ナースコールは誰が取るもの? …
看護師に必要なコミュニケーションスキル7選!基本的なポイントを解説
公開日:2022/5/9
最終更新日:2024/2/8
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さまざまな人と関わることが多い看護師にとってコミュニケーション技術を磨くことは大切です。今回はコミュニケーションに苦手意識をもつ看護師に、例文を交えたコミュニケーションスキルと基本的なポイントを紹介します。
目次
看護の幅や可能性を広げるコミュニケーションとは
コミュニケーションとは、言葉を通じて相手との意思疎通を図ることです。看護師は、患者さんやご家族のほか医療者などの多職種ともかかわることが多いため、コミュニケーションが必要不可欠です。臨機応変なコミュニケーションを行うことは、患者さんに寄り添った看護を提供できるだけではなく、医療者間の連携をスムーズに進める効果もあります。
看護師がコミュニケーションを磨くメリット
看護師がコミュニケーションを磨くメリットは、主に2つあります。
患者さんと信頼関係を築ける
看護師が患者さんとの信頼関係を構築すると、適切な医療提供や病気の早期発見につながる可能性が高まります。患者さんから信頼されることで、些細な悩みであっても打ち明けてもらえるようになるからです。また患者さんの不安が和らぐことで、早期回復が見込める場合もあるでしょう。
周囲と連携がとりやすくなる
看護師の仕事は、医者や同僚の看護師との連携が重要になります。適切なコミュニケーションを磨くことで、情報共有や指示の理解が速くなり、1人でも多くの患者さんを助けることに役立つでしょう。
看護師のコミュニケーションのポイントを紹介
看護師がコミュニケーションをとるうえで大切なことは様々あります。基本となるポイントと言葉以外で意識したいポイントにわけてまとめました。患者さんと関わるときはもちろん、同僚や異業種の人とのやり取りでも役立つので、参考にしてみてください。
基本的なコミュニケーションのポイント
まずは基本的なコミュニケーションの3つのポイントを紹介します。
ポイント1「聞く(傾聴)」
まずは相手の話とるうえに耳を傾けることで、その次に自分の話や意見を聞いてもらいやすくなります。聞くときのコツは下記の3つです。
- 相槌やアイコンタクトをとる相手の話を聞くときは、相槌やアイコンタクトで「自分は聞いている」ことを相手に伝えましょう。聞いてくれていることがわかると、相手も話しやすくなります。
- 話を最後まで聞く相手の話は最後までちゃんと聞いてあげましょう。途中でさえぎられたりすると相手は自分を否定されたような気持ちになってしまいます。
- 沈黙を恐れすぎない会話が途切れてしまったからといって、慌てて話す必要はありません。相手が思いや考えを整理する時間をつくってあげましょう。
ポイント2「伝える(伝達)」
コミュニケーションは相互理解のために必要ですが、そのためには「自分の話を正しく伝える」ことも大切になります。伝えることが苦手、話がわかりにくいと言われてしまう人は、下記の3つを意識してみましょう。
- 話のゴールを決めるまずは話のゴールを決めたうえで話しましょう。何を理解してほしいのかを明確にすることで、相手に正しく伝えることができます。
- 相手がわかる言葉を使う相手が知っている言葉を使えばわかりやすく伝えることができます。患者さんに話すときは専門用語を避けて話すようにしましょう。
- 曖昧な表現は避ける「〜だと思います」「すぐに」といった曖昧な表現は避けましょう。「すぐに」は具体的に「5分後」などと伝えるだけで、相手も見通しを立てやすくなります。
ポイント3「質問する」
具体的に話を進めたり、掘り下げたりするためには「質問する」ことも大切です。以下3点に心がけて「質問する」スキルも磨いていきましょう。
- 5W1Hを意識する「いつ(When)」「どこで(Where)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どうやって(How)」の5つが明確になると、内容を理解しやすくなります。 意識して質問してみましょう。
- 二者択一にしない率直な思いを聞くには、回答に選択の余地を持たせることが重要です。こちらから回答の選択肢を提示する場合は、2つ以上用意して回答の幅を狭めすぎないようにしましょう。
- 正解を聞かない人とのコミュニケーションにおいて、正解はありません。ありのままの思いや迷いを聞き出せるように意識しましょう。
