【看護師向け】給与明細の見方。家計管理のコツも紹介

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看護師がもらう給与明細には、お金に関するさまざまな情報が載っています。しかし正直なところどんな内容かよくわからないという方もいるでしょう。今回は給与明細の見方の解説と、生活費や支出割合をもとにした基本的なマネープランについて紹介します。

【看護師向け】給与明細とは?どこを見ればいい?

給与とは、労働の対価として、雇用主から支払われるすべての報酬のことを指します。給与明細には、支給額とその内訳が記載されています。どのようなことが記載されているか、向かって左側に記載されている「支給」「控除」「勤怠」の順にそれぞれよくある項目ごとに紹介していきます。

給与明細

支給項目

支給項目には、基本給や手当など支払われる給与の内訳が記載されています。1段目が「所定内給与」(就業規則によってあらかじめ定められている給与のうち、残業などの超過勤務以外のものをさす基本給と手当)、2段目が「所定外給与」(所定労働時間外の勤務を行ったことに対する給与)にあたります。

基本給

働くうえで基本となる給料のことです。その他手当を含まないベースとなる金額を指します。看護師の場合、准看護師、専門卒、大学卒によって基本給が数千円単位で違ってきます。また、中途採用などの場合、この1年目の基本給+経験年数などで上乗せされていきます。病院や施設によって給与規定があります。

所定内給与

所定内給与の手当には様々な種類があります。代表的な手当について解説します。

資格手当

看護師免許に対して支払われる手当。ほかにも認定・専門看護師などの資格が手当として上乗せされることもあります。

地域手当、寒冷地手当

都市部などは家賃や物価が高いため、その分数万円基本給にプラスされています。豪雪地帯などでは冬季暖房用の燃料費用としての手当が出ます(主に公立病院)。

特殊勤務手当、危険手当

特定の部署での勤務に適応されている手当です。重症心身病棟、精神科、感染症病棟、手術室、放射線科など。看護師の職務上、危険や危害がおよぶ可能性が高い場合に支給されます。最近だとコロナ病棟なども当てはまることも(施設によって支給しているところとそうでないところがあります)。

役職手当

主任や師長などになると管理職手当としてつきます。管理職になると、残業代が出ない、日勤業務が増え夜勤が減ることでトータルの月収や年収が減ってしまうという声もあります。

通勤手当

通勤に関する費用に対しての手当です。電車やバス通勤では1~3か月ごと、マイカーや自転車通勤の場合には距離に応じて、ガソリン代なども含めて手当が支払われます。

皆勤手当

精勤手当とも呼びます。欠勤なく勤務した場合に、月数千円~1万円程度で手当がつきます。

家族・扶養手当

結婚して家族を扶養している人に対して、生活費を補う目的で支給される手当です。

家賃補助(住居手当)

寮や借り上げアパートなどの場合、家賃の一部を職場が補助してくれるものです。

所定外給与

所定外給与の手当は主に時間外手当、夜勤手当などがあります。これらの支給額が多いことが看護師の給与明細の特徴です。

時間外手当

いわゆる残業代。規定の労働時間を超えて働いた場合に25%増しで給与を支払うものです。看護師の場合には夜間残業になるとさらに割り増しとなります。

休日手当

法律で定められた休日に働く場合、給与の35%増しで給与を支払うものです。病院は24時間稼働しているため、看護師の場合にはGWやお盆、年末年始などで休日手当が出るところもあります。

夜勤手当

二交代三交代、職場によって手当の額は大きく異なります。

  1. 三交代制:準夜勤平均手当4,154円、深夜筋平均手当5,122円
  2. 二交代制:平均手当11,286円

※ 手当額は深夜時間帯(22時~翌5時)の割増賃金を除いた定額部分のみ

※ 新型コロナウイルスに係る危険手当等を除く

引用:2020 年 病院看護実態調査 報告書(日本看護協会)

法定割増賃金とは?

