むことになるでしょう。
ただ、切迫早産など医師の診断書があれば傷病休暇として休むことが可能な場合があります。個々の妊娠経過によって、休みの取り方も変わってくるため、医師や上司、職場の担当者などに確認する必要があります。

産休後に退職することはできる?

産休後に退職することは可能ですが、出産手当金を申請予定の方は、要件によって支給対象から外れてしまう可能性があることに注意が必要です。また、退職してしまうと「育児休業手当金(育休手当)」の支給対象ではなくなります。

ご自身で社会保険に加入していて、出産手当金を申請する予定の人は、退職後でも支給対象になるかどうか確認してからの方が望ましいでしょう。退職後でも出産手当金を受け取るための条件は以下になります。

  • 被保険者の資格を喪失した日の前日までに、継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失時に出産手当を受けているか、または受ける条件を満たしていること

参考:全国健康保険協会
   厚生労働省/妊娠出産・母性健康管理サポート
   厚生労働省/働きながらお母さんになるあなたへ
   産前・産後休業中、育児休業中の経済的支援

育休とは

育休とは「育児休業制度」といい、1歳未満の子どもを養育する人が会社に申し出ることにより取得できる休業制度のことを言います。 育児・介護休業法により定められている制度です。

労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる

引用:育児・介護休業法・第五条

2022年から法改正があり、「産後パパ育休」として男性も育休を取得しやすい雇用環境の整備等の義務化や、育休取得の要件の緩和など、男女ともに育休が取得しやすい環境が整えられつつあります。

厚生労働省の調査によると、2021年度の女性の育児休業取得率は85.1%で横ばいが続いていますが、男性の取得率は年々上昇し13.97%となっています。

育休中にもらえる手当には、「育児休業給付金」「児童手当」があります。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

   厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査・育児休業取得率の推移」

育休の対象者

育休は、1歳未満の子どもを養育する男女が取得できます。女性だけでなく男性も取得できる点が産休とは違う特徴です。
雇用形態に限らず育休を申請する権利がありますが、取得にはいくつかの条件を満たす必要があります。また、男女で申請方法や取得期間などが少し異なります。このあとの項で具体的に解説していますので、参考にしてください。

育休の申請方法

育休を取得する場合、勤務先に書面での申請が必要です。女性の場合は、遅くとも休業開始1ヶ月前までには申請することが望ましいので、産後1ヶ月までには職場に意向を伝え手続きをしましょう。

出産後の体調や育児の忙しさから、申請を忘れてしまうことも考えられます。出産後、職場に連絡する際に育休も取得予定であることを申し出ておき、手続きの流れを確認しておくのも一つの方法です。男性の育休(産後パパ育休)を取得する場合は、希望取得日の2週間前には勤務先に申し出ましょう。

ただし注意点として、育休は長期の休業となるので、育休を取得したいという旨は上司に早い段階で伝えておくことが大切です。

育休はいつから取得できる?

育休が取得できるのは、産後休業が終わった翌日から、子どもが1歳の誕生日の前日までの期間です。産後パパ育休の場合は、出生後8週間以内に4週間、子が1歳になるまで取得可能。どちらも2回に分割して取得できます。

育休が取得できない場合

日雇いや、申し出の時点で子どもが1歳6か月に達する日までに、労働契約の期間が満了することが明らかな場合、育休取得の対象外になる可能性があります。
この他にも、職場との契約条件により対象から外れてしまうことがあるので、自分は育休を取得できるかを事前に確認してみると良いでしょう。

参考:厚生労働省/育児休業や介護休業を取得することができる有期雇用労働者について

育休明けに退職することはできる?

もともと復帰を前提として育休を取得したものの、やむを得ず退職を検討する場合もあるでしょう。日本の憲法では、国民に対して「職業選択の自由」が認められているため、希望すれば育休明けにすぐに退職することは可能です。

ただ、法律上は問題なくても、職場にとっては大きな影響を与える可能性があることを理解しておく必要があります。また、子どもを保育園に入所させている場合は、子どもも退園になる可能性もあります。

参考:厚生労働省/ Q&A~育児休業給付~

育休の延長はできる?

育児休業は原則1年間取得できますが、最長で子どもが2歳になるまで延長が可能で、以下の場合に認められます。

  • 保育園に入園できない(申し込みを行っていることが前提)
  • 配偶者が死亡した場合
  • 負傷、疾病、障害などで子どもを養育できない場合
  • 離婚などの事情により、配偶者が子どもと同居しない場合
  • 6週間以内に出産予定、もしくは産後8週間を経過していない時

参考:厚生労働省/ Q&A~育児休業給付~

産休・育休中にもらえる手当【Q&A】

産休・育休中は基本的に給料が支払われません。その代わりに健康保険や雇用保険の加入状況によって手当が支給されます。出産にかかわる休暇と手当がもらえる時期を表にしました。

