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救急看護師の役割と仕事内容。向いている人の特徴・必要な資格は?
公開日:2023/5/29
最終更新日:2024/2/15
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救急看護師のもっとも大切な役割は、迅速かつ的確な救急看護の実践です。場所や疾患を問わず、緊急度の高い患者さんに対し初期治療を行います。救急看護師になるには特別な資格は不要ですが、活躍している人には共通点があります。救急看護師の具体的な仕事内容や向いている人の特徴を解説します。
目次
救急看護師は「迅速かつ的確な救急看護の実践」が求められる
救急看護師という資格名はなく、救急処置が必要な人へ看護を提供する看護師のことです。
日本救急看護学会によると救急看護とは「さまざまな状況において突然に生じた傷害または急激な疾病の発症や急性増悪等によって、医療を必要とする人々に対する迅速かつ適切な看護実践を行う」と定義されています。
救急看護師の役割
前述の日本救急看護学会によれば、救急看護師の役割は「実践」「調整・管理」「教育・研究・政策」の3つに分類されます。それぞれの役割の内容は、以下のとおりです。
大項目 | 中項目 | 役割の代表例 |
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実践 | アセスメント・判断 |
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救急処置・介助 |
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生活行動援助 |
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精神的ケア |
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社会的支援 |
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調整・管理 | 環境調整 |
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医療チーム調整 |
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継続医療調整 |
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倫理調整 |
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看護管理 |
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教育・研究・政策 | 救急処置・予防措置の指導 |
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教育活動 |
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研究活動 |
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医療政策への参画 |
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救急看護師の勤務先は?
救急看護師の勤務先は、3つの救急医療施設がメインです。日本の救急医療施設は、患者さんの重症度によって一次、二次、三次救急に分かれています。以下に受け入れる患者さんの症状と対応する医療施設をまとめました。
一次救急比較的軽症で入院は不要休日夜間急患センター三次救急生命に関わる重症救命救急センター
症状 | 対応する主な医療施設 | |
---|---|---|
二次救急 | 手術や入院が必要 | 病院群輪番制病院 共同利用型病院 |
これらの医療施設以外にも、ドクターヘリで災害現場に駆け付け看護を提供する「フライトナース」や、大規模災害の発生時に派遣される「災害支援ナース」として働く救急看護師もいます。
救急看護師の仕事内容
救急看護師の仕事内容は、おおきくわけて以下の4つです。
トリアージ・初期対応
救急看護師は、患者さんが搬送されたときのトリアージや問診、検査補助などの初期対応を担当します。初期対応には、どのような状況でも患者さんの状態を正確に観察できる冷静さやアセスメント力が必要です。
救急・救命処置
救急看護師は、心肺停止の患者さんへの心肺蘇生や止血などの応急処置、採血や点滴のためのルート確保を実施します。幅広い看護技術を持ち、患者さんの状態にあわせ素早く適切な処置をおこなう対応力も重要です。
医師の補助
救急看護師は、緊急性をともなう救急患者さんへの診療・処置の補助を行います。そのため、患者さんの状態を正確かつ的確に医師へ報告し指示を仰げる判断力と、医師の指示の先を読んで準備することが求められます。
患者さんと家族のケア
救急医療の現場では、突然の怪我や病気で不安や戸惑いを抱える患者さんと家族のケアも救急看護師の仕事です。病棟にくらべ患者さんや家族と関わる時間は短いですが、状況の説明や精神的なフォローなど、丁寧な対応が求められます。
救急看護師に向いている人の特徴は?
