病棟は主に急性期・回復期・慢性…
看護師のモチベーション問題。「やりがいがない」から下がる原因を考える
公開日:2022/9/22
最終更新日:2024/2/16
全て表示
看護師として働くうちにモチベーションが低下し「やりがいを感じないから辞めたい」という気持ちになることもあるでしょう。充実感を得ながら前向きに働くために、看護師がモチベーションを維持するための方法を紹介します。
目次
看護師はやりがいがある?モチベーションについてアンケート
看護師としてのやりがいは人によってさまざまです。やりがいが感じられなくなると仕事へのモチベーション低下につながります。
今回は現役看護師に仕事のやりがいについてアンケート調査を実施しました。その結果をもとに看護師のモチベーションについて解説します。
7割以上が看護師という職業自体にやりがいを感じている
ナース専科が行ったアンケート調査では、7割以上の方が看護師という仕事自体にやりがいを感じていることがわかりました。しかし「やりがいを感じていない」「わからない」という回答の方も少なからず存在します。
6割以上の看護師は自分のやりがいを把握できている
さらに6割以上の看護師は、どのような業務にやりがいを感じているのか把握できていることが確認できました。その一方で、3割程度の方が自身のやりがいを把握できずにいることもわかりました。
現在の職場でやりがいを感じているのは半数ほど
しかし現在の職場でやりがいに関する問いでは、やりがいを感じられている方と、感じられないまたはわからない方は、ほぼ同じくらいという結果でした。現在の職場でやりがいを感じられずに働いている方は、少なくないことがわかります。
看護師はどんなときにやりがいを感じる?
看護師という職業や自分自身のやりがいについて把握できている人は半数以上いるなかで、今の職場ではやりがいを見失っている看護師も一定数いることがわかりました。では看護師がどのようなときにやりがいを感じているのか、下記に回答をまとめました。
看護師がやりがいを感じるときの例
- ゆっくり話す時間を設けて傾聴したことで「気が楽になった」と言ってもらったとき
- 患者さんやご家族に寄り添い、ニーズに応え、ゴールに向かって一緒にがんばっているとき
- 複数の業務を抱えたとき、優先順位を考えてスムーズに進んで「ちゃんと仕事ができている!」という充実感が得られたとき
- 多職種で連携してケアした患者さんが無事退院したとき
- 勉強して得た知識を看護技術に活かして患者さんの治癒促進に役立てられたとき
- 医療行為以外のアセスメントをして必要と考えた援助(保清、環境整備、傾聴など)を行い、患者さんの喜びを得られたとき
- 適切なアセスメントをして、患者さんの苦痛を取り除く援助ができたとき
- 時間内に残務がなく仕事を終えられたとき
- 患者さんと深くかかわれること。長くかかわる中で、その人の経験や深い考えを感じることができたとき
- 患者さんに寄り添い、じっくりと向き合うことで患者さんの人生の一部を共有し、生命の尊さを感じられること
- 患者さんに一番近い立場として多職種の意見を調整すること
参考:ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
看護師として患者さんの役に立てたときにやりがいを感じる方が多いことがわかります。そのほか、効率よく業務を進められたときにやりがいを感じるという回答も得られました。
職場・診療科によって異なるやりがい
看護師は職場や診療科ごとに業務が異なるため、それぞれ特有のやりがいがあるようです。以下では職場や診療科ごとで感じるやりがいについて紹介します。
急性期、救急分野のやりがい
急性期病棟や救急分野では、命に直結する現場で働くことや、チームで連携して患者さんの容態を安定させることにやりがいを感じる看護師が多いようです。
急性期、救急分野でやりがいを感じるときの例
- 命の現場に関わるという自負がやりがいにつながる
- 患者さんが術後に回復し、自宅へと退院していく姿を見送れたときにやりがいを感じる
- 患者さんの容態の変化を観察して対応できたとき
- 忙しい局面でスタッフと力を合わせることで乗り換えられたとき
- 医師の診察をスムーズに補助したことで患者さんの容態が良くなり、帰宅できるようになるのを見届けられたとき
参考:ナース専科調べ( 2022年8月5日/有効回答数:300)
患者さんが命の危機に直面していることから、迅速な状況判断や処置などが求められる緊張感の強い職場ならではのやりがいといえます。
回復期、地域包括ケアのやりがい
回復期や地域包括ケアで働く看護師は、患者さんの退院後を見据えてケアを実施することにやりがいを感じるようです。
回復期、地域包括ケアでやりがいを感じるときの例
