准看護師と正看護師の違いは資格や仕事内容にあり。正看護師になるには?

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准看護師と正看護師は、資格や仕事内容に違いがあります。この記事では、准看護師の給料や需要など現状を解説したうえで、准看護師から正看護師になるにはどうしたらよいのか、学修の金銭的なサポート制度とあわせて紹介します。

准看護師とは?

准看護師は、保健師・助産師・正看護師と並ぶ看護職のひとつです。正看護師不足を補うために、看護・診療を補助する役割として准看護師の資格がつくられました。

「看護師という資格のなかに正看護師と准看護師の資格がある」というのは誤解であり、准看護師は正看護師とは異なる職業です。最短2年で准看護師になれることから、働きながら准看護師資格の取得にチャレンジする社会人も少なくありません。

准看護師資格の取得方法

准看護師資格を取得するためには准看護師試験に合格することが必要です。

准看護師の資格取得までの流れ

参考:一般社団法人 日本看護師連絡協議会

准看護師試験の受験資格は、高校の衛生看護科を卒業、または准看護師学校で2年間の教育を受けることで得られます。准看護師学校に入学するための要件は、中学校を卒業していることです。

准看護師学校の入試科目は学校ごとに異なりますが、入学試験レベルは中卒程度となってます。学校によって全日制(朝から夕方まで授業がある)や半日制(平日午後や夜間に授業がある)など通学時間が異なり、社会人が働きながら通えるところもあります。

准看護師試験の試験は、毎年2月に47都道府県で実施されます。受験場所を変えることで複数回受験が可能です。合格率は平均して97~98%と高く、厚生労働省医政局看護課が発表した資料によると令和3年度准看護師試験の合格率は98%でした。

参照:「令和3年度准看護師試験の実施状況について」の訂正について

准看護師と正看護師の違い

准看護師と正看護師は資格が異なり、役割・仕事内容・待遇にも違いがあります。ここからは准看護師と正看護師の違いについて解説します。

准看護師と正看護師は資格が異なる

看護師(正看護師)と准看護師は異なる資格です。保健師助産師看護師法では、次のように規定されています。

保健師助産師看護師法 第五条:看護師について

この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受け て、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う ことを業とする者をいう。

保健師助産師看護師法 第六条:准看護師について

この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受 けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを 行うことを業とする者をいう。

引用:保健師助産師看護師法|e-Gov法令検索

准看護師は国家資格ではありませんが、正看護師は国家資格であるという点にも違いがあります。

准看護師の役割

准看護師の役割は、医師や歯科医師、正看護師の指示のもとで仕事を行うことです。
正看護師は自らの判断で自律的に看護業務を行う役割を担いますが、准看護師は指示を受けて看護業務を行うという点に大きな違いがあります。

患者さんのケアについて必要だと感じることがあれば、准看護師は正看護師等に報告し、新たに指示を受けてから行動します。

准看護師との仕事内容

准看護師と正看護師の仕事内容で大きく異なるのは次の2点です。

  • 看護計画の立案
  • 指示出し

准看護師は医師や歯科医師、正看護師からの指示がなければ看護業務を行えません。准看護師が「看護計画を立てる」「同じ准看護師あるいは正看護師へ指示を出す」といったことはできません。

ただし、指示があれば下記のように正看護師とさほど変わらない看護業務を行うことが可能です。

  • バイタルチェック
  • 点滴
  • 採血
  • 診療や手術の補助
  • カルテ記入
  • 食事介助
  • 排泄介助 など

待遇の違い

准看護師と正看護師は給料などの待遇面でも異なります。また准看護師の求人数は正看護師と比べると少ない傾向があり、福利厚生など待遇が良い勤務先を見つけることが難しいかもしれません。以下では准看護師の給料事情について解説します。

准看護師の給料事情

准看護師の給料は月収で30万円ほど、賞与を合わせた年収は420万円ほどです。令和4年度賃金構造基本統計調査によると、正看護師と准看護師の給与額(月収)と年間の賞与額は下記のとおりです。

正看護師・准看護師の給料比較

正看護師 准看護師
給与額(月収) 35万1600円 29万6200円
賞与額(年間) 86万2100円 62万7300円
年収 508万1300円 418万1700円

