多くの病棟が導入している「チー…
【看護方式の種類まとめ】メリット・デメリットから最新セル型まで解説
公開日:2023/4/25
最終更新日:2023/12/28
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病棟での業務をどのように進めていくかを示す看護方式。代表的なものに「チームナーシング」や「プライマリーナーシング」があります。この記事では、看護方式の種類や最新のセル型看護方式、それぞれのメリット、デメリットをまとめて解説します。
看護師の行動組織を示す「看護方式」
看護方式とは、病棟における看護業務を効率的かつ質の高いものにするため、看護師がどのような組織で行動するかを示すもので、複数の種類が存在します。
方式ごとに特徴があり、看護師の役割分担や患者さんとの関わり方が異なります。
代表的な看護方式に以下が挙げられます。
これらの方式はそれぞれ異なるメリットとデメリットがあります。病院ごとに採用される方式は異なり、複数の方式を組み合わせることもあります。その病院の看護師の年齢層や患者層によっては、年単位で看護部によって方式が見直されることもあるでしょう。
導入されている看護方式を正しく理解して看護業務に取り組むことで、やりがいやケアの質の向上にも繋がります。
看護方式の種類は大きく分けて2つ
看護方式は、大きく分けてチームで行う方式と専任で行う方式の2つに分類されます。それぞれの方式で、特徴や適した状況が異なります。
チームで行う看護方式
チームナーシング、固定チームナーシング、モジュールナーシング、機能別看護がこれにあたります。チームで行う看護方式では複数の看護師が連携してチーム内の患者さんのケアを行い、役割や責任を分担して効率的なケアを提供します。
専任で行う看護方式
プライマリーナーシング、パートナーシップナーシングがこれにあたります。専任で行う看護方式では1〜2人の看護師が1人の患者さんのケアを一貫して担当し、信頼関係を築きながら個別性の高いケアを提供します。これにより、より深いニーズにあわせた対応が可能となります。
各看護方式のメリットとデメリット
各看護方式は病院や患者さんのニーズに応じて選択されます。以下に各看護方式の特徴を紹介します。
チームナーシング
チームナーシングは複数の看護師が1つのチームを組み、そのチームの担当患者の看護業務を共同で行う方式です。チームリーダーが全体の調整を行い、チームメンバー間で役割分担や情報共有を行います。
また、チームメンバーは専門性の高い知識を持った看護師など、様々な年次の看護師から構成されるため、知識や技術を間近で吸収することができる学びの大きい環境といえるでしょう。
チームナーシングのメリット
- 看護師個人の能力差をチーム全体でカバーできる
- 常に一定水準の看護を提供できる
- 個々の成長が期待できる
チームナーシングは、チームの協力と連携が重要であり、円滑なコミュニケーションが求められます。定期的なミーティングや情報共有の仕組みを整備することで、チーム内の連携を強化し患者さんの細かい変化にも対応できるようになります。
チームナーシングのデメリット
- チームリーダーの負担が大きい
- こまめな情報共有をする必要がある
- 患者さんの担当がいないため細かい変化を見落としやすい
これらのデメリットを克服するために、チームナーシングを他の看護方式と組み合わせて実践することがあります。
チームナーシングの特徴やリーダー業務については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
プライマリーナーシング
プライマリーナーシングは、1人の看護師が1人の患者さんの入院生活を一貫して担当し全般的なケアを提供する看護方式です。患者さんと深く携われることがやりがいでもあり、責任が大きいことも特徴です。
プライマリーナーシングのメリット
- 患者さんの小さな変化に気付きやすい
- 患者さんとの信頼関係を築きやすい
- 責任感が持てる
プライマリーナースは、患者さんのニーズに応じたきめ細かいケアを行うことが可能です。1つの症例を一貫して見ることができるため、専門性やスキルの向上にもつながるでしょう。
プライマリーナーシングのデメリット
- 看護師個人の責任が大きい