- 患者さんのADL、QOLがともに向上し今後の生活への意思決定ができたとき
- チーム医療を実践するなか多職種で気持ちを共有できたとき
参考:ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
ソーシャルワーカーなど他の専門職と連携することで、よりスムーズに患者さんの復帰をサポートできる点もやりがいを感じるポイントといえるでしょう。
慢性期(療養)のやりがい
入院や治療が長期におよぶ慢性期(療養)で働く看護師は、関わりによって患者さんに良い変化があったときにやりがいを感じているようです。
慢性期(療養)でやりがいを感じるときの例
- 入院時は不穏だった患者さんが、看護師の関わりによって穏やかに経過できるようになったとき
- 寝たきりの患者さんが笑顔になったり、普段は発せない言葉を聞いたりしたとき
- 食思不良の患者さんが少しでも食事を摂取されたとき
- 患者さんにとって最善な助言ができて患者さん自身に喜んでもらえたとき
参考:ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
患者さんがより良く生きるためのサポートに携われる点が、大きなやりがいになっているのではないでしょうか。
クリニックのやりがい
患者さんの身近な存在であるクリニックの看護師は、早期発見や早期治療につなげることで健康を守る役割にやりがいを感じているようです。
クリニックでやりがいを感じるときの例
- 患者さんの疾病の早期発見ができて、治療できる病院につなげて回復・退院した患者さんがお礼を言いに来てくれたとき
参考:ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
患者さんとコミュニケーションがとりやすいことや、健康に過ごすための支援ができる点が、やりがいを感じるポイントになるでしょう。
訪看など介護福祉分野・施設のやりがい
訪問看護など介護施設分野の施設で働く看護師は、利用者さんの家族との関わりや、利用者さんらしい暮らしを支援することにやりがいを感じています。
訪看など介護福祉分野・施設でやりがいを感じるときの例
- 利用者やご家族の想いに共感しつつ、問題点をケアマネやリハビリスタッフと共有し、解決に向かって協業しているとき
- 利用者やご家族に感謝されたとき
- 利用者やご家族と深くかかわれること
- 入居者が安全に安心して、その人らしい暮らしが送れるようにケアすること
- 自分のスキルが存分に活かせること
参考:ナース専科調べ(2022年8月5日/有効回答数:300)
利用者さんやご家族と向き合う時間がとりやすく、コミュニケーションを積み重ねられる環境だからこそ生まれるやりがいかもしれません。
看護師のモチベーションが下がる原因
看護師のモチベーションが下がる原因として、人間関係、職務内容、待遇など複数の要素から仕事へのやりがいが見いだせなくなることが考えらます。
モチベーション低下の根本原因を取り除くことで、モチベーション維持に役立てられるかもしれません。以下ではどんな場合にモチベーションが下がりやすいのか解説します。
人間関係がうまくいかない
看護師だけでなく、医師や他の職種の人、患者さんやご家族との関係が良くないことは、モチベーション低下の原因になり得ます。次のようなことで、嫌な思いをした経験がある方もいるかもしれません。
- いじめやパワハラがある
- 強い語気で叱責される
- 理不尽な要求をされる
- 悪口が絶えない
このような職場へは「行きたくない」と感じるのも無理ないでしょう。実際に退職した看護師のなかにも、人間関係を理由に挙げる人がいます。
人間関係トラブルで退職を決意した事例
職場では5~10年目くらいの中堅看護師がいなくて、若手とベテランが多く、人間関係がギスギスした状態。「これだから最近の若い子は」「一度教えたらちゃんと覚えてよ」と嫌味を言われることもありました。また、若手が率先してナースコールをとることや緊急入院の患者さん、検査の送り迎え、雑用などを半ば押し付けられるようなことが多く、段々としんどくなってしまいました。また、ひとりだけ私に対してあたりのキツイ先輩がいて、職場に行くのも憂鬱に。
人間関係の悩みから仕事のモチベーションが下がることは珍しくありません。
職務内容が理想と異なる
思い描いていた看護師の仕事と、実際に行なう仕事のギャップが大きいことが原因でモチベーションが下がることもあります。
たとえば、患者さん一人ひとりと丁寧にコミュニケーションを取りたいと考えていても、忙しさからできないといったジレンマを抱えることもあるでしょう。また病院の方針で理想の看護ができない場合も、モヤモヤするかもしれません。
自分の理想とする看護ができないことは、モチベーション低下の原因につながるでしょう。
