看護師の勤務体制でよく目にする…
看護師の休みの実態。勤務形態別の休みと希望通り休暇をとるための工夫
公開日:2022/3/4
最終更新日:2024/1/12
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看護師の職場のほとんどは休みが不定期です。土日の休みが少なく「予定が合わせづらい」「夜勤明けのシフトが多くてつらい」など、職場によってはブラックと感じることもあるでしょう。本記事では看護師の休み事情から、休みの希望を通す工夫まで解説します。
目次
看護師の休みの実態
看護師は、一般的な労働者と比べて著しく休みが少ないというわけではありません。
日本看護協会が行なった「2020年病院看護実態調査」から看護師の休みの実態を紹介しつつ、厚生労働省が実施した「令和4年就労条件総合調査」を参考に、一般的な労働者の休みの実態と比較します。
看護師の年間休日は120日~130日が4割を占める
さらに「2020年病院看護実態調査」によると 、看護師の年間休日は120~130日未満が40.2%で最も多く、次いで110~120日未満が29.4%、100~110日未満が16.4%という結果でした。
看護師と一般的な労働者の年間休日割合の比較表
看護師 | 一般的な労働者 | |
---|---|---|
100日未満 | 3.1% | 18.7% |
100~110日未満 | 16.4% | 29.6% |
110~119日未満 | 29.4% | 20.6% |
120~130日未満 | 40.2% | 30.2% |
130日以上 | 6.7% | 1.0% |
引用:令和4年就労条件総合調査
:2020年 病院看護実態調査 報告書|日本看護協会
「令和4年就労条件総合調査」によると、120~130日未満が30.2%、100~110日未満が29.6%、110~120日未満が20.6%でした。労働者1人平均年間休日総数は115.3日という結果です。
一般労働者と看護師の年間休日を比較すると平均年間休日総数は 大きく変わらず 年間を通してみると看護師の休みの日数が著しく少ないというわけではないようです。
看護師の有給取得率は50~60%未満が最多
「2020年病院看護実態調査」によると、2019年度の正規雇用看護職員の年次有給休暇の取得率は、50~60%未満が15.2%で最も多く、次いで60~70%未満が14.5%、40~50%未満が13.0%でした。平均すると60.5%です。
看護師の年次有給休暇取得率の割合
年次有給休暇取得率 | 割合 |
---|---|
10%未満 | 1.9% |
10~20%未満 | 3.6% |
20~30%未満 | 3.3% |
30~40%未満 | 7.6% |
40~50%未満 | 13.0% |
50~60%未満 | 15.2% |
60~70%未満 | 14.5% |
70~80%未満 | 12.9% |
80~90%未満 | 11.7% |
90%以上 | 10.4% |
無回答・不明 | 6.0% |
「令和4年就労条件総合調査」からは、年次有給休暇の取得率は58.3%となっており、1984年年以降過去最高となっていることがわかりました。
年次有給取得率を産業別にみると、「複合サービス事業」が72.4%と最も高く、「宿泊業,飲食サービス業」が44.3%と最も低い結果でした。看護師の有給取得率は一般の労働者と同程度と考えてよいでしょう。
看護師の夜勤明けは休みが普通?
