【看護師向け】キャリアの考え方。キャリアプランがないときはどうする?

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看護師の働き方は多種多様だからこそ、主体的にキャリアプランを考えることは大切です。しかし、どのようにキャリアプランを考えるのかわからない人もいるでしょう。今回は看護師のキャリア形成における考え方について具体的な選択肢と例を用いて紹介します。

看護師の「キャリア」を考えよう

看護師としてのキャリアを考えるまえに、まずはキャリアに関する語句の意味を理解しておくことがおすすめです。キャリアに関する語句は、キャリアプラン・キャリアアップ・キャリアパスといくつかあります。それぞれの意味と違いについて解説しますので、キャリアを考えるときに役立てましょう。

キャリアプランとは

キャリアプランとは、人生においてどのように仕事をしていきたいかを決める中長期的な計画のことをいいます。キャリアプランには、具体的に次のようなことが含まれます。

  • 5年後や10年後に挑戦したい仕事内容
  • 目標を叶えるための行動とタイミング
  • プライベートと両立をするための選択

資格取得や転職、ライフイベントも視野に入れ、仕事と人生の計画を立てます。

キャリアパスとは

キャリアパスとは、就業先で就きたい職務や職位に到達するまでの道筋を描いたものです。目標とする職位などに必要とされる経験や、身につけるべきスキルがキャリアパスによって提示されます。

一般的には雇用主から労働者へと提示されるもので、転職やライフイベントなどが考慮されない点でキャリアプランとは異なります。

キャリアアップとは

キャリアアップとは、仕事においてより高いレベルの知識やスキルを身につけ、経歴を高めることをいいます。ひとつの就業先で経験や実績を積み上げるだけでなく、転職によって新しいノウハウを手に入れるなど、キャリアアップへの道筋はさまざまです。

現役看護師はキャリアをどう考えている?キャリアプランを考えるべき理由

看護師の働き方は多種多様だからこそ、キャリアプランも人によってさまざまです。現役看護師はキャリアに対してどのように向き合っているのか、キャリアプランに関するアンケート調査を行ないました。

半数以上の看護師はキャリアプランが未定

看護師としての具体的なキャリアプランがあるか、現役看護師に尋ねたところ以下のような結果が得られました。

現役看護師のキャリアプランに関するアンケート結果

看護師という仕事において、具体的なキャリアプランはありますか?

キャリアプランが「明確にある」と答えた方は、8.22%と全体の1割未満、明確なキャリアプランはないものの「なんとなくある」と回答した方は27.63%いました。約3割程度の看護師に何らかのキャリアプランがあることがわかります。

一方で「ない」と回答した方が37.83%と最も多く「わからない」と答えた方も26.32%いました。半数以上の看護師は、キャリアプランが未定という現状もうかがえます。

看護師がキャリアプランを考えるべき理由

看護師がキャリアプランを考えるべき理由は、看護師としてレベルアップするために必要だからです。キャリアプランを考えて目標を設定することは、今やるべきことや、身をおくべき環境を明確にするのに役立ちます。さらに仕事をするうえでのモチベーションの向上にも役立つでしょう。

ワークライフバランスや大事にしている価値観を守りながら長く働くために、どのような働き方をすればよいのかもキャリアプランを通して考えましょう。

看護師がキャリアプランを考えるときのポイント

看護師がキャリアプランを考えるときには、仕事だけでなくプライベートも含めて多角的な視点でプランニングすることが大切です。現在の状況と将来を考えて、中長期的な目標を決めるところから始めましょう。キャリアプランを考えるときの主なポイントを紹介します。

なりたい看護師像をイメージする

キャリアプランで目標を考えるときには、まずなりたい看護師像をイメージしてみましょう。

  • 興味関心がある分野に進みたい
  • 専門性を身につけたい
  • 管理者を目指したい

など、自分がどのような仕事がしたいのかを軸に考えます。いつまでにその仕事に就きたいのか、時期も明確にできるとさらに良いでしょう。

なりたい看護師像や時期がイメージできると「どのような勉強が必要なのか」「今の職場で実現可能なのか」などを考えることが可能になり、キャリアプランの道筋を立てられます。

ライフプランや必要な資金を考える

キャリアプランを作成するには、ライフプランや必要な資金を考えることも大切です。

  • 結婚するorしない
  • 片働きor共働き
  • 子どもありorなし
  • 持ち家or賃貸

など、さまざまなライフプランが考えられます。どのタイミングでどのくらいのお金が必要になるのかライフプランによって異なるでしょう。

さらに選択するキャリアによっては、収入が大きく変わることもあります。ライフプランの実現に必要なお金を得るためには、どのような働き方をすればよいのかという視点からもキャリアプランを考えましょう。

将来の体力を考慮する

キャリアプランは中長期的な計画であるため、将来の体力も考慮する必要があります。若いうちはよくても、年齢を重ねるほど夜勤や2交代の長時間勤務がつらくなるという方も少なくありません。5年後、10年後、20年後の自分を想像したうえでキャリアプランを考えましょう。

自分の価値観に合わせる

誰かのキャリアプランを真似るのではなく、自分の価値観に合ったキャリアプランを立てることも大切です。仕事・健康・お金・家族・趣味など、人によって重視したいことは異なるため、他人のキャリアプランをまるごと自分のものとすることは困難です。自分の本音と向き合って、働く意味を考えてみましょう。

看護師のキャリア形成の指標となるもの

看護師のキャリア形成の指標として、クリニカルラダーやキャリアラダーがあります。これらを参考にすることで現在のレベルと目指すレベルの差を確認でき、キャリアプランを立てるときのヒントになるでしょう。

クリニカルラダー

クリニカルラダーは、日本看護協会が次のような目的をもとに作成した看護実践能力に関する全国共通の評価指標です。

  • すべての看護師に共通する看護実践能力の指標の開発と能力育成支援
  • 看護実践能力の適切な評価による看護の質の可視化および担保
  • 患者や利用者等への安全・安心で質の高い看護ケアの提供

引用:(動画)JNAラダーの基本的考え方|公益社団法人日本看護協会

クリニカルラダーの横軸には4つの分野に分かれた行動目標があり、縦軸には1~5のレベルが設定されています。

参考:看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)|公益社団法人日本看護協会

各レベルの行動目標すべてを達成し、かつレベルごとに設けられた到達目標を達成すると、当該レベルに達したと判断されるものです。

キャリアラダー

キャリアラダーは、クリニカルