看護師転職の試用期間って誰のた…
保健師になるには?資格取得方法から給料・年収事情まで解説
公開日:2023/2/10
最終更新日:2023/2/10
全て表示
看護職という職種には、看護師・准看護師、保健師、助産師が含まれます。保健師になるには国家資格の取得が必要ですが、保健師国家試験を受験するには看護師免許の取得が必須となります。この記事では保健師と看護師国家試験をダブル受験するなど資格取得の方法や、給料・年収事情まで解説します。
目次
保健師とは?
保健師の国家資格は、保健師助産師看護師法(以下:保助看法)によって資格の定義や免許取得の条件、業務の際に守るべきことなどが定められています。まずは基本的な職種の定義や役割からみていきましょう。
保健師の仕事内容と役割
保助看法において、保健師は以下のように定められています。
第二条 この法律において「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
引用:保健師助産師看護師法
保健師は「保健指導」を行うことが主な仕事内容と役割だということが理解できます。また、「保健指導」とは、対象者の生活を基盤として自らが生活習慣における課題に気づいて健康的な行動変容の方向性を導き出せるように支援するなどです。
保健師はそのために現状分析や目標の設定、保健指導の計画を作成して、情報提供や自己決定できるようにするための支援などを行い、対象者が健康的な生活を維持できるようにサポートしていきます。
健康や生活問題は社会の縮図ともいわれています。広く言えば、保健師は人々が抱える健康問題の背景にある社会の問題を察知し、原因を探り、その一部の根本的な解決を図っていく仕事です。この保健指導を行う対象者は生活習慣病予防に関わるものばかりではありません。
地域で暮らす難病や障がいを抱える人、乳幼児から高齢者まであらゆる人々の健康のために、家庭訪問や健康相談、健診・検診での教育指導、地域活動などを行っています。地域活動を通して他職種、関連施設やサービスとの関わりも大きな役割です。
保健師の労働環境は?
保健師の労働環境は、働く場所によってさまざまです。公務員として都道府県や市区町村の保健所や保健センターなどに勤務する保健師の場合には、長時間労働や深夜に及ぶ残業、休日出勤などのケースはあまりないでしょう。
しかし、2020年から猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症の拡大時などの有事の際には通常業務に加えて健康観察や療養環境・入院中の管理などの対応をしているため、持ち帰りで夜間や休日の電話対応をしているケースもあるようです。
他にも企業や学校などは、その職場の環境によって左右されます。基本的には看護師のように、夜勤や休日出勤などはない職場が多いようです。
保健師と看護師の違いは?仕事内容と役割を解説
保健師と看護師の資格の違い、仕事内容や役割の違いにはどんなものがあるのでしょうか。保助看法ではこのように定められています。
第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
第二十九条 保健師でない者は、保健師又はこれに類似する名称を用いて、第二条に規定する業をしてはならない。
第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。
第三十五条 保健師は、傷病者の療養上の指導を行うに当たつて主治の医師又は歯科医師があるときは、その指示を受けなければならない。(平一三法一五三・一部改正)
第三十六条 保健師は、その業務に関して就業地を管轄する保健所の長の指示を受けたときは、これに従わなければならない。ただし、前条の規定の適用を妨げない。
引用:保健師助産師看護師法
保健師と看護師の違い
保健師と看護師の違いについてまとめました。
保健師 | 看護師 | |
---|---|---|
仕事内容や役割 | 病気や怪我をする可能性のある人に対して、予防する 健康維持・増進を図る プライマリーヘルスケア、健康活動 |
病気や怪我をした人に対して治療に携わる、ケアを行う |
規制の種類 | 名称独占 (保健指導は保健師以外が行ってもいいが、保健師の資格がない人が保健師だと名乗ってはいけない) |
業務独占 (看護師の資格を持った人だけが、その業務ができる) |
資格取得方法 | 看護師国家試験と保健師国家試験に合格 | 看護師国家試験に合格 |
主に保健師は「病気になる前の予防や健康維持」、看護師は「病気になってからの治療に携わる」という大きな違いがあります。
しかし、共通するところもあります。それは、同じ国家資格であることや、国家試験の管轄は厚生労働省で、厚生労働大臣が免許を与え、厚生労働省が交付していることです。また求められる基本的な姿勢、態度、品位、倫理観、守秘義務、免許を受けた後も資質の向上を図るところなどは、看護師と同じように書かれています。
保健師になるには?看護師とのダブル受験は可能?
