看護師の離職率は一般的に高い傾…
看護師一年目の辛い時期の乗り越え方。転職のリスクも解説
公開日:2023/4/27
最終更新日:2023/4/27
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看護師一年目の方の中には、新しい環境でのストレスや忙しさなどから「辛い」「辞めたい」と感じている人もいるでしょう。理想と現実のギャップやプレッシャーに押し潰されないためにも、辛い時期の乗り越え方や転職を見極めるポイントについて解説します。
目次
看護師一年目の目標から見る仕事内容
看護師一年目の目標は、業務に関する基本的なスキルを習得し、自立できるようになることです。目標とあわせて看護師一年目の具体的な仕事内容をおさえておきましょう。
基本的な看護技術の自立
看護師一年目では基本的な看護技術を身につけていきます。入職したての4月からしばらくは集団研修やプリセプターのシャドーイングが行われますが、5〜7月頃になると以下のような基本技術を自立して行うことが求められます。
- バイタルサイン測定
- 食事介助
- 清潔ケア・入浴介助
- 排泄介助
- 口腔ケア
- 環境整備
- 創傷管理
- 投薬 など
採血・ルート確保業務の自立
患者さんの採血やルート確保がスムーズに行えるよう、静脈確保のスキルを習得していきます。一年目の看護師にとってはプレッシャーとなりますが、大きな目標の1つです。
病院によって、入職後すぐに練習を開始し6〜7月頃には自立する場合もあれば、夜勤業務に慣れた年明けから練習を開始し2年目になってからの自立を目指す場合もあります。
主に以下のような流れで習得していくケースが多いでしょう。
- トレーニングキットでの練習
- 新人同士の練習
- 先輩の腕で練習
- 患者さんの腕で実践
実践を重ねることで、トラブルへの対処法も身につけていきます。
日勤業務の自立
看護師一年目の秋頃には、患者のケアや看護記録の作成など一連の日勤業務の自立が求められます。まず基礎看護技術が一通り自立して行えるようになる6・7月頃から、受け持ち患者を割り当てられるようになるでしょう。
まずは1〜2人、自立度の高い患者からスタートします。先程紹介した採血以外の医療処置は実際に患者さんを受け持ちながら覚えるため、事前の学習も重要です。
9・10月頃には3〜5人の患者さんを自立して受け持つようになります。この時点でも、プリセプターや先輩看護師に質問したり、ヘルプを頼んだりすることは問題ありません。あくまで自分で考えて行動できるかどうかが重要な時期です。
夜勤業務の自立
夜勤業務のシャドーイングは6・7月頃から始まりますが、看護師1人として数えられるようになるのは一般的に10〜12月頃です。夜勤業務では、少ない人員で患者の急変や緊急入院などの対応が求められることがあるため、日勤業務よりも遅い冬頃の自立が目標とされています。
夜勤では日勤時の3〜4倍の人数の患者さんを受け持ち、夜・朝の食事介助や就寝援助、投薬管理、夜間の見回りやナースコール対応を行います。日勤業務よりも責任が増えることから、一年目の看護師にとってはとくにプレッシャーを感じやすい業務と言えるでしょう。
看護師一年目が辛いと感じる理由
一年目の看護師は新しい環境に順応するという社会人としての課題と同時に、患者さんの安全を確保するという看護師ならではのプレッシャーにも向き合う必要があります。一年目の看護師が辛いと感じる理由についてみていきましょう。
理想と現実のギャップが大きい
看護師として働き始めた一年目には、理想と現実のギャップが大きいと感じる場面は少なくありません。入職前後に感じるこのギャップを「リアリティショック」といいます。
看護学校で学んだ技術や知識は現場での実際の業務にマッチしないことが多く、患者さんの人数や病状によって想定外の対応を求められることもあります。入職前に思い描いていた看護師像や働き方とのギャップに戸惑い、モチベーションを見失ってしまう人もいます。
知識や経験不足を実感する
入職後は1人の患者さんではなく複数の患者さんを担当しますが、まだまだ知識や経験が足りない看護師一年目には、一人ひとりの状態や病歴を正確に把握して対応することが難しい場合があります。
いざ患者さんを目の前にすると思い通りに動けなかったり、ミスは許されないというプレッシャーから辛いと感じることも多いでしょう。一年目の看護師は経験不足で当然です。1人で思いつめすぎずに、指導を仰ぎながら経験を重ねていきましょう。
予想以上に忙しい
看護師の業務には、患者さんの状態の観察・看護ケア実施から評価、医師の指示に基づく医療処置や投薬、看護記録の作成など様々な業務があります。また入院対応や緊急の検査・手術などの業務が割り振られることで、残業が続くこともあるでしょう。
初めての夜勤で生活リズムを整えることにも苦労しますが、帰宅後の勉強や休日の研修・病棟会参加など、業務以外にも多くのタスクが発生します。
看護師一年目で経験が浅い時期であっても経験を積むために多様な業務が割り振られることもあるため、予想以上に忙しく辛いと感じるかもしれません。
人間関係が大変
一年目の看護師にとって、人間関係は大きな悩みのひとつです。人間関係の悩みは一年目の看護師に限ったものではありませんが、上司や同僚との人間関係がうまくいかない場合には意見や質問をしづらく、緊急事態に対処する際に報連相やチームワークがうまく機能しないリスクもあります。
勤務時にこうした悩みを相談できる相手がいない場合には、精神的な負担も大きくなります。看護師の仕事自体は好きでも職場に行くのが辛いため、辞めたいと考える人も多いようです。
看護師一年目の辛い時期の乗り越え方
ここからは、看護師が一年目の辛い時期を乗り越えるための方法について考えていきましょう。
小さな目標を設定する
経験の浅い看護師一年目で達成しにくい大きな目標ではなく、まずは小さな目標を設定しましょう。達成感を得やすいため、モチベーションを維持することができます。たとえば、チーム内の患者さんであれば受け持ち以外でもナースコールをすぐに取る、わからないことを1日1つ以上先輩に質問する、といったようなものです。
当たり前なことでも目標としてリスト化し達成したらチェックをつけるなど目に見えるようにすることで、モチベーションアップにもつながるはずです。
わからないことは積極的に聞く
看護師一年目は、業務や職場環境に慣れるまでに時間がかかって当たり前です。わからないことは積極的に聞くことを心がけましょう。質問する際には、何がわからないのかを整理して明確にすることがポイントです。
たとえば、上司や先輩看護師に「この処置の手順を勉強してきたのですが、これで合っていますか?」と聞くことで、補足説明や実際の手技を教えてもらうことができます。さらに、自分自身が担当する患者さんの状態について、わからないことをそのままにせず先輩や医師に相談することも大切です。
2〜3年目以降になると、かえって質問しづらくなってしまいがちです。勉強してもわからないことは今のうちに聞いておくように意識すると、後の不安も軽減できるでしょう。
オンオフを切り替える
看護師一年目のうちに、仕事とプライベートのオンオフを切り替える癖をつけましょう。仕事中は患者さんの治療や看護ケアに集中し、プライベートでは家族や友人との時間を大切にしたり、趣味に打ち込んだり、自分自身がリフレッシュできる時間を作ることも重要です。
気持ちを切り替えて仕事とプライベートのメリハリをつけることは、ストレスを軽減し心身の健康を維持することにもつながります。
体調管理を徹底する
看護師一年目は業務に慣れるまでに心身ともにストレスを感じることが多く、体調を崩しやすい傾向にあります。体調管理を徹底するために、適度な運動や栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠を確保し、体力や免疫力を維持しましょう。
看護師が顔色の悪い状態や疲労を感じた顔でケアを行うと、患者さんを不安にさせてしまうことがあります。患者さんに安心してケアを受けてもらうため、自分自身の健康のためにも、体調管理を怠らないようにしましょう。
看護師一年目だけど辞めたい時はどうしたらいい?
看護師はやりがいのある仕事ですが、予想外の困難やストレスを感じることもあります。特に看護師一年目は、未経験の業務や人間関係の構築などで悩むことが多いため、辞めたくなることもあるでしょう。
ここからは、看護師一年目に辞めたいと考えている場合にどのように対処すればよいのか考えていきます。
辛いと感じている要因を見直そう
まず、辛いと感じている要因を整理していきます。長期的に続き、かつその職場特有の要因である場合には、異動や転職も視野に入れると良いでしょう。
長期的に続く辛さかどうか
現在感じている辛さが一時的なものか、長期的なものか考えてみましょう。一時的に辛いと感じるものとして、新しい環境や仕事に慣れていないストレスや業務量増加による残業が挙げられます。
長期的な辛さは、上司や同僚との人間関係や不規則勤務など自分の力では変えられないものです。仕事に慣れて多くの業務をこなすことができたら現在の辛さは軽減する、とイメージできる場合には、経験を重ね積極的に勉強をすることで自信がつき、徐々に辛さを緩和することができるでしょう。
現在の職場特有の辛さかどうか
人間関係や不規則勤務はここにも該当します。例えば外科病棟特有の迅速な処置が求められる環境に合っていない、内科病棟特有の患者さんの重症度に気持ちがついていかない、といった要因もあるでしょう。
このような場合には、職場を変えることで辛さを軽減できる可能性があります。ただし、職場を変えても同じような辛さがあるかもしれないということは念頭に置いておかなければなりません。
看護師一年目に転職を検討する場合の注意点
辛さを解消するため転職も一つの選択肢として挙げられますが、看護師一年目に転職を検討する場合、注意すべき点があります。
看護師一年目の離職率は1割弱と少ない
看護協会が公開する「2021年 病院看護・外来看護実態調査 報告書」によると、新卒看護師の離職率は8.2%でした。看護師一年目であっても退職し転職する人は一定いるものの、リスクもあるため、本当に辞めたほうが良いかは慎重に検討しましょう。
基礎を学び直す必要がある
転職した場合、新しい環境で新たに基礎から学ぶ必要があります。とくに看護師経験の乏しい一年目では、同期看護師とスキルや知識に差が生まれることも考慮しておきましょう。新しい職場での業務に対応するために研修や勉強会などを積極的に受けるなど、業務時間外の勉強に励むことになりかえってストレスを溜めてしまう可能性もあります。
転職先の選択肢が限られる
看護師は、病院やクリニック、介護施設など多様な職場で働くことができます。しかし、年度途中の転職は厳しい場合もあることを視野にいれておきましょう。また、転職する場合は既卒扱いとなるため、実務経験3年といった条件を満たせず希望する転職が叶わない場合もあります。
辛いと感じる要因を明確にして乗り越え方を見つけよう
病院の目標と自分自身の理想の看護師像や働き方のギャップ、人間関係の悩みなど看護師一年目の時期に辛いと感じる要因は様々です。こうしたときには、辛いと感じる要因を明確にして自分に合った乗り越え方を見つけることが大切です。
また、どうしても今の環境が辛い場合、看護師一年目でも転職は可能です。その後のキャリアへのリスクも理解した上で選択肢として検討してみてください。
【参考】
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この記事を書いた人村上舞
- 帝京大学医療技術学部看護学科を卒業後、医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会 整形外科病棟勤務に勤務し、整形・脊椎外科の急性期看護を経験。以降は、循環期病棟、呼吸器内科病棟、回復期病棟で勤務。出産を機に退職し、特養やデイサービス、クリニック、健診センター等など幅広い施設での経験を活かし、ライターとして活動中。