産休・育休中にもらえる手当と時期

手当の種類やもらえる条件などを理解し、申請忘れのないようにしておきましょう。

産休・育休手当の種類と金額

産休中には「出産育児一時金」と「出産手当金」、育休中には「育児休業給付金」と「児童手当」が支給されます。

出産育児一時金

出産育児一時金とは、出産したとき、赤ちゃん1人につき42万円が加入する健康保険から支給される手当のことです。主に出産にかかる費用を補填するものとして使われることが多く、産院によっては、出産一時金の「直接支払制度」を利用できることもあります。

「直接支払制度」を利用すると、出産の際に窓口での支払いを手当分差し引いた金額に抑えることが可能です。子ども1人の出産につき支給されるものなので、夫の扶養に入っている場合でも、夫が加入する健康保険から受けとることができます。

参考:厚生労働省/ 出産育児一時金について
   厚生労働省/ 出産育児一時金の支給額・支払方法について

出産手当金

出産手当金は、妊産婦自身が加入している健康保険から1日につき、原則として賃金の3分の2相当額が支給されます。受け取れる期間は産前42日から産後56日までです。

【1日あたりの出産手当金 算出方法】
支給開始日前12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3

例:標準報酬月額が30万円の場合
300,000円÷30×2/3=6600円

夫の扶養に入っている人は対象外になるので注意しましょう。休業している間に会社から給料が支払われ、出産手当金よりも多い額が支給されている場合も出産手当金は支給されません。

また出産手当金は、退職していても1年以上勤務していれば申請可能な場合があるので、退職を考えている人は、職場の担当者に確認してみることをおすすめします。

育児休業給付金

育休期間に、雇用保険から支給される手当のことを「育児休業給付金」といい「育休手当」と呼ぶ人もいます。雇用保険に加入している人が1歳未満の子を養育するために、育休を取得した場合に、下記の要件を満たした人を対象に支給されます。

【支給要件】

  • 1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること
  • 育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12か月以上あること
    ※育児休業を開始した日前2年間に上記の月数が12か月ない場合であっても、当該期間中に第1子の育児休業や本人の疾病等により引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった期間がある場合は、受給要件が緩和され、支給要件を満たす場合があります。
  • 1支給単位期間中の就業日数が10日以下または就業した時間数が80時間以下であること
  • 有期雇用の人は、子が1歳6か月(延長事由に該当し、子が1歳6か月後の期間について育児休業を取得する場合は、1歳6か月の休業開始時において2歳)までの間に労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

引用:厚生労働省/ Q&A~育児休業給付~

給付金額は、育休取得日から180日までは休業開始前賃金の67%、181日目以降は休業開始前賃金の50%となります。

【月当たりの育児休業給付金の算出方法】
休業開始前賃金月額は、育休開始前6ヶ月の総支給額÷180で算出

休業開始前賃金月額が25万円の場合
・育児休業開始から180日目までの支給額
250,000円×67%=167,500円
・181日目以降の支給額
250,000円×50%=125,000円

引用:厚生労働省/ Q&A~育児休業給付~

児童手当

児童手当とは、中学校卒業までの児童を養育している人に支給されるものです。
支給額は子どもの年齢によって異なります。表にまとめましたので、参考にしてください。

子どもの年齢 児童手当の額(一人あたり・月額)
3歳未満 一律15,000円
3歳以上小学校就学前 10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円

児童手当は、子どもが生まれたら居住地の役所で手続きを行うことで、毎年6月、10月、2月に前月分までの手当がまとめて支給されます。

また原則として、申請した月の翌月分からの支給になります。申請が遅れると、遅れた分をさかのぼっての支給は受けられないため、速やかに手続きを行いましょう。

Q1.産休・育休中に給料やボーナスは支払われる?

産休・育休中の給料やボーナスの支給状況は、職場によって異なります。ですが、給料は労働の対価として支払われるものなので、休業中は基本的に支払われないと考えても良いでしょう。

ボーナスの支給は就業規定によりますが、一般的に勤務状況や査定期間のもとで支給額が決定されます。査定期間中にしっかりと勤務していれば、支払日に産休・育休に入っていたとしても、査定期間中分のボーナスは支給対象になると考えられます。職場の担当者に確認してみましょう。

Q2.パートでも産休・育休手当は申請できる?