言葉以外で意識したいコミュニケーションのポイント
言葉以外で行うコミュニケーションのことを「ノンバーバル(非言語的)コミュニケーション」といいます。ノンバーバルコミュニケーションで意識したいポイントは、以下の「メラビアンの法則」で示されています。
メラビアンの法則によると、初めてコミュニケーションをとるときに発した言葉自体の意味はたったの7%しか伝わりません。一方目から入る情報と55%、耳から入る情報は38%で伝わるとされています。
この点よりコミュニケーションをとるうえで、見た目・表情・声色・口調などにこだわることも大切だといえます。ノンバーバルコミュニケーションのポイントを9つにまとめたので、ぜひ意識してみてください。
- 身だしなみを整える
- 相手が話しやすい環境・空間をつくる
- 表情を明るくしたり、真剣にしたりする
- 身振り手振りを付ける
- 相手のペースに合わせて話す
- 相手の目をみて話す
- 相槌をうつ
- 大きな声ではっきりとしゃべる
- 感情をしぐさや表情で表す
【初級編】誰でもできる!2つのコミュニケーションスキル
今すぐにでも実践できる、簡単なコミュニケーションスキルを2つご紹介します。コミュニケーションが苦手だと感じている人は、まずここから始めてみましょう。
1:リフレインで患者さんとラポール形成
「リフレイン」とは楽曲の最後のフレーズを繰り返すことを意味し、転じて言葉をそのままオウム返しに繰り返す手法のことをいいます。一方「ラポール」とはフランス語で「架け橋」を意味しており、患者さんとの間に橋をかける=信頼関係を築くという意味を持っています。
看護師のコミュニケーションで重要なのが患者さんとの「ラポール形成」であり、ラポールを形成するうえでもっとも簡単で誰にでもできる方法が「リフレイン」です。会話の例文を見てみましょう。
会話の例文
患者さん「手術は終わってほっとしたけど、ずっと痛みが続いています」
看護師「手術は終わってほっとしたけど、痛みが続いているのですね」
患者さん「夜も痛くて、気になって眠れません」
看護師「夜も痛みが続いて、気になって眠れないのですね」
患者さん「はい。だから夜に眠れる薬か痛み止めを処方してほしいです」
看護師「わかりました、先生に相談してみますね」
同じ言葉を繰り返すだけで、相手は自分の話を聞いてもらえている、自分の痛みを理解してくれている、と感じるので、自然と解決策を引き出すことができます。
2:リアクションをとって話を聞く
相手の話に対して「うん、うん」と相槌とって聞くようにしましょう。簡単に反応するだけで、相手は自然と話しやすくなります。普段聞き出せないような思いを引き出せる場合があるので、ぜひ試してみてください。
【上級編】看護現場で使える!5つのコミュニケーションスキル
看護現場で実際に使える、上級編のコミュニケーションスキルを5つご紹介します。場面や相手に応じて使い分けてみてください。
1:感情に共感する「NURSE」
「NURSE」は日本発祥のコミュニケーションスキルで、とくに「感情に共感するスキル」に焦点をあてています。日本看護協会の緩和ケアテキストで紹介されるなど、がん看護領域全体で注目されるようになりました。
コミュニケーションに欠かせない以下の5つの言葉の頭文字をとって「NURSE」と呼んでいます。NURSEを活用すれば基本的なコミュニケーションスキルから一歩踏み込み、患者さんをより深く知ることができるでしょう。具体的な例とあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
N:Naming=命名
患者の感情に何が起きているのかに注目するため、具体的な形容詞を用いて感情を命名する。患者の言うことをよく聴き、感情を理解したいというメッセージを送る。
例)「(痛みがつらくて)イライラされているようですね」
「とても気がかりなことがあるようですね」
U:Understanding=理解
患者の感情的な反応は理解できることを示す。 患者の困難な状況や感情を敏感に理解し、受け入れ、関係を構築する。
例)「そのような痛みを経験されて、さぞ辛いでしょう」
「そう感じるのも当然かもしれないですね」
R:Respecting=承認
感情だけでなく姿勢・態度・人格・対処方法を含め賞賛する。NURSEの中で、最も難しく意識しないとできないスキル。
例)「そのような辛い頭痛があるにも関わらず、今まで頑張って治療を続けてきて、さらにその他の身の回りのこともきちんとしてきたなんて、すごいですね」