仕事内容と給料が見合わない
給料が仕事内容に見合っていないと感じることで、モチベーションが下がることもあります。
2交代で勤務時間が長くなったり、夜勤が入ったりして、体力的なつらさを感じることはもちろん、実際に体調を崩す方も少なくありません。その割に基本給は高くなく、手当を入れたとしても労力に見合ったお給料がもらえていないと感じる方もいるでしょう。
「身を削って働いているのにこのお給料では割に合わない」と思い始めると、モチベーションが下がっていきます。
ワークライフバランスがとれない
仕事と私生活のバランスがとれないことは、モチベーションを低下させる原因になりえます。
看護師は仕事がハードになりやすく、夜勤から帰宅したら疲れすぎて家事もままならないなど、プライベートが圧迫されることもあるでしょう。家族がいる方であれば、申し訳なさや罪悪感を抱き「そこまでして働く意味はあるのか」と考えるかもしれません。
ワークライフバランスが崩れることで働くことに意義を感じられず、モチベーションが低下する可能性があります。
看護師がモチベーションを維持するメリット
モチベーションを維持することのメリットは、やりがいを感じながら前向きな気持で働けるようになることです。ポジティブな気持ちで仕事に取り組めば「辞めたい」という気持ちを払拭できたり、仕事自体がもっと好きになったりすることもあります。
モチベーションが維持されており、仕事に意欲的な状態であれば、キャリアアップやスキルアップなど自分を高める機会にも積極的に挑戦できるのではないでしょうか。
キャリアやスキルが向上することでやりがいも増え「看護の仕事を続けたい」と思えるようになるかもしれません。
モチベーション維持のためにできること
モチベーション維持のためには、モチベーションを低下させる原因を改善し、自分から仕事にやりがいを求めていくことが必要です。職場を変えたり、勉強の機会を増やしたりすることで、下がりかけているモチベーションを向上させられるかもしれません。モチベーション維持のためにできることを解説します。
仕事の成果に目を向ける
「どんな仕事も患者さんの役に立っている」と考えられれば、モチベーションが維持できるはずです。
慣れてくると繰り返しの業務に対して「意味がない」「退屈だ」と感じることもあるかもしれません。しかしすべての仕事は患者さんの役に立っているはずなので、自分が仕事をしたことでどんなことに貢献できたのか成果に目を向けてみましょう。
目的や目標をもつ
目的や目標をもつことは、モチベーション維持に役立ちます。同じ業務をするにしても、与えられたからやるという受動的な取り組み方では、なぜその仕事をするのか意味を見失いがちです。
日々の仕事を目的達成までの過程としてとらえられるよう、自分自身で課題を課して目標をもつとやりがいも見いだせやすいでしょう。
学ぶ機会を増やす
勉強する機会を増やすこともモチベーション維持につながります。看護師の仕事に慣れてくると、新鮮さが感じられずマンネリ感を覚えることもあるでしょう。勉強することで新しい発見があったり、もっと知りたいという気持ちが出てきたりするかもしれません。
仕事内容にマンネリを感じている人は、学ぶ機会を作り新しい世界を知ることで、モチベーションが維持されるかもしれません。
ストレスをうまく発散する
ストレスを発散することで気持ちが前向きになり、モチベーションが維持されることもあります。ストレスがたまっている状態では、マイナス思考に陥りがちです。ものごとをポジティブに捉えられず、モチベーションが低下してしまうこともあります。
友だちと出かける、買い物する、趣味に没頭する、体を動かすなど、気持ちをリフレッシュさせてモチベーションを維持しましょう。
職場を変える
今の職場で行動してもモチベーションの低下が改善されない場合は、職場を変えることも選択肢のひとつとなります。人間関係、職務内容、待遇、ワークライフバランスなどが改善されることで、モチベーションを維持できる可能性があるためです。
職場の雰囲気や方針について不満があっても、自分の力では変えるのは難しいでしょう。今の職場で自分の理想の看護を実現することが難しい人は、職場を変えることも視野に入れてみるとよいでしょう。
やりがいを見いだしてモチベーション維持につなげる
看護師という仕事に対してやりがいを感じている方は多いものの、現在の職場ではやりがいを感じられていない人も少なくありません。モチベーションを維持するためには、自分から行動してやりがいを見いだすことも大切です。まずはモチベーションが下がる原因を理解して、自分のやりがいとは何か見つめ直してみましょう。
-
この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。