- 提供する看護の質に差が出やすい
- 患者さんと良好な関係性を築けない場合は看護が苦痛に感じることもある
プライマリーナーシングの場合、看護師の知識や経験値が看護の質に直結します。そのため、個人にかかる責任の重さを負担に感じることもあるでしょう。
プライマリーナーシングであっても、医療チームの一員としてケアに当たっていることを忘れずしっかりとコミュニケーションを取って情報共有を行うことが大切です。
固定チームナーシング
固定チームナーシングは、一定期間メンバーやリーダーを固定しチーム全体で担当患者のケアを行う看護方式です。チームナーシングが日~週単位でチームの構成が変化するのに対し、月~年単位でチームメンバーが固定されるため、プライマリーナーシングのメリットも併せ持つのが特徴です。
固定チームナーシングのメリット
- 担当看護師が不在時にもチームで患者さんの状況を把握できる
- 担当看護師の能力をチームでカバーし、一定水準の看護を提供できる
- チーム内での協調性が養われる
患者さんのケアや対応に悩んだ場合に、チームメンバーの誰かに相談することで解決に導きやすい点が大きなメリットです。
固定チームナーシングのデメリット
- 異動や退職によって業務に支障が出やすい
- チーム内での連携が必要不可欠
固定チームナーシングではチーム全体で担当する患者さんの状態を把握する必要があるため、より看護師同士のコミュニケーションが求められます。
パートナーシップナーシング(pns)
パートナーシップナーシングは、2人の看護師がペアで1人の患者さんのケアを担当する看護方式です。この方式では、ベテラン看護師と新人看護師がペアになり、互いにサポートしながら業務を行います。
パートナーシップナーシングのメリット
- 新人やブランクのある看護師も安心して看護が行える
- 看護師間でのコミュニケーション能力が高まる
- 看護師個人の負担が少ない
パートナーシップナーシングの場合、1人の看護師が一貫して患者さんを受け持つプライマリーナーシングとは異なり、2人で相談しながらケア提供ができるため、看護師1人にかかる負担が軽減する点が大きなメリットと言えるでしょう。
パートナーシップナーシングのデメリット
- すぐに相談できるため自分で考える力が身に付かない
- 新人看護師からベテラン看護師に意見を主張しにくい
パートナーシップナーシングのメリットとデメリットは表裏一体です。ペア間の人間関係が適切なケアの提供やスキルアップを左右するため、互いにコミュニケーションをとり関係性を構築することが重要です。
モジュールナーシング
モジュールナーシングは、日本独自の看護方式です。病棟内に所属する看護師を2つ以上のチームに分け、そのチーム内でさらに小規模なチーム(モジュール)を組んで、それぞれのモジュールで患者さんを入院から退院まで一貫して担当します。患者さんの状態やニーズに応じてチームが構成されることもあります。
モジュールナーシングのメリット
- 患者さんの個別性にあわせた看護計画が立案できる
- 一定水準の看護を提供できる
- 協調性が養われる
チームナーシングと比較すると、1つのモジュールが担当する患者数は少なくなります。そのため各モジュールのメンバー1人ひとりが担当患者さんにより詳しくなり、ケアに集中しやすい点がメリットと言えます。
モジュールナーシングのデメリット
- 他モジュールの患者さんの状況が分かりにくい
- 他モジュールの看護師とのコミュニケーションが減る
その日のメンバー編成によってモジュールを一時的に移動するような場合には、患者さんについてカルテや他のメンバーからしっかり情報収集する必要があります。
機能別看護方式
機能別看護方式は、看護業務をそれぞれの機能ごとに分類し、専門的なスキルを持つ看護師が担当する方式です。例えば、採血や点滴、バイタルサインのチェックなどの業務がそれぞれ異なる看護師に割り当てられます。
機能別看護方式のメリット
- 業務を分担することで看護師個人の負担を分散できる
- 看護師個人の能力に合った業務を割り当てられる
- 少ない人数でも効率的に業務ができる
一人ひとりの看護師が担当患者さんへ幅広いケアを行う他の看護方式とは異なり、分業化によって業務効率が高まる点が大きな特徴です。
機能別看護方式のデメリット