夜勤のあるシフト勤務では、日勤と夜勤の切り替えをするためにも、とくに夜勤明けはしっかりと体を休めたいと考えている看護師が多いのではないでしょうか。夜勤明けの休み事情について解説します。
夜勤明けの日は休日ではない
2交代の場合、夜勤明けの日は休日としてカウントされません。休日として扱えるのは、午前0時から午後12時まで勤務しなかった日であり、次の勤務まで24時間以上の間隔がある場合でも休みとしては扱われません。
ただし、3交代の場合は例外があり、所定の要件を満たせば、次の勤務まで24時間空いていれば休日として扱ってもよい場合もあります。
2交代の場合
1回の勤務時間が長い2交代の場合、夜勤明けの日の翌日が休日になるシフトが多いようです。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
---|---|---|---|---|
日勤 | 夜勤 | 夜勤明け | 休み | 日勤 |
上記のようなシフトの場合、水曜日は休みとして扱われません。午前0時から午後12時まで休みになる木曜日が休日となります。
3交代の場合
3交代の場合は1回の勤務時間は2交代と比べて短いぶん、夜勤が連続することもあります。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 |
---|---|---|---|---|
日勤 | 深夜勤 | 準夜勤 | 準夜勤 | 休み |
上記のようなシフトの場合、水曜日の準夜勤と木曜日の準夜勤の間が24時間あいていれば休みして扱われるケースもあります。
夜勤明けに勤務が入ることもある
夜勤明けの次を休みにしなければならないという法律はありません。そのため、シフトによって夜勤が続いたとしても法律上は問題になりません。ただし
日本看護師協会では、看護師の健康を守るために勤務間隔を11時間以上開けることを推奨しています。
看護師の休みは不定期?実際のシフト例を紹介
看護師の休みは不定期になりがちです。とくに病棟で勤務する看護師は、シフト勤務に従事するのが一般的であり、休みの曜日も固定されていません。土日祝日が休みとは限らず、家族や友だち、恋人と休みがまったく合わないということもありえます。
病棟看護師のシフト例
上記は、2交代で病棟勤務をしている看護師のシフト例です。 休みになる曜日は決まっておらず、土日祝日に出勤となることもあります。夜勤後は有休休暇を取得して連休にする工夫も見られます。
看護師の休みは職場と働き方で決まる
看護師の休みの日数やとりやすさは、職場や働き方によって異なります。今の職場で休みが思うようにとれなくても、職場や働き方を見直すことで、希望通りに休めるようになる可能性があります。
休日出勤が少ない職場
休日出勤が多い職場には次のような特徴が見られます。
- 急な欠勤などで休日に出勤を要請される
- 研修会や勉強会などへの参加がほぼ強制
- 入院患者の急変により呼び出しがある
これらのない職場を選ぶことで休日出勤が大幅に減る可能性があります。
たとえば、クリニックや企業内の看護師であれば、患者さんが急変して休日に出勤するということがありません。
土日祝の休みや長期連休がある職場
お盆休みや年末年始の休暇が欲しい場合は、クリニックや企業内の看護師であれば実現しやすい可能性があります。お盆休みや年末年始にクリニックや企業自体が休みなら、出勤する必要はありません。一般企業で働く友だちと同じ時期に休みを取得することも可能です。
休みの希望が通りやすい働き方
職場だけでなく、働き方に着目することで休みが取りやすくなるでしょう。
パート・アルバイト、派遣職員といった働き方で、理想のワークライフバランスを実現できるかもしれません。
パート・アルバイト
週1日~週5日など、希望する日数に応じて働きやすい働き方です。「平日のみ働きたい」「火曜日は毎週休みにしたい」など、休みの曜日についても希望が通りやすいでしょう。
時給制になることから、正社員のような給料や待遇は難しくなりますが、休みの融通が利く働き方を求めている人には適しているといえます 。
派遣職員
平日のみの勤務や、曜日固定での勤務の求人もあります。派遣会社が間に入ることから、転職時に休みの希望を伝えやすい点も魅力でしょう。パートやアルバイトよりも出勤日数はやや増えることが多いものの、時給は高めに設定されているケースも多く見られます。
看護師が希望通りに休みを取得するための工夫
希望通りに休みがとれたら、理想的なワークライフバランスを実現しやすくなります
。職場のスタッフ同士で休みを希望する日が被ることもあり、希望をすべて通すのは難しいかもしれません。そのような状況のなかでも希望通りに休暇を取得するためには、知恵を絞ることが必要です。以下を参考に、休みたいときに休みがとれるような
工夫をしましょう。
早めに具体的な休みを申請する
どうしても休みたい日がある場合は、具体的な希望日を早めに申請しておくと、優先的に考慮してもらえる可能性が高まります。交代制で働く看護師は周りのスタッフとの調製が必要不可欠です。
周りに迷惑をかけないためにも、できる限り早い段階で休暇申請をするのがよいでしょう。
長期休暇を取得するときは引き継ぎを行なう
数日にわたる休みの希望を出す場合には、自分のプライマリーや委員会、後輩指導の件など、前もってスタッフに引き継ぎを行うことも大切です。
引き継ぎができていないと、患者さんやスタッフに迷惑がかかります。 自分がいなくても困らないように引き継ぎをすることで、気持ちよく休みを取らせてもらいやすくなります。
休みやすい働き方を検討する
休みの多い職場や、休みやすい雇用形態を検討するのもひとつの方法です。看護師でも、職場や雇用形態を変えることで休みやすくなることもあります。
また、働きながら数週間以上の休みはなかなかとれないため、転職の合間で海外旅行や短期留学に行く方もいます。長期で休みが欲しい場合は現在の職場の退職日と、次の転職の入職日も相談してみるとよいでしょう 。