時間外労働(残業)や、深夜労働、休日労働の場合には、通常賃金に一定割合を上乗せした割増賃金が支払われます。割増率は下記のように法律で定められています。

労働の種類 割り増し率
時間外労働(法定時間を超えて労働した場合/1か月45時間まで) 25%以上
時間外労働(法定時間を超えて労働した場合/1カ月45時間を超え60時間未満及び年360時間超える) 25%を上回る割増賃金率
時間外労働(法定時間を超えて労働した場合/60時間を超える※中小事業所は現在猶予中) 50%以上
深夜労働(22時~翌5時まで労働した場合) 25%以上
休日労働(法定休日に労働した場合) 35%以上
時間外労働+深夜労働(時間外労働に深夜労働をした場合) 50%以上
休日労働+深夜労働(休日労働に深夜労働をした場合) 60%以上

・計算方法

月給20万円、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の人が1時間の時間外労働を行った場合

1時間当たりの賃金=24万円÷(8時間×20日)=1,250円

残業代=1,250円×1.25×1時間=1,562円

・割増賃金=1時間あたりの賃金額×時間外・休日・深夜労働をした時間×割増賃金率

・1時間あたりの賃金=月給÷所定労働時間÷所定労働日数

※月給には、家族手当・通勤手当・住宅手当などは含まれません。

総支給額と差引支給額

  1. 総支給額:会社から支払われる金額の総額のことを指します。いわゆる「額面」の金額です。
  2. 控除総額: 引かれる税金の総額です。控除とは、ある金額から一定の金額を差し引くことを指す言葉です。
  3. 差引支給額: いわゆる手取り、口座に入ってくる額です。

転職で給与条件などを見る場合、月給や年収は総支給額が記載されていることが多いので注意です。

控除項目

控除項目には、給与から差し引かれる項目について記載されています。

社会保険

健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険といった代表的な保証制度を総称して「社会保険」と呼びます。

健康保険

怪我や病気などで受診、入院、出産や産休中の生活保障、死亡などを保障する医療保険です。受診の際に必要となる保険証はこの保険です。

厚生年金

公的年金のこと。老後の生活を保障するものです。怪我や病気で障害が残った場合の障害年金、被保険者が死亡した再に遺族に支給される遺族年金も厚生年金保険です。

雇用保険

失業者や育児休業を取得した労働者に対する生活を保障する目的で支給されるものです。

介護保険

40歳になると、介護保険料の支払い義務が発生します。介護保険は、介護が必要な方の負担を社会全体で支えるための制度です。介護が必要だと認定されると、介護サービスを受けるための費用に保険が適用されます。