保健師になるには国家資格の取得が必要です。また、保健師国家試験を受験するには看護師国家試験に合格して看護師免許を取得することが必須です。保健師になる方法は大きくわけて2通りあります。
資格取得方法1:大学や専門学校で看護師と保健師をダブル受験する
保健師資格は、看護系の大学や専門学校の4年間のうちで保健師・看護師それぞれに必要なカリキュラムを修了すれば、看護師と保健師のダブル受験が可能です。ダブル受験の場合、看護師の国家試験の勉強に加え、保健師に関する試験勉強も必要です。
しかし、看護師国家試験に不合格になると、保健師の国家試験に合格していても免許は取得できないので注意しましょう。
資格取得方法2:看護師免許取得後に保健師の専門学校へ通う
現在看護師の資格を取得している、そしてすでに看護師として働いている方が保健師を目指すルートもあります。
看護師の国家試験に合格した後に保健師の養成学校に1年通い、保健師国家試験を受験するルート。または3年制の専門学校や短大卒の場合には、看護系の大学3年次に編入するというルートもあります。
保健師の資格をすぐにとりたいならば1年制で、しっかりと保健関係の領域を学びたい、学び直したい場合には編入して2年通うのもいいでしょう。
基本的には通信課程でのカリキュラムはなく、学校に通う必要があります。特に保健師は夜間コースがなく、日中の授業がほとんどです。そのため働きながら保健師の資格取得を目指す場合には、夜勤専従か非常勤で土日中心のシフトで調整できるようにするかなどの選択肢が考えられます。
保健師国家試験の内容
保健師と看護師の国家試験は、2月中旬頃(毎年試験日は変わります)行われ、保健師のほうが2日ほど早く、その後に看護師の国家試験があります。
試験科目は公衆衛生看護学(学校保健・産業保健、健康危機管理、公衆衛生看護管理論など)、疫学、保健統計学、保健医療福祉行政論が含まれます。試験時間は午前と午後でわかれ、一般問題と状況設定問題(2連問または3連問)方式で出題されます。
保健師国家試験の難易度と合格率・ボ―ダー
保健師国家試験の配点は一般問題が1問1点、状況設定問題が1問2点とし、合格基準はその年によって変わります。
第104回~108回では86点~87点以上の得点、得点率60%前後がボーダーラインであり確実な合格を目指すならば、
- 100点以上の得点
- 70%以上の得点率
を目指すといいでしょう。
合格率は、第104回81.4%で低めだったのに対し、第107回では94.3%と80~90%とバラつきが目立ちます。
また、第104~108回において新卒者の合格率は85%~90%後半と高い水準なのに対して、既卒者では18~53%とバラつきがある状況です。
看護師や助産師と比較すると以下のようになっています。
回数 | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
保健師 | 103 | 7,450 | 90.8 |
104 | 6,666 | 81.4 | |
105 | 6,852 | 81.8 | |
106 | 7,537 | 91.5 | |
107 | 7,387 | 94.3 | |
助産師 | 100 | 1,909 | 93.0 |
101 | 2,201 | 98.7 | |
102 | 2,096 | 99.6 | |
103 | 2,093 | 99.4 | |
104 | 2,100 | 99.6 | |
看護師 | 106 | 55,367 | 88.5 |
107 | 58,682 | 91.0 | |
108 | 56,767 | 89.3 | |
109 | 58,514 | 89.2 | |
110 | 59,769 | 90.4 |
助産師の合格率は90%超えに対して、看護師の合格率は80%後半から90%前後で大きく変動はなし、保健師は80~90%とバラつきが目立ちます。しかし、新卒の合格率で考えれば保健師と看護師は大きな差はありません。
保健師と同様に看護師も既卒者の場合には合格率は、29~44%とバラつきがあり、新卒にくらべて低いです。
保健師として働くためにさらに必要な試験がある場合も