休めないからブラック?見極めのポイント
勤務先の休みが少ない場合や休みがなかなか取れない場合、自分の職場はブラックだと感じることもあるでしょう。 以下では職場がブラックか見極めるポイントを紹介します。
法定休暇と法定外休暇
休暇には法定休暇と法定外休暇があります。法定休暇が取得できない場合はブラックの可能性があります。法定休暇と法定外休暇のどちらが取得できていないのかを明確にしましょう。
法定休暇とは
法定休暇とは、従業員に必ず取得させるよう義務づけられている休暇です。法定休暇を取らせてもらえない場合、雇用主が法律違反をしていることになり、ブラックの可能性が高まります。
法定外休暇とは
法定外休暇とは、雇用主が独自に設けている休暇です。従業員に取得させるよう義務づけられているものではありません。法定外休暇が取得できなかったとしても、法律違反とはいえず、ブラックとはいいきれません。
法定休暇の種類
法律によって定められている法定休暇の種類と内容を解説します。
①年次有給休暇
正社員、派遣社員、パートタイムやアルバイトなど、雇用形態に関係なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して与えられる休暇です。
年次有休休暇は、労働基準法第39条により次のように決められています。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。”
要件を満たしているのに「みんな取得していないから」「正社員ではないから」といった理由で有休休暇を取らせてもらえないのであれば、ブラックである可能性が高いといえるでしょう。
②産前・産後休業
産前の場合は、請求すれば産前休業が取得できます。一方、原則として、出産の翌日から8週間は就業して はいけないことになっています。
労働基準法第65条では、産前産後の休みについて次のように定めています。
使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
対象の期間に産前休業を請求したのに取らせてもらえなかったり、産後8週間を経過していないうちに復帰をするよう言われたりする場合は、ブラックの可能性があります。
③生理休暇
生理による症状が重い女性は休暇を申し出ることができ、労働基準法第68条では、次のように規定されています。
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
言い出しづらいことから、利用している人は少ないかもしれません。しかし、生理の症状で就労が非常に困難な状態で 生理休暇を請求したのに取れない 場合は、ブラックと考えられます。
④育児休業
1歳未満の子どもを養育するにあたり事業主に申し出をすることで育児休業を取得できます。雇用期間の定めがある方でも、養育する子どもが1歳6ヶ月に達する日までに労働契約が満了することが明確になっていなければ、育児休業の申し出が可能です。
さらに、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、病気や怪我をした際の看護、予防接種・健康診断の受診のために、1年に5日まで(子が2人以上の場合は10日まで)休暇が取得できます。
育児休業や子の看護休暇は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」によって定められています。2021年1月1日からは時間単位での取得が可能です。
⑤介護休業
介護休業は、2週間以上にわたり要介護状態の家族を介護するための休業です。雇用期間に定めがある方でも、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに労働契約の満了が明らかになっていなければ申し出が可能です。
育児休業と同様に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」によって定められており、2021年1月1日からは時間単位で取得可能です。
法定外休暇の例
法定外休暇は雇用主が独自に導入をしており、有給にするか無給にするか職場によって異なります。法定外休暇も導入されている職場は、働く人の休みを増やす方向で考えていることがうかがえます。
結婚休暇
結婚休暇は、新婚旅行や結婚による新生活の準備のための休暇です。結婚休暇が導入されている場合、期間は数日から1週間程度取得が一般的です。
忌引休暇
忌引き休暇は、比較的多くの企業などで導入されています。親族が亡くなったときに、通夜や葬儀へ出席するための休暇です。本人と亡くなった方の続柄によって、取得できる日数が異なるのが一般的です。
リフレッシュ休暇
リフレッシュ休暇は、心身の疲れを回復するために設けられている休暇です。メンタルヘルス対策やモチベーション向上の観点から導入されています。
アニバーサリー休暇
アニバーサリー休暇は、誕生日や記念日に取得できる休暇です。自身の誕生日や記念日だけでなく、家族の誕生日などにも取得可能な事例も少なくありません。
看護師の休みを理解して理想のワークライフバランスを
休みが少ない・取りづらい職場では、ブラックだと感じるかもしれません。希望通り休みがとれるように工夫をしたり、場合によっては職場や働き方を変えたりすることで、理想のワークライフバランスを実現したいですね。
【引用・参考】
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
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この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。