「よく頑張ってらっしゃいますね」
S:Supporting=支持
私はあなたを援助したいということを患者に明確に伝える。患者とのパートナーシップを表明する。
例)「そのような辛い頭痛を抱えている中治療を頑張っているのですから、私もできることは何でもやりますよ」
「快復に向けて一緒に頑張りましょう」
E:Exploring=探索
患者が話すいくつかの感情に焦点を当てて質問し、関心を持って尋ねていく。共感の関係を深める手段ともなる。
例)「その頭痛のせいでどのように困っていらっしゃるか、よかったらもう少し教えてもらえますか?」
「つらいときには、いつでも連絡をください」
NURSEのスキルを身につけるためには、ロールプレイングが効果的です。新人研修に取り入れる医療機関も増えているので、機会があればぜひ受講してください。患者さんの気持ちに、より深く寄り添える看護師になれるでしょう。
2:伝えづらいことを緩和する「SPIKES」
「悪い知らせを話し合う」ときに役立つコミュニケーションスキルがSPIKESです。
医療現場では、悪い知らせを伝えなければならないこともあります。独特の重苦しい雰囲気にどう対応したらいいかわからない時には「同席したくないな」と思う看護師も少なくないでしょう。SPIKESを意識すれば、そのような場面でも円滑なコミュニケーションがとりやすくなります。
S:Setting=設定
説明をおこなう環境を整える。
例)あらかじめ日時を設定し、十分な時間をとる。個室でプライバシーが保たれる環境を提供する。一緒に聞いてくれる人がいる場合は、同席を依頼する。
P:Perception=認識
患者が病気についてどの程度理解しているかを知る。
例)「Aさんはご自身の病気を先生からどのように聞いていますか?」
I:Invitation=患者からの求め
患者がどの程度知りたいのかを知る。
例)「Aさんはご自身の病気について、どこまで知りたいですか?」
「悪い知らせも、 良い知らせもお話しして良いでしょうか」
K:Knowledge=知識
情報を共有(開示)する。
例)「今回お話しするのは、あまり良いお話ではありません。 Aさんの状態はあまり良くなく、予後は2週間程度です。お誕生日を迎えるのは難しいかもしれません」
E:Emotion=患者の感情
患者の感情に共感する。
例)「辛い話をして申し訳ありません」
「思っていたようなお話ではなかったですよね」
S:Strategy/Summary=戦略と要約
今後の計画を立て、簡潔にこれまでの説明を要約し、次回の面談の約束をする。
例)「今回のお話で分からなかったことはありませんか?」
「また来週お話をしましょう。何かあればいつでも声をかけてください」
「Aさんのお話を聞かせてください」
3:ポジティブフィードバックが可能な「PREPARED」
「PREPARED」は傾聴・共感・保証・ポジティブフィードバックなどのスキルを使い、患者さんとの関係性を構築していくスキルです。PREPAREDを活用すれば、シビアな場面でも患者さん・ご家族とコミュニケーションしやすくなります。命を脅かす病気や、限られた予後の患者さんやご家族とのコミュニケーションで役立つでしょう。
P:Prepare for the discussion, where possible=話し合いの準備をする
SPIKESと同様に、説明をおこなう環境を整える。
例)あらかじめ日時を設定し、十分な時間をとる。個室でプライバシーが保たれる環境を提供する。一緒に聞いてくれる人がいる場合は、同席を依頼する。
R:Relate to the person=関係性の構築
自己紹介をし、自分が誰でどのような目的で同席しているのかを説明する。
例)「私はAさんの担当看護師のBです。今日は医師とのお話に同席させていただきます」
E:Elicit patient & caregiver preferences=患者・介助者の意向を引き出す
患者・介助者がどのように考えるか、思いや訴えを聞く。
例)「お話を聞いて、どのように感じましたか?」
P:Provide information=情報提供
嘘やごまかしなく可能な範囲で情報を提供する。
例)「質問があれば、なんでも聞いてください」
A:Acknowledge emotions & concerns=感情や心配事を認識する
感情に焦点をあて、心配事や気がかりなこと、不安なことを共有する。
例)「Aさんは○○に対して、そうお考えなのですね。とても不安ですよね」
R:Realistic hope=現実的な希望を培う