パートでも産休・育休手当をもらえる条件は以下になります。

  • 自分の職場の健康保険に加入している…出産手当の支給対象
  • 雇用保険に加入している…育児休業手当の支給対象

ご自身の保険加入状況を確認し、わからない方は職場の担当者に問い合わせてみましょう。

産休・育休に入る前にやるべきこと

先述した産休・育休に関する手当の申請方法は、個々の勤務形態によって申請先が異なり、申請期限もあります。休業に入る前に余裕を持って調べておきましょう。ネットで調べるのもよいですが、職場や役所の担当者に聞いた方がより個別的な説明が受けられます。

そのほか産休・育休に入る前にやるべきことを紹介します。

仕事の引き継ぎをする

管理職や委員会、係を任されているなど、職場内で何らかの役割がある看護師は、仕事の引き継ぎについて上司に相談のうえ、次の担当者に引き継ぎをしましょう。妊娠経過により早めの産休に入ることも想定し、直前ではなく数ヶ月前から仕事の引き継ぎをおくと安心です。

ロッカーや私物を整理する

産休に入る前に、職場においてある私物の整理をします。復帰後に部署が変わる可能性や、何らかの事情で育休中に退職する可能性もあるからです。職場によってはロッカーの鍵も一旦返却になる場合があるので、指示に従いましょう。

限度額認定証の申請・発行をする

限度額認定証とは、窓口での高額な医療費の支払いを抑えるための書類です。
出産時に帝王切開などの医療的処置が必要となった場合、高額な医療費がかかる可能性があります。 医療費が高額になった場合は、後から「高額医療費」の申請が可能ですが、あらかじめ窓口での支払いを限度額の範囲にしておくことで、金銭的な負担をおさえることができます。

申請先は社会保険の加入状況によって以下のように異なります。

加入状況 申請先
自分で社会保険に加入している場合 勤務先の担当者
夫の扶養に入っている場合 夫の勤務先
国民健康保険に加入している場合 居住地の役所

居住地の保育園の情報収集をする

産後、早い段階での復帰を考えている人は、保育園の情報収集も大切です。自治体によっては途中入園がむずかしい場合があるので、役所に確認してみましょう。
職場の託児所を検討している人は担当者に利用状況を確認したり、託児所を利用している同僚から情報収集をしてみましょう。

産休・育休中にやるべきこと

産休・育休に入ると、さまざまな手続きを行う必要があるため、混乱しないように事前に理解しておくことが大切です。出産後は速やかに職場に報告しましょう。

出生届の提出

子どもが生まれたら、14日以内に「出生届」を役所に提出します。出生届を提出すると、さまざまな手続きが進められます。産後まもない時期なので、可能であれば家族に手続きをしてもらうなどしましょう。

手当などの申請

出生届を提出したら、出産や育児に関する各種手当などの申請手続きを進めましょう。以下に出産後に手続きすべきリストをまとめましたので、参考にしてください。

産休・育休中の手続きリスト

仕事復帰に向けて準備すること

産休・育休の後半では、仕事復帰に向けて準備を進めていきます。復帰後に困らないようにしましょう。

復帰後の制度を把握しておく

子育て中の人には、子育てに関するさまざまな支援制度が設けられています。

育児時間

女性が1歳未満の子どもを育てながら働く場合、1日2回、少なくとも各30分育児時間を取得できます。雇用形態は関係なく、本人が希望すれば申請可能です。
もともと授乳時間に確保に充てるためにできた制度のため、現状は男性の取得は認められません。

参考:厚生労働省/妊娠出産・母性健康管理サポート「育児中の女性労働者への配慮」

そのほかの活用したい制度

働きながら子育てをするためには他にも制度が設けられています。

・短時間勤務制度
事業主は、3歳未満の子を養育する男女労働者に、短時間勤務制度を設けなければならない

・子の看護休暇
小学校入学前の子を養育する男女労働者が会社に申し出ることによる、有給休暇とは別に子の看護や予防接種のための休暇を取得できる

参考:厚生労働省/妊娠出産・母性健康管理サポート「育児中の女性労働者への配慮」

制度があることを理解し、うまく活用しながら子育てと両立しましょう。

保育園の見学・申し込みをする

自治体にもよりますが、多くの保育園では翌年4月入園対象の説明会や見学は、夏〜秋ごろに見学、秋ごろから入園募集が始まります。そのため、早期の復帰を考えている人は、生まれ月によっては妊娠中に保活を始める必要があります。
特に0、1歳児で4月入園を希望する人は早めに情報収集をしておきましょう。院内託児所を利用したい人は職場に確認のうえ、利用を希望する旨を伝えましょう。

復帰後の生活について家族と話し合っておく

復帰後は、仕事と子育ての両立をしていくため、これまでとは異なるライフスタイルになることが予想されます。子どもの送り迎えや、熱を出した時などイレギュラー時の対応も含め、パートナーや家族と具体的に話し合っておきましょう。

制度を理解して安心して産休・育休を取得しよう

産休・育休中は基本的に給料をもらえませんが、各種手当の支給を受けることで生活費を補うことができます。申請方法などを理解し、スムーズに手当を受け取れるようにしておくことが大切です。
早期の復帰を考えている看護師は、産休・育休中に子どもの保育園の準備なども進めておく必要があります。計画的に準備を進め、安心して出産・育児に専念できるようにしましょう。

伊藤雪乃
この記事を書いた人
伊藤雪乃
2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力

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