看護師のストレスの原因は?対処・予防と解消法からセルフチェックまで

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プレッシャーや労働環境などストレスが多い傾向にある看護師という職業。その対処法として診断ツールを用いたメンタルチェックの方法から、予防や解消などのセルフケアの方法を解説します。メンタルヘルスを自身で守る術を身に着けましょう。

看護師の業務ストレス問題

看護師は職業性ストレスの職種差を検討した研究で、量的労働負荷(業務量)や労働負荷の変動(業務量の変動)が大きいといわれています。また他の専門技術職や事務職に比べて、業務のコントロール感が低いにもかかわらず業務量が多いため、ストレスが高まり疾患発生の危険性が高くなるという報告もあります。

しかし、看護師という職業はストレスのハイリスクグループにありながら、現場ではその問題に対して改善のための施策が取り組まれていないのが現状です。

そのため、ストレスを自覚しセルフケアを行うなど、自身でメンタルヘルスを管理する必要があります。ストレス状態にあることに気づくためのサインからストレスの原因に対処する方法について紹介します。

看護師の業務ストレス実態調査

看護師を対象にナース専科が行ったストレスに関するアンケートでは、以下のような結果がわかりました。

看護師のストレス調査

ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:304)

半数以上の看護師が職場での仕事にストレスを感じており、ストレスの要因についてはある程度は把握しているという回答が多くみられました。

実際に看護師にとってストレスを感じやすい状況にはどのようなものがあるのでしょうか。アンケート項目の上位10位を以下にまとめました。

ストレスの原因は人間関係が上位を占める

看護師が感じるストレスの原因にはさまざまなものが考えられます。前述のアンケートのデータでもストレスの原因ランキングは以下のような結果となりました。1位は「仕事の責任の大きさ」ですが、2~4位は人間関係にまつわるものが上位を占めています。

看護師がストレスを感じる原因ランキング

Q:日々の業務で感じるストレスの理由を選んでください(複数回答)

1位/仕事の責任の大きさ(16.22%)

2位/上司との人間関係(13.85%)

3位/同僚との人間関係(12.16%)

4位/患者さんとのコミュニケーション(7.43%)

5位/経済面での不安(5.74%)

5位/先輩との人間関係(5.74%)

6位/有給休暇や休日がとれない(5.41%)

7位/仕事と家庭の両立(4.73%)

7位/職場の雰囲気(4.73%)

7位/その他(4.73%)

ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:296)

ランキングの結果は仕事の責任の大きさが1位(16.22%)という結果になりましたが、2位と3位の上司・同僚との人間関係と、4位の患者さんとのコミュニケーションに見られるように、職場での人間関係やコミュニケーションにストレスを感じている人が多いことがわかります。

メンタルヘルスを脅かすストレスの具体例

ここからは病院で働く看護師特有のストレスの原因を具体的に中心に解説していきます。

原因1:人命にかかわる仕事内容によるストレス

人命に関する仕事というと、看護師の仕事の多くがあてはまるでしょう。特に急性期状態にある患者さんへの治療やケア、薬剤を使用する場面や処置をするような場面では緊張状態になりやすい傾向にあります。また、侵襲の高い処置場面だけではなく、食事や排泄などの生活介助であっても、事故の危険と隣り合わせです。さらに、一般病棟では日勤の受け持ち患者が7~8人、夜勤では20人ちかく受け持つこともあります。こうした緊張状態が続くことでストレスを感じることが多いようです。

原因2:チーム医療に関するストレス

看護師は他職種と連携する場面も多い職種です。医師の指示のもとに動くため、医師をはじめとして理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ職種、薬剤師、臨床工学技士、栄養士などともやり取りをする場面もあります。患者を中心にして、他職種との調整役として動くことが多い看護師は、何か問題が起こるとその目が看護師に向きやすく、仕事を任されてしまったり、責任を押し付けられてしまったりすることも多いかもしれません。

原因3:労働環境に関するストレス

看護師は手術や検査、投薬など、時間に追われることが多い仕事です。時間が決められたものもあれば、前の人の順番、他職種や患者さんの都合で呼ばれるということもしばしばです。一日の行動スケジュールを大まかに組んでいても、その通りにいくことはほとんどなく、臨機応変にスケジュールを変更しながら仕事をしています。