- 担当看護師がいないため患者さんが不安になりやすい
- 患者さんとの信頼関係が築きにくい
- 看護師間のコミュニケーションが減る
機能別看護は他の看護方式と組み合わせて運用されることもあるため、こうしたデメリットは克服できている場合もあります。
複数の看護方式を組み合わせている病院も
病院によっては複数の看護方式を組み合わせることで、より効率的で質の高いケアを提供します。以下に2つの組み合わせ例を示します。
固定チームナーシング×パートナーシップナーシング
この組み合わせでは病棟内に2つ以上の固定チームが存在し、新人またはブランクのある看護師とベテラン看護師がペアとなってチーム内の患者さんに看護を提供します。
新人やブランクのある看護師が安心して看護が行える環境で協調性が養われ、チーム内での連携強化が期待できます。
固定チームナーシング×パートナーシップナーシング×機能別看護方式
この3つの組み合わせでは前述の特徴に加えて、採血やバイタルサイン測定などは機能別業務担当の看護師が実施することになります。
看護師個々の専門性を活かし効率的に業務が行える一方で、チームでの協働により一定水準の看護を提供できるため、患者さんに対してより質の高いケアを提供することが可能となります。
最新の看護方式「セル型」とは?
セル看護提供方式(R)(以下、セル型)は、福岡県・飯塚病院が開発した新しい看護方式です。看護師の動線の改善によって密度の濃いケア提供を目的としています。
各看護師が、病室にケアや看護記録、その他の業務に必要な物すべてを載せたカートを持参するため、ナースステーションへ戻らず患者さんのそばで業務を行うことが可能です。
また看護師長以外の日勤看護師全員が日単位に患者さんを割り振られ、担当患者さんに対するあらゆる業務を受け持つことになります。そのため、看護師1人当たりの受け持ち患者さんの人数が減る点も大きな特徴です。
参考:飯塚病院 セル看護推進研究会「セル看護提供方式(R)について」
最新の看護方式「セル型」のメリットと課題
セル型は患者対応の迅速化などのメリットがある反面、新しい方式ならではの課題も存在します。看護師自身が新しい看護方式に対して理解を深め、業務の改善に取り組むことが求められます。
セル型のメリット
- ナースコールが鳴ってから患者対応までの時間が短縮する
- 患者さんの細かい状態を把握できる
病室内ですべての業務を行うため、上記のようなメリットが実現します。カンファレンスも患者さんの側で行うため、患者参加型となりより患者さん一人ひとりのニーズに寄り添った看護計画を立てやすくなります。
セル型の課題
重症度やその日の看護ケア量が均等になるように担当患者さんが割り振られるため、業務開始時点ではスタッフ全員の業務量は均等です。しかし緊急処置や検査などの突発的な業務が入ることや看護師の力量によって進捗は異なるため、勤務終了間際になると看護師間の業務量に差が生じる場合もあります。
自分の業務が完了したスタッフがヘルプに入りカバーしますが、業務が早く終わったスタッフが不公平感を抱いてしまうという懸念があります。全スタッフが気持ちよく働けるスタッフ間の連携が今後の課題と言えるでしょう。
自分の看護観に適した看護方式を把握しよう
看護方式には複数の種類があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。それぞれの看護方式を正しく理解し、自分にとっての理想の看護が行える方式が導入された病院を選ぶことが、日々の業務の質の向上や看護師としてのキャリアを築くための重要な要素となります。
就職・転職を検討する際には、求人先がどのような看護方式を導入しているかを検討材料のひとつにしてみましょう。
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この記事を書いた人村上舞
- 帝京大学医療技術学部看護学科を卒業後、医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会 整形外科病棟勤務に勤務し、整形・脊椎外科の急性期看護を経験。以降は、循環期病棟、呼吸器内科病棟、回復期病棟で勤務。出産を機に退職し、特養やデイサービス、クリニック、健診センター等など幅広い施設での経験を活かし、ライターとして活動中。