叶えたいことや、逢いたい人がいるかなど具体的に希望を聞いていく。
例)「AさんはMさんに逢いたいのですね」「Mさんと桜を見ることを目標にしたいのですね」
E:Encourage questions=質問を促す
患者・家族からの自発的な発言を促す。
例)「ほかに聞いておきたいことはありますか?」
D:Document=記録する
適切な記録ツールを使用し記録する。
例)インフォームドコンセント記録など、所定の様式に記録する。話し合いの日時、参加者なども記録する。
4:患者さんのご家族とのコミュニケーションには「VALUE」
VALUEは「家族との話し合い」で活かせるコミュニケーションスキルです。
医療現場では患者さん本人ではなく、ご家族につらい話をしなければならないこともあります。ご家族の思いを認めることは関係性の構築にも重要です。VALUEを活用して傾聴し、敬意を払いながら、揺れ動くご家族の思いを引き出し寄り添いましょう。
VALUEの順番に聞くのではなく、会話の中でうまく組み合わせるのがポイントです。
V:Value=価値
家族の⾔っていることの価値を認める。
例)「患者さん、ご家族皆さんの思いがよくわかりました。とても大切なことを教えてくださり、ありがとうございます」
A:Acknowledge=認める
家族の感情を認め、その感情に医療者が気づいていることを伝える。
例)「このお話は、思っていたような話ではなかったようですね」
L:Listen=聞く
話や思いを聞く。
例)「Aさん(患者)は、いまの状況をどう思うでしょうか?」
U:Understand=理解
他⼈と違う一個⼈として患者を理解するための質問をする。
例)「病気になる前に、Aさん(患者)はどんなことが好きでしたか? 楽しみにしていることはありましたか?」
E:Elicit=引き出す
家族からの質問を引き出す。
例)「お話を聞いて不安に思っていることはありますか?」
5:患者さんの急変時に役立つ「I-SBARC」
I-SBARCは医療現場での報告や電話での報告時にも役立ち、インシデントの予防にも繫がるスキルです。
臨床では聞くだけではなく伝えるスキルも重要です。とくに報告に関しては「うまく報告できない」「報告しても突っ込まれてしまう」と、日々悩んでいる人もいるでしょう。報告がうまくいかない原因の1つに、要件が手短かつ明瞭に伝わっていないことがあります。そんな看護師に身に着けてほしいのが、伝えるためのスキル「I-SBARC」です。
I:Identify=報告者と患者の同定
報告者の所属・指名、患者の氏名を伝える。
例)「私はB病棟の看護師Cです。●号室のAさんの報告をします」
S:Situation=患者の状況・状態
患者の状態を伝える。
例)「Aさんの呼吸苦があり酸素飽和度が80%代に低下し酸素投与を開始しています」
B:Background=臨床経過
患者の入院理由・経過・バイタルサイン・フィジカルアセスメントを手短に報告する。
例)「Aさんは肺がんのステージⅣであり緩和ケア目的で入院されています。日中の酸素飽和度は問題ありませんでしたが、30分前に呼吸苦を自覚され酸素飽和度の低下をみとめました。経鼻カニューレで酸素投与を開始していますが、呼吸苦の改善が認められません」
A:Assessment=状況評価
自分のアセスメントを報告する。
例)「病勢の進行による、急激な呼吸状態の悪化をみとめています」
R:Recommendation=提言または具体的な要望・要請
どのような対応を求めているか伝える。
例)「状態が改善しないため、診察をお願いします」
C:Confirm=指示受け内容の口頭確認
医師の指示を口頭で確認する。
例)「わかりました。経鼻カニューレから、リザーバーマスクに変更します。採血の準備をします。病室で診察を待っています」
上手に「伝える」「聞く」ができる看護師を目指そう
看護師として経験を重ねても、コミュニケーションに関する悩みは尽きません。相手や状況によって求められる対応が異なるため、対応を間違えると信頼を失うかもしれないのが、コミュニケーションの怖いところです。看護師のコミュニケーションは、傾聴と相手への配慮が重要です。状況に合わせたコミュニケーションスキルを展開していきましょう。
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この記事を書いた人小田あかり
- 大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。