看護師の職業病対策。腰痛・足のむくみ・不眠の対処法を紹介

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看護師は業務の性質上、腰痛や足のむくみなど抱えやすい不調がさまざまあります。これらを放っておくと、さらに心身に悪影響を及ぼす場合も考えられます。今回は看護師あるあるな職業病をランキング形式で紹介し、その対処法について解説します。

看護師特有の職業病を改善するために

60歳の定年を迎えても働く人が多いなか、看護師も働く年齢に制限のある職業ではありません。生涯、看護師として働くことはできますが、業務の性質上、一般労働者に比べて不調を抱える割合が高いのが特徴です。医療従事者として患者さんの健康を守るために働いているのにもかかわらず、自身は不調を抱えているというこの矛盾。改めて看護師の健康について考えていかなければならないでしょう。生涯、健康で働くために、看護師一人ひとりの健康づくりについて、組織レベルでの取り組みと個人でできることを理解しましょう。

看護師が抱えがちな職業病をアンケート

ナース専科のアンケートで心身の不調に関してアンケートを取得しました。第一位の疲労・倦怠感は304名中7割が感じているようです。また2位の肩こりも同様で半数以上が不調としています。

Q:普段の業務で感じる心身の不調について、該当するものを選んでください。

看護師が抱えがちな職業病とは?

看護師が抱えがちな職業病は長時間労働や作業負担に伴う身体的なもの、精神的負荷に伴う心理的なものがあります。

腰痛・肩こり・足のむくみ

看護師は立ち仕事、書類や記録などで座り仕事のどちらも多く、移動介助などで患者さんを抱えたり、移動させたりするような体力仕事、食事や清潔面のケア、処置介助など多岐にわたります。長時間同じ姿勢で清潔エリアを保ちながら行わないといけないことも少なくありません。20代で腰痛持ち、ぎっくり腰で休む、コルセットを着用、むくみでは患者さん用の弾性ストッキングをはいて予防しているという話も珍しい話ではないでしょう。

慢性的な睡眠不足

交代制勤務で夜勤前後の仮眠が必要であったり、疲れているのに眠れなかったり、緊張状態が続いて眠れない、途中で起きてしまうということもあります。普段から睡眠薬の知識もあり、服用するハードルも低いためか、不眠でうまく薬やお酒に頼ってしまっている看護師もいるようです。

精神障害

看護師はメンタルヘルスにおいてハイリスクグループといわれています。看護師特有の仕事内容による緊張感や他職種、チーム医療での連携、労働環境に関すること、患者さんや家族との関係などさまざまな要因が考えられます。こうした緊張状態が続くことなどにより、腹痛や下痢などの消化器症状に加え、気持ちの落ち込み、うつ症状なども現れます。症状がひどくなると活力が湧かず、出勤できなくなり、そのまま休職、退職というケースもあります。

看護師の職業病対策

看護師が抱えやすい職業病の対処法について解説します。ぜひ実践してみてください。

腰痛や肩こりなど作業や動作に伴うもの

腰痛の自覚症状がある看護師が多くいながらも、6割の病院が腰痛予防対策に取り組んでいないという調査結果もあります。厚生労働省では、「職場における腰痛予防対策指針」では原則として、ノーリフトという人力による人の抱え上げは行わせないこととして書かれていますが、実際に福祉用具などの活用をしていると回答した病院は5割程度でした。また、腰痛予防対策においても、ボディメカニクスや休息など個人任せの内容が多くなっています。ボディメカニクスや個人の予防だけでは腰痛は予防できません。

対策には、作業環境の点検と整備、補助用具(リフトやスライディングシート)の活用、腰痛予防の体操・ストレッチ、負担がかからないような移動介助の方法の勉強会(理学療法士による勉強会、伝達講習など)などがあります。

睡眠不足や足のむくみなど、交代制勤務、長時間労働に伴うもの

勤務間のインターバルの調整や長日勤などを取り入れて夜勤の勤務時間の短縮など取りかかっているところもありますが、まだまだ課題は多く残ります。
対策には労働時間の管理、休息の確保、仮眠室の整備、夜勤前後の過ごし方見直し、夜勤中の水分補給や消化のいい食事などがあります。

心理・精神的なストレスなど

看護師の業務の性質上、ストレスをゼロにすることは難しいですが、少しでも減らすこと、すぐに対処できることが大切です。対策には、暴力・クレーム発生後の対応、フォローの見直し、カウンセラーや産業保健師などの設置、相談しやすい体制作り、実態調査、ストレスチェックなどの導入があります。ストレスの対処法を見直し、ひとりで抱え込まずに周りに助けを求めることが大切です。