看護師として病院や施設などで働く場合、面接では看護師免許以外に必要な免許や試験はあまりありません。しかし、保健師として働く場合には、働く場所によっては資格、試験が必要なところもあるため、注意しましょう。
例えば、以下のようなものがあります。
公務員試験
保健所や保健センターなどの行政機関に勤務する場合、公務員保健師となるので、公務員試験も必須です。
公務員試験の内容は、教養試験(国語や数学社会や物理など一般知識分野)、専門試験(看護や疫学など医療関連)、小論文(保健師が関わるテーマなど)と面接があげられます。難易度は地方公務員試験に比べて都道府県や国の公務員試験の方が高いため、対策として参考書や過去問で対応しましょう。
SPI検査(総合適性検査)
企業で働く保健師や産業保健師の場合、一般企業の採用試験によく使われている適性検査を受ける場合もあります。なかには行政や学校保健師でも実施しているところもあります。
検査は能力適性検査(国語や数字に関する内容)と性格適性検査と2つの分野にわかれ、特別に何かを暗記したり知識を浸けたりと試験勉強をしなければならないわけではありませんが、初見では解けない問題も多く本番で実力を発揮できるように、試験内容や形式に慣れておくことが大事です。
また、SPI検査以外にも適性検査にはいろんな種類のものがあるため、何を採用しているか事前にチェックし、参考書や過去問で対策しておきましょう。
第一種衛生管理者
衛生管理者とは、事業場の労働条件や労働環境の衛生的改善と疾病の予防処置などを担当し、衛生全般の管理をする者です。
衛生管理者は、従業員が常時50人以上いる職場で選任する必要があると労働安全衛生法で定められており、産業保健の分野で規模の大きな企業で働きたい場合には、持っていると有利です。
保健師の資格を持っていると、特別に勉強や試験を受ける必要はなく、労働基準監督署や都道府県労働局へ行き、必要書類の提出と申請のみで取得することができます。具体的な手続き方法は都道府県によって異なるため、事前に確認しましょう。
保健師の働く場所と仕事内容
保健師が働く場所は、さまざまです。行政や企業、学校、病院などの医療機関、そのなかでどのような仕事内容で働いているのかをまとめました。
行政保健師
国や都道府県、市区町村などの管轄である保健所や保健センター、地域包括支援センターなどで働く保健師です。保健センターでは公衆衛生の専門家として、乳幼児や妊婦から成人、高齢者、障がい者などあらゆる年代の健康づくり事業などに取り組みます。
保健所では、難病や結核などの療養や精神障がい者への相談支援、保健センターと連携して地域全体の健康問題の把握や調査を行い、保健センターより広域的な仕事を行っています。また、国の医療・保健政策に携わるものになると、看護系技官として医療にかかわる専門性と行政官としての専門性を生かして活躍する技術系行政官という仕事もあります。
厚生労働省の大臣官房、医政局、健康局、子ども家庭局、社会・援護局などのさまざまな局に配属され、制度の改善や新たな制度の創設などに関わります。
企業の産業保健師
企業の保健室で働く保健師は、産業保健師とも呼ばれています。産業医や衛生管理者とチームを組み、企業で働く労働者の健康管理、環境管理を主に行います。近年では特に生活習慣病やメンタルヘルスなどの関わりが重要になってきています。
また、産業保健師とは別に、医療やヘルスケア分野の企業で保健師として、医療機器や関連サービスに携わる仕事もあります。後者は保健師の資格だけではなく、看護師の資格や経験も活用しての仕事が多いです。
学校保健師
学校や大学などの研究機関で働く保健師です。学校保健室では、生徒や教職員を対象に健康管理、健康診断・健康相談・健康教育などを行っています。また、大学研究機関では、人材の養成するための教員や研究活動に関わり、地域の健康づくりなどに関わる仕事もあります。
病院、診療所など医療機関の保健師
病院でも一般病棟などではなく、地域医療連携室や退院支援室、保健指導を行う外来などの部署で保健師が活躍しているところもあります。患者さんの支援の方針を検討、調整を行い、行政や訪問看護ステーションとの調整・相談、支援をしています。また、健診や検診に関する生活習慣などの指導、支援も行っています。