労災保険

労災保険とは、業務上や通勤による労働者の負傷や疾病、障害、または死亡に対して労働者や遺族のために必要な補償する制度です。労災保険料はすべて事業所が負担します。

所得税

個人の所得に対してかかる税金。毎月の給与や賞与から源泉徴収されます。年末調整で過不足額の精算が行われ、戻ってくることがあります。

住民税

都道府県民税、市区町村住民税などと記載されることもあります。前年度の所得に応じて引かれます。つまり、社会人2年目から課税されるようになるので注意しましょう。

勤怠項目

勤怠項目には、給与支払い月の勤務状況が記載されています。主な勤怠項目は以下の通りです。

出勤日数

給与計算期間に出勤した日数。

欠勤日数

給与計算期間に欠勤した日数。欠勤日は給料の支払い対象にはならないので注意しましょう。

準夜勤務日数・深夜勤務日数

交代勤務の場合、それぞれの日数が記載されています。実際の勤務状況と相違がないか確認するとよいでしょう。

その他項目

職場によって、看護職賠償責任保険制度などの保険、財形貯蓄などの給与天引きができる場合もあります。職場でどのようなものがあるかよく確認しましょう。

看護師1年目の給与と収支モデルを紹介

ここからは、看護師1年目の給与を例に、収入と支出のモデルケースを紹介します。家計管理の参考にしてみてください。

モデルケース①:看護師1年目夜勤(2交代)4回、手取り20万、都内在住女性

職場が近い。食事は外食が多く、娯楽費も多め。アウトドア派

家賃(借り上げアパート、家賃半分補助あり):30,000円

食費:40,000円

光熱費10,000円

スマホ・ネット代:10,000円

日用品:10,000円

娯楽・交際費:30,000円

交通費:5,000円

計135,000円

モデルケース②:看護師1年目夜勤(2交代)4回、手取り20万、都内在住女性

職場まで30分、食事は自炊多め、インドア派

家賃(家賃補助20,000円あり):50,000円

食費:30,000円

光熱費8,000円

スマホ・ネット代:12,000円

日用品:15,000円

娯楽・交際費:20,000円

交通費:8,000円

計143,000円

家計管理のコツは収支の把握

家計管理のコツは、まず現状の収支を把握することです。これから一人暮らし・就職をする場合には、想像して必要な収支を書き出してみましょう。毎月必ず引かれるもの(家賃や光熱費、通信費などの固定費)、食費や娯楽・交際費などの変動するものは少し多めに見積もりをすると、ゆとりを持って生活することができます。

看護師の皆さんは奨学金を借りている人も多いでしょう。いつから、毎月どれだけ引かれるかを必ず確認して収支に盛り込みましょう。最近では、レシート写真を撮ればすぐに反映されるような家計簿アプリなどもあるので、どんどん活用してみてください。

また、細かくお金の計算をするのが苦手…という方には、黄金の家計比率(50/30/20ルール)というものもあります。NEEDS(家賃や光熱費、食費などの生活必需品)50%、WANTS(外食や娯楽などのご褒美支出)30%、SAVINGS(貯金)20%と振り分けるシンプルな方法です。実家暮らしの場合には、50%もかからないですが、余った分は将来を考えて貯金にまわすなどで対応できます。

支出を抑えたければ固定費を見直して

誰でも簡単にできる支出を抑えるコツとしては、毎月固定で引かれるものの見直しをすることです。例えば家賃は、寮や家賃補助があるかどうかで大きな違いがでます。また、スマホやネット代などの通信費などは昔契約したときのままにしがちですが、格安スマホや光熱費などと合わせることで割引になることもあるので、積極的に見直しましょう。食費も、なんとなくコンビニで買ってしまうとお酒やおつまみなど余分なものも買ってしまうので、自炊で抑えるか、病院の食堂などで済ませれば、毎日数百円が浮きます。

貯金は先取りがおすすめ

貯金を始めるなら、先取り貯金がおすすめです。給料日に一定額を先に貯金に回すことで、残りの給与で家計を管理する癖がつきます。また、職場の福利厚生で給与天引きの財形貯蓄などがあれば、それを活用するのもよいでしょう。

現金派の方は、500円玉貯金もアリ。財布の小銭で500円がでたら入れていくというルールにすると、気づくとどんどん貯まっていきます。ある程度貯まったものは、使ってしまう前に預金口座に入れるのが貯金のコツです。

給与明細の読み方を理解して家計管理に活かそう

給与明細は、勤怠・支給・控除の3つの項目からなり、給与計算のベースになる情報が記載されています。各項目を理解して、雇用契約や実際の勤務状況通りに給与が支払われているか確認しましょう。

また、家計管理も大切です。夜勤明けで爆食い、爆買いしてしまう、マッサージや美容などにお金をかけてしまう、ローン申請が通りやすいので高額なものも分割で買ってしまうなど、収入に見合わない支出に心当たりがある人も多いのではないでしょうか。

仕事中の飲み物やお菓子など、ついつい買ってしまいがちですが、こうした小さなお金でも積み重なれば年間数十万にものぼります。まずは毎月の収支を把握し、無駄な支出を減らして支出にメリハリをつけるように意識しましょう。

引用・参考

1)2020年 病院看護実態調査 報告書(日本看護協会)
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/research/96.pdf

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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