救急看護師は、緊急かつ予測不可能な状況下で患者さんの看護にあたらなければなりません。そのため、次のような能力を持つ人は救急看護師に向いています。
向上心がある
向上心があり看護師として幅広くスキルアップをしたいという人は、救急看護師に向いています。
救急医療の現場にはさまざまな病気や怪我の患者さんが搬送されるため、救急看護師には全ての領域に関する幅広い知識が必要です。また、患者さんの状態にあわせた迅速な救急処置などの看護技術、心電図波形の読み取りやベッドサイドモニターなど医療機器を扱う知識を発揮する場面が多くあります。さらに、日々進化する医療業界では、常に新しい技術や知識を学ばなければなりません。
そのため、向上心を持ち自ら積極的に学べる人、継続的な学習が積み重ねられる人は、救急看護師に向いているでしょう。ただし、向上心が高い人でもひとつの分野の学びを深めたい人には、救急看護師は向いていないかもしれません。
チームワークを大切にできる
看護師だけでなく他職種とのチームワークも大切にできる人は、救急看護師に向いています。
緊急性の高い救急医療の現場では、一般病棟や一般外来などの医療現場よりもさらにチームワークが大切になるからです。たとえば、緊急を要する患者さんに適切な処置を正確かつスピーディーに提供するためには、医師や他の看護師とのチームワークがカギを握ります。また、救急車で運ばれてくる患者さんを受け入れるのに、救急隊とも連携を取らなければなりません。病院内では、病棟や手術室、検査室、放射線科などとの連携も必要でしょう。
そのため、周りの人とコミュニケーションを取り、チームワークが大切にできる人は救急看護師に向いているといえます。
責任感がある
看護師として責任感が強く、常に最善を尽くせる人は救急看護師に向いています。
患者さんの命を預かる看護師にとって責任感は大切ですが、ミスが許されず、一瞬の判断が患者さんの命に関わる救急看護には、より強い責任感が必要です。また、忙しく常に緊張感のある救急医療の現場では、自分の力不足を感じたり、医師や先輩から強い口調で指示されたりすることもあるかもしれません。救急看護師は、それでも気持ちが折れることなく看護し続けなければいけません。
そのため、責任感が強く、責任の重い救急医療の現場に覚悟を持って取り組める人が、救急看護師に向いているでしょう。
体力と強い精神力がある
体力と精神力に自信がある人は、救急看護師に向いています。
緊急性が高い救急看護の現場は常に時間との戦いで、タイミングによっては複数の患者さんの対応に追われることも。さらに、24時間対応が求められるため、昼夜問わず動ける体力が必要です。
また、救急医療は生死にかかわる場面も多い現場です。手を尽くした患者さんの死や、急変で亡くなった患者さんの家族のケアに直面することもあるでしょう。そのような状況下でも、搬送されてくる患者さんがいれば、気持ちを切り替えて仕事をしなければいけません。
そのため、救急看護師は体力面と精神面に自信がある人が、より活躍できる現場といえるでしょう。
冷静な判断ができる
どのような状況でも落ち着いて判断ができる人は、救急看護師に向いています。
いつ患者さんが搬送されるかわからない救急医療の現場では、一般病棟のように一日の仕事の見通しが立てにくい場合が多いでしょう。また、患者さんの命を救うために、一分一秒を争うシビアな場面もあります。救急看護師は、そのような状況下でもパニックにならず患者さんの状況を判断し、柔軟に対応しなければいけません。さらに、患者さんや家族に寄り添った看護が必要な一方で、過剰に感情移入すると自分がつらくなってしまいます。
そのため、気持ちの切り替えがうまく常に冷静な判断ができる人のほうが救急看護師に向いています。
救急看護師になるには?必要な資格はある?
救急看護師になるためには、看護師免許以外に特別必要な資格はありません。救急医療を提供している病院に入職後、救命救急センターや救急外来(ER)に配属されると救急看護師として経験を積むことができます。
現在ほかの診療科や医療施設に勤務していて救急看護師をめざしたい場合は、異動願いを出すか救急医療を提供している医療施設への転職を検討するとよいでしょう。ただし、転職しても希望通りに配属されるかはわかりません。どうしても救急看護師になりたい場合は、自主的に救急看護の研修や資格を取り、アピールしてみるのもひとつの手です。
新卒でも救急医療を提供する部署に配属される可能性はありますが、一刻も早く必要な知識と技術を身に付け、緊急度や重症度の高い患者さんを看護するという強い意志が重要です。
救急看護師として役立つ資格
ここでは、救急看護師として役立つ資格を紹介します。スキルアップしたい人やこれから救急看護師をめざしたい人は参考にしてください。
クリティカルケア認定看護師
認定看護師とは日本看護協会による資格制度で、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有すると認められた看護師が認定されます。
救急看護師に必要な「救急看護」と「集中ケア」の認定看護師制度は2026年をもって教育が終了となり、2つの分野が統合され「クリティカルケア認定看護師」となり、2021年から認定が開始されています。クリティカルケア認定看護師は、重篤化回避と合併症予防に向けた全身管理や、早期回復支援などの知識と技術を有するため、主に救急医療の現場で活躍しています。
急性・重症患者看護専門看護師
専門看護師も日本看護協会による資格で、専門看護分野において卓越した看護実践能力を有すると認定された看護師が認定されます。
急性・重症患者看護専門看護師は、緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供する人材として看護実践・研究・教育の役割を担うため、救急看護師のステップアップにつながる資格です。
災害看護に関する資格・研修
傷病者が多く発生する災害の現場でも、救急看護は必要とされます。災害看護に関する分野で役立つ資格や研修には、日本看護協会の災害支援ナース制度やDMAT(災害派遣医療チーム)に登録するための研修や災害看護専門看護師があります。
日本看護協会の災害支援ナース制度やDMAT(災害派遣医療チーム)は、それぞれの制度の要件を満たした看護師が所定の研修を修了することで登録でき、災害時に派遣要請され看護活動ができる制度です。災害看護専門看護師とは、前述した専門看護師のひとつで、災害看護の専門知識を有する看護師の資格です。
日本ACLS協会の資格
日本ACLS協会とは、救命処置に関する講習を開催している機関で、アメリカ心臓協会と提携し、準拠したプログラムを提供しています。この協会の講習を受講し試験に合格することで、世界基準の資格が取得できます。
救急看護師に役立つ資格としては、一次救命処置に関するBLSプロバイダーコースや二次救命処置に関するACLSプロバイダーコースがあります。
救急看護師のやりがい・きついと感じることは?