その他
他にも福祉施設、訪問看護ステーションでは保健師が活躍しています。これらは保健師の資格としてより、看護師と保健師の資格両方を活用して働くイメージで、子どもや高齢者などの福祉施設の利用者や職員の健康管理や環境管理を行います。児童相談所に保健師が在籍しているところもあり、関係機関への情報提供や連絡調整を行っています。
保健師の資格を取るメリット
保健師の資格を取るメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。例えば、以下のようなことが考えられます。
- 資格を取ることで得られる知識や経験
- 予防医療に携わることができる
- 興味のある分野に集中できる
- 就業先が幅広い
- 離職率が低い
- 土日休みなことが多く、生活が安定しやすい
行政や企業、学校など保健師の資格がないと働けない職場だからこそ得られる知識や経験は、大きなメリットのひとつです。特に地域や予防医療・活動は看護師資格だけでは難しい場合も多く、保健師ならではの経験といえるでしょう。
ただ、最近では看護大学で看護師と保健師のダブル受験がスタンダードなケースもあり、とりあえず保健師資格も取得しておこうという人も多いため、資格を持っているだけで強みが存分にあるとは言えないかもしれません。
看護師経験と保健師の経験を活かすことができれば、ライフステージやキャリアプランの変化にあわせ、より就職先の選択肢が増やすことができるでしょう。
保健師に向いているのはこんな人
保健師と看護師の仕事内容や役割の違いにもあるように、公衆衛生や予防医療、健康相談や保健指導などに興味がある、資格を活かして社会に役立てたいと考える人には向いている仕事です。
また、夜勤がなくカレンダー通りの仕事がしたい、企業に勤めたいと考える人にとっても、働き方のひとつとして保健師の仕事は向いているでしょう。
保健師の給料・平均年収
保健師の給料と平均年収において、看護師と比べてみると、以下のようになっています。
保健師 | 看護師 | |
---|---|---|
きまって支給する現金給与額 | 32万3800円 | 34万4300円 |
所定内給与額 | 30万4500円 | 31万2600円 |
年間賞与 | 92万900円 | 85万4600円 |
保健師の給料・年収は看護師より低い?
上記から年収を計算するとこのようになります。
- 保健師32万3800円×12 プラス92万900円=年収480万6500円
- 看護師34万4300円×12 プラス85万4600円=年収498万6200円
保健師の給料や年収は働く場所や仕事内容によって異なります。看護師のほうが給料や年収が高いのは、夜勤手当や危険手当などが含まれているためだと考えられます。しかし、年間賞与は保健師の方が多く、これは企業(産業保健師の場合にはある程度の規模の企業)や公務員として働いている場合は手当も手厚いところが多いことが考えられます。
保健師の具体的なキャリアパス
実際に保健師として働き始めた後のことも、気になるのではないでしょうか。キャリアパスを公開している自治体や企業もあり、人事育成制度に組み込まれていることがあります。例えば、自治体保健師のキャリアパスではこのようなものがあります。
また、日本看護協会が定める『保健活動到達状況のチェックリスト』というものもあります。保健師が自ら行う保健活動を確認できるので、合わせて活用してみるといいでしょう。
保健師の資格を活かしたキャリアの選択肢もある
ここまでみても保健師の資格は看護師の資格と違い、働く場所や仕事内容に違いがあることがわかります。
病気になって治療に携わる看護師に比べ、病気になる前から予防や健康維持の分野に広く関わる保健師の仕事は、興味のある分野に集中できることや安定性など、さまざまなメリットがあります。
仕事内容や役割を理解し、自分にあったキャリア形成や働き方を見つけましょう。
【参考】
日本の保健師による分野横断的支援と今後の課題 個別支援を例として
-
この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。