また、受け持ち人数や患者さんへの治療やケア、家族への対応、他職種との連携、記録などの書類仕事など仕事量も多く、時間外勤務が当たり前になっているところも少なくないでしょう。それに加え、夜勤を含めた交代制勤務で夜勤が続いたり、夜勤明けで日勤があったりと生活が不規則になることもストレッサーとなります。

原因4:患者・家族との関係によるストレスと

患者さんにとって、入院中はさまざまな制限があります。治療で患者さん自身もストレスがかかっている状況なので、ときに治療拒否や指導内容を守ってもらえない、無理な要求をされる、威圧的な態度を取られることもあります。それは患者家族からも同じです。しかし、医療従事者と患者・家族という関係、病院の性質上、簡単に拒否をして追い出すわけにはいきません。こうした状況のなかで対応をしなければならないこともあり、ストレスとして重くのしかかってくるでしょう。

原因5:感情労働という仕事の性質からくるストレス

看護師という仕事の性質上、「感情労働」の要素もストレッサーになります。感情労働とは、職務内容のなかで感情が重要な要素となっているものをいいます。例えば看護師の場合でいうと、患者さんが安心して治療やケアを受けられるように、優しさや平静さを醸し出すように、感情をコントロールして接するようにすることです。感情のままに動揺したり、怒りや憎しみを出したりすることは控えなければなりません。こうした状況から、自分を偽っているような後味の悪い感覚、罪悪感が積み重なっていくこともあります。

原因6:立場や環境によっても異なるストレス

立場や環境によってもまたストレスには違いがあるでしょう。働きはじめの1年目~3年目であれば、覚えることも多く、さらに侵襲の高い処置場面では緊張することも多いかもしれません。先輩から監視されているように感じる、注意や指導内容が厳しく、ストレスに感じるかもしれません。また、仕事を覚えて一人で動けるようになる中堅看護師では、先輩と後輩との板挟みになりしんどい思いをするかもしれません。ベテランになると移動介助や夜勤がきつくなる、後輩指導や病棟運営、病院経営に関する悩みなども出てくることでしょう。

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ストレスチェックでメンタルヘルスの現状を把握する

看護師が抱えるストレスは、業務内容・人間関係・労働環境など、仕事柄さまざまな原因があります。ストレスが溜まっていくことに気づかず、そのまま放っておくのは危険です。

心と身体に異変が起きたり、悪化して社会生活が難しくなったりすることもあるため、早いうちから自分のメンタルヘルスの現状を把握して、ストレスに対処しましょう。

自身でできるストレスチェックの方法

心や身体に少しでも異変を感じた人は、自分自身で一度ストレスチェックをしてみることもひとつの方法です。家にいながら簡単にチェックできる方法がいくつかあるので、紹介します。

ストレスチェックツールを活用したセルフチェック

労働安全衛生法の改正により、ストレスチェックが義務付けられている職場もあります。例えば、厚生労働省のストレスチェックでは以下のような質問項目をもとに進めていきます。

あなたの仕事についてうかがいます。最もあてはまるものに〇を付けてください。

(1→そうだ、2→まあそうだ、3→ややちがう、4→ちがう)

1. 非常にたくさんの仕事をしなければならない・・・・・・・・・・・1 2 3 4

2. 時間内に仕事が処理しきれない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2 3 4

・・・

最近1か月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはまるものに〇を付けてください。

1. 活気がわいてくる・・・・・・・・・・1 2 3 4

2.元気がいっぱいだ・・・・・・・・・・1 2 3 4

・・・

引用:ストレスチェック制度導入ガイド p.2

詳しくチェックしたい人は、こちらの厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(標準版:57項目)フィードバックプログラム」に基づいて作成されたセルフチェックを活用してみてください。

5分でできる職場のストレスセルフチェック

こころと身体に現れるストレスサインをチェックする

ストレスのチェックツールを活用する方法とともに、自分自身の心と身体に現れるサインに意識を向けることも大切です。ちょっとした変化でもストレスが溜まっている可能性があるので、現状の自分のメンタルヘルスの状態を確認しましょう。

こころのサイン

ストレスが大きくなったり長く続いたりすると、こころや身体の調子も悪くなってくることもあるでしょう。ストレスを感じた時のこころのサインには以下のようなものがあります。