比較的ハードな現場で、覚悟が必要といわれる救急看護師。しかし、その反面、人の命を救うやりがいなど魅力的な面もあります。救急看護師として働く場合には、やりがいと厳しさ、両方の側面を理解しておかなければいけません。
ここでは、救急看護師のやりがいときついと感じることを紹介します。
救急看護師のやりがい
救急看護師は患者さんの命を救う以外にも、以下のようなやりがいがあります。
幅広い看護スキルの向上
看護師として、幅広い看護スキルが身に付くのは、救急看護師のやりがいのひとつです。
専門の診療科にわかれていない救急の現場では、幅広い疾患の知識が必要です。また、救急看護師は緊急性のある患者さんを担当するため、高度な看護スキルも求められます。具体的には、緊急時の応急処置、酸素療法、人工呼吸器の取り扱い、心電図の解釈などです。さらに、チーム医療の一員として他職種と連携する能力も不可欠です。
そのため、救急看護師として働き経験を積むことで、どのような医療現場にも応用できる知識と技術が身に付くでしょう。
給料・年収が高い
一般病棟の看護師と比較して給料や年収が高いのも、救急看護師のやりがいのひとつです。
救急看護師の給料が比較的高い理由は、高度なスキルが必要でハードワークになりがちな職場のため、特別手当などで追加の報酬が支払われている病院があるからです。また、救急看護師は24時間体制で勤務するため、夜勤手当もつくでしょう。
そのため、救急看護師は看護師のなかでも比較的高い給与が期待できるかもしれません。救急看護師の給与については、次項で詳しく解説します。
救急看護師がきついと感じること
救急看護師がきついと感じる理由は以下のとおりです。
体力的にハード
救急看護師は、体力的にハードな現場といわれています。
なぜなら、救急医療の現場では移乗の介助や心肺蘇生といった体力が必要な看護や、スピーディーに処置や検査をするために効率よく動く必要があるからです。また、感染症が流行する時期や熱中症が多発する時期などは救急外来の「繁忙期」にあたり、多忙な毎日で体力の消耗が激しいという意見もあります。さらには、自己啓発のために休日に研修会があることも。
そのため、体力に自信がある人でもきついと感じるかもしれません。
精神的な負担が大きい
救急看護師は、精神的な負担が大きいと感じる人もいます。
患者さんの命を左右する現場では、常に自分がおこなう看護の責任の重さを感じて仕事をしなければいけません。手を尽くしても救えなかった命と向き合う場面や、急な病気や怪我で家族を亡くした人のケアをしなければならない場面もあります。時には、冷静さを失った患者さんから罵声を浴びせられることもあるかもしれません。
このような状況下の救急看護師の仕事はストレスが多く、自分自身のストレスケアにも配慮しなければならない仕事といえます。
救急看護師の年収・給料事情
救急看護師の年収は、一般病棟よりも高くなる傾向です。
都道府県や施設規模の違いによりばらつきがありますが、厚生労働省の職業情報サイト「jobtag」によると全国の看護師の平均年収は508.1万円、月収30万円程度とされています。看護師の基本給は一般的に診療科などによる違いが少なく、各種手当の違いにより年収に差がでることがほとんどです。救急看護師は、以下のような手当がつく場合が多いでしょう。
- 特殊勤務手当:救急外来や集中治療室など特殊な勤務をする場合に支払われる
- 資格手当:認定看護師や専門看護師などを持つ看護師に対して支払われる
上記のような手当が上乗せされるため、救急看護師の年収は高くなる傾向です。
また、救急医療を提供しているような大規模病院は、ベースの給与水準が高い場合もあります。どちらにせよ、救急看護師の給料は勤務する病院や夜勤・残業の有無によるため、希望する病院の求人票でチェックしてみましょう。
救急看護師の役割を理解してキャリアの選択肢に
救急看護師は、さまざまな状況下において緊急に救急処置が必要な患者さんに対し看護を提供する仕事です。医療現場の最前線で患者さんの命を救う仕事はやりがいがあります。
ただし、日々、知識の向上と技術の鍛錬が必要で体力的・精神的にも負担がかかる仕事のため、救急看護師をめざしたい人は仕事内容や適性なども考慮してキャリアプランのひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
参考
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この記事を書いた人柴田実岐子
- 福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、夜勤専従・派遣・応援ナースなど、さまざまな働き方を経験。離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとしても活動中。