参照:令和4年度賃金基本構造統計調査 一般労働者 職種(小分類)別決まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額

以下は正看護師・准看護師の年収推移を年齢階級別に比較した表です。

正看護師・准看護師の年齢別年収比較

准看護師と正看護師の年収比較(年齢別)

参照:令和4年度賃金基本構造統計調査 一般労働者 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

正看護師と准看護師の年収差は、30~34歳が最も大きく約138万円あります。正看護師も准看護師も昇給はしますが、統計データからも准看護師が正看護師の年収を超えることは難しいことがわかります。

准看護師は医師や歯科医師、正看護師などから指示を受けて看護業務を行ないますが、その内容は正看護師と大きく変わるわけではありません。こなす業務内容は正看護師とさほど変わらないのに給料には大きな差があることから、准看護師から正看護師へキャリアアップを
目指す方もいます。

准看護師の需要

正看護師不足を補う看護職として現在も多くの准看護師が活躍していますが、需要は減少傾向にあります。また、准看護師を廃止にして正看護師への一本化を図る動きも見られます。
ここからは准看護師の需要について、求人状況や准看護師を求める理由から解説し、廃止の動向についても紹介します。

准看護師の求人状況

准看護師の求人数は、正看護師の求人数と比べると少ないのが現状です。病院や診療所の求人数については、下記のように規模によらず正看護師の求人が7~9割以上を占めており、准看護師の求人は多くても1割程度となっています。

施設規模別の求人数

正看護師(人) 准看護師(人)
病院(500床以上) 8007 166
病院(200~499床) 20207 1412
病院(20~199床) 29759 2396
診療所(有床) 3281 468
診療所(無床) 15068 1234

参考:
看護職員報告書2023

准看護師の求人数が多い介護医療院(I型)や、自宅などで看護職を必要としている個人、介護保険施設であっても、准看護師求人の割合は看護職求人の2割程度にとどまり、下記のように正看護師のほうが求人数は多い傾向にあります。

施設種類別の求人数

正看護師(人) 准看護師(人)
介護医療院(I型) 115 42
個人
(自宅などで看護職を 必要としている方)
25 10
介護老人保健施設 5938 1109

参照:
ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書

准看護師は廃止になる?

准看護師の資格が廃止になるとは決まっていませんが、廃止に向けた動きも見られます。

日本看護師協会では、准看護師養成を停止して正看護師への一本化を推進しています。正看護師への統合を推進する理由は、現代の看護対象者がより複雑化・多様化しているからです。現代社会のニーズに応えるためには、准看護師養成の教育では内容も時間も不足しているという考えがあるようです。

一方で、日本医師会は准看護師の廃止に反対の立場をとっています。看護の担い手が少ないなか、准看護師は社会人や子どものいる人でも目指しやすく、看護職に就くための道として残すべきという理由からです。

参照:准看護師制度の課題解決に向けた取組み|日本看護師協会
   准看護師が地域の医療を支えています ~国民の皆さんへ~|日本医師会

准看護師から正看護師になるには?

准看護師から正看護師になるには、看護師国家試験に合格して厚生労働大臣が発行する看護師免許を得る必要があります。准看護師が看護師国家試験の受験資格を得るには、看護師学校養成所2年課程を修了しなければなりません。

以下では看護師学校養成所の種類や学費のサポート制度について紹介します。

看護師学校養成所は3パターンある

看護師学校養成所の2年課程には次の3種類があります。

  1. 全日制
  2. 定時制
  3. 通信制

各教育課程からの看護師資格取得の流れは次のとおりです。

准看護師から正看護師資格取得までの流れ

全日制は、高卒以上の准看護師であれば最短で正看護師になれるルートです。しかし丸一日授業があるため、社会人が働きながら通うことはできません。

働きながら正看護師へのキャリアアップを目指すのであれば、定時制や通信制が現実的です。ただし定時制は修了までに3年かかることや、通信制では受験要件に7年以上の実務経験が求められることが難点といえます。