  • 不安や抑うつなどの気分の落ち込み
  • これまで好きだったものに興味関心がなくなる
  • イライラして怒りっぽくなる
  • 集中力がなくなる
  • 急に涙もろくなる
身体のサイン

こころのストレス反応と同じように、ストレス反応が身体に現れることもあります。以下のような症状に当てはまるかどうかチェックしましょう。

  • 寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなどの不眠
  • 疲れやすい
  • 頭痛・肩こり・腰痛
  • 腹痛・便秘・下痢
  • 食欲低下
  • 暴飲暴食や喫煙量が増える

こころや身体のサインのほかに、人付き合いが億劫になり引きこもってしまう、欠勤や遅刻が続く、仕事上でのミス・ヒヤリハットが増えるなど、行動にも変化があります。症状がひどくなる前に少しの異変も見逃さないようにしましょう。

リフレッシュするには?ストレスの対処と解消法

自分のストレスに気づくことができたら、対処やリフレッシュのための解消法について知ることが大切です。具体的な事例を紹介するので実践してみましょう。

休養の時間を取る

ストレスの原因が業務量の多さなど、十分な休息ができていない人は、まずは身体を休めることから意識してみましょう。長い時間を取れない人は、数分でも一息つける時間を作る、目を瞑って横になって休む、またはアロマなど香りでリラックスする、または寝具を変えるなど、より効果的に身体を休めるなどの方法を取り入れてみてもいいでしょう。

リフレッシュの手段を身につける

リラックスできる、または癒しを感じる時間を過ごしてストレスを発散できるリフレッシュの手段を探してみましょう。趣味に没頭するなど、仕事を忘れてアクティブに過ごすリフレッシュの時間はストレスの解消につながります。また音楽・映画鑑賞など、自宅でゆったりと過ごす時間もリフレッシュの手段として有効です。外出した場合は景色を眺めながらの散歩や、カフェでくつろぎの時間を過ごすのもいいでしょう。

身近な人に相談する

抱えているストレスやその悩みは、自分一人で抱え込まずに家族や友人、職場の同僚に相談することも有効な手段です。専門家ではなくとも、ただ話を聞いてもらうだけで気持ちが落ち着くことがあります。さらに自分とは違った視点や解釈により、ストレス解消への糸口が見える場合もあるでしょう。

ストレス対処の専門機関を活用する

身近な人に相談するのが難しい人は、専門機関への相談も検討しましょう。なかには相談窓口やカウンセラーを配置している職場もあります。また、下記のような国や地域の公的機関でも無料の相談窓口を設けているのでぜひ利用してみてください。

環境を変える

ストレスの原因が職場の労働環境や人間関係にある場合、ストレス解消や発散などの対処法ではどうにもならないこともあるでしょう。その場合には、部署や担当の仕事を変えてもらうことや、自らの環境を変えることも選択肢の一つとして検討しましょう。

職場から離れることを検討する

場合によっては休職して職場を離れて一定期間しっかり休むことも検討しましょう。特に不眠や食欲不振、うつ状態などの心や身体の異常がすでにある場合は、専門機関を受診して職場から離れることも必要です。

転職を検討する

職場環境を変える手段として転職するという手段もあります。しかし、ストレスの原因が労働環境の場合は、環境が変わっても同じようなことの繰り返しになる可能性があります。例えば人間関係を理由に転職する場合は、どのような人間関係に悩んでいたのかを振り返ってみることも大切です。自身でも改善できることを考えて、後悔のない選択をするようにしましょう。

「つらい」のストレスサインを見逃さないように

メンタルヘルスは日々管理することが大切です。看護師の仕事を含め、働き続けるうえでストレスをゼロにすることは残念ながらできません。だからこそ早めに自分のメンタルがどのような状態であるか気づき、「つらい」と感じる前に予防することやストレスサインに早めに対処することが大切です。そのために、自分がどういう場面でストレスを感じやすいのか。また、ストレスを感じるとどういう不調が出やすいのかを把握して、ストレスサインを見逃さないようにしましょう。

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引用・参考

1)看護職の働き方改革の推進「メンタルヘルスケア」(日本看護協会)
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/mental/index.html
2)坪井康次:ストレスコーピング-自分で出来るストレスマネジメント、心身健康科学:6(2)、2010
3)5分でできる職場のストレスセルフチェック(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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