また、ストレスを感じはじめたら休息や睡眠、適度な運動や趣味などの活動、リラクゼーションなどで気持ちを落ち着かせることも大切です。短い時間であっても、椅子に座って目を瞑る、好きな飲み物やお菓子をつまむなどを意識していきます。適度な運動では気分転換となるような散歩、景色を眺める、軽く身体を動かすこともおすすめです。リラクゼーションではストレッチや好きな音楽、アロマなどを活用して心を落ち着けて、気持ちを切り替えることです。こうしたことをストレスが溜まってしんどくなる前に、定期的に取り入れてストレスから意識をそらしていけるように心がけることも大切です。ストレスの要因がはっきりとしている場合には、周りの仲の良い同僚や相談できる上司、または専門の相談窓口などで相談、アドバイスをもらって対策することも必要です。

男女別にみる看護師の健康管理

日ごろから健康管理に気を遣うことも大切です。男女別に健康管理のポイントを解説します。

女性看護師のライフステージごとの健康管理

女性はライフステージにおける心身の変化もあります。年代ごとに注意点を見ていきましょう。

20代

社会人となり、仕事に就くという大きな生活の変化を迎える時期です。はじめての一人暮らしや通勤、これまで関わることのなかった年齢の人、上司や同僚との人間関係によるストレスなども考えられます。新たに仕事を覚えたり、忙しさで緊張や不安があったりと、食生活が乱れやすい傾向もあります。

30代

妊娠・出産・育児に対する母性健康管理も大切な時期です。母性健康管理に関係する法律もありますが、人手不足などによって職場でもうまく活用できていないケースもあります。制度の理解と周囲の人とのコミュニケーションをとり、安心して制度を活用できるようにする必要があります。

40代

置かれている状況はさまざまです。管理職として上に立つ人や小さな子どもを抱えている人、親の介護をしながら働いている人など、立場や職位、家庭環境によって自分の体調管理が後回しになってしまうかもしれません。更年期症状やさまざまな症状なども出てきて、身体や体力の不安を抱えはじめる時期です。

50代

更年期やがんなどの罹患率があがり、目が見えにくくなったり、体力が落ちたり、これまでできていたことができなくなってくることも増えます。無理せず自分のペースに合わせて仕事、生活できるようにしていく必要があります。

60代

時短勤務や非常勤、日勤のみなどでも働く女性が増えています。管理職としてのストレスなども引き続きあり、また職場内の相談相手を見つけるのが難しいなどの悩みもあります。仕事や生活を楽しみながら、年齢に応じた対策がとれるようにすることが大切です。

男性看護師の健康管理

看護師のなかでも男性看護師の割合は増えてきていますが、まだ少数にとどまっています。その割合は1割以下。男性も同様に腰痛や睡眠不足、精神障害などのリスクもあります。特に男性は、重症度介護度の高い患者さんが多い病棟での勤務となったり、力仕事を任されたりする機会も多いかもしれません。男性看護師のネットワーク、交流などで身近に相談できる人を作ることも大切です。日本男性看護師会や全国男性看護師会などの団体もあるので、うまく活用していきましょう。

職業病を当たり前と思わず、看護をする立場として自分のケアも大切に

職業柄、身体が資本である看護師ではありますが、患者さんや家族へのケアと同じように、ケアする立場である看護師自身も健康でなければいいケアはできません。看護師として自分自身の健康も日頃から意識して、身体への負担、ストレスを減らし、はやめに対処できるようにしていきましょう。

参考

1)平成22~27年度 「看護職のワーク・ライフ・バランス(WLB) インデックス調査」データ分析 報告書 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/wlb/wlbindex/doc/bunsekihokoku.pdf
2)看護職の健康と安全に配慮した労働安全衛生ガイドライン 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/guideline/rodoanzeneisei.pdf
3)2014 年 「看護職の夜勤・交代制勤務ガイドライン」の普及等に関する実態調査
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/yakinkotai/chosa/pdf/2015gaiyo.pdf
4)職場における腰痛予防対策指針 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034pjn_1.pdf
5)腰痛予防対策について 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/yotu/index.html
6)看護職の働き方改革の推進 メンタルヘルスケア 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/mental/index.html
7)業務上の危険(ハザード)および対策のポイント 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/pdf/hazard.pdf

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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