また全日制・定時制は高校を卒業している方であれば、准看護師の資格をとったあとに看護師学校養成所へ入学できますが、中学卒業で准看護師の資格を取得した方は看護師学校養成所へ入学する前に3年間の実務経験が必要です。

学費のサポート制度を知っておこう

准看護師から正看護師へのキャリアアップを目指す方に向けた学費のサポート制度を紹介します。なるべく返済の必要がないものや、返済の必要があっても金利の低いものを探すとよいでしょう。

看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金

「看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金」は、日本看護師協会会員の准看護師を対象とした奨学金です。通信制に進学する方のみが利用できます。

貸与型のため返済は必要ですが利息はかかりません。また他の奨学金との併用が可能です。

学費や生計費として貸与されるため、授業料のほか実習時の交通費や宿泊費などにも活用できます。貸与額は年額36万円または48万円から選べます。貸与期間は在学中の1年間または2年間です。

参照:看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金|日本看護師協会

専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金は教育訓練給付制度のひとつであり、看護師資格取得など中長期的キャリア形成への支援が対象です。

専門実践教育訓練給付金は、年間40万円を上限に受講費用の50%が受講中の6ヶ月毎に支給されます。専門実践教育訓練給付金制度を利用して正看護師の資格を取得し、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用され場合は、年間16万円を限度に受講費用の20%が追加で支給されます。

貸与ではなく給付であるため返済の必要はありません。ただし給付を受けるには、雇用保険に加入している期間などの受給要件を満たす必要があります。パート・アルバイト・派遣でも雇用保険に加入していれば給付の対象となる可能性があります。

参照:教育訓練給付の支給を受けたい方へ|厚生労働省

准看護師から正看護師になるメリット

准看護師から正看護師になることで得られるメリットを紹介します。すでに准看護師として勤務するなかで向上心をもって取り組んでいる方や、待遇を改善したいと考えている方は、正看護師の資格を取ることで希望を叶えられるかもしれません。

主体的に看護を実践できる

准看護師のように指示を受けることなく、自分の判断で看護業務ができようになるメリットがあります。

  • 自身で患者さんの看護計画を立てたい
  • 患者さんの様子から必要な看護を自分で判断してできるようになりたい
  • 今よりも自信をもって看護業務をおこないたい

など、主体的な看護をしたい気持ちがある方は正看護師になることも検討してみましょう。

キャリアアップが目指せる

正看護師になることで、さらなるキャリアアップを目指せるのもメリットといえます。
専門看護師や認定看護師、助産師や保健師、マネジメント職など、正看護師になったあとにはさまざまなキャリアを選択することが可能です。看護職として特定の分野の専門性を深めたい方や、キャリアの選択肢を広げたい方にとって正看護師になるメリットは大きいといえるでしょう。

就職先の選択肢が広がる

正看護師になることで、就職先の選択肢が広がることもメリットです。准看護師に比べると正看護師の求人数は多いため、近所で働きたい、福利厚生の充実した勤務先を選びたい、給料にこだわりたいなどの希望がある人は、多数の採用情報から自分の希望に合う勤務先を選択しやすくなるかもしれません。

仕事の幅を広げたいなら正看護師も選択肢に

正看護師が不足している社会において、看護職のひとつである准看護師の役割は決して小さなものではありません。しかし、医師や看護師などから指示がなければ看護業務が実践できなかったり、キャリアアップが難しかったりする場合もあります。もし看護を主体的に行ないたいやキャリアアップしたいなど、仕事の幅を広げたい気持ちがあるなら正看護師を目指すメリットは大きいはずです。奨学金などを活用しつつ通信制や定時制課程を利用して働きながら、正看護師の資格を取得する道も検討してみてはいかがでしょうか。

【引用・参考】

保健師助産師看護師法|e-Gov法令検索
令和4年度賃金基本構造統計調査 一般労働者 職種(小分類)別決まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書

准看護師制度の課題解決に向けた取組み|日本看護師協会

准看護師が地域の医療を支えています ~国民の皆さんへ~|日本医師会

看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金|日本看護師協会

教育訓練給付制度とは|厚生労働省教育訓練給付の支給を受けたい方へ|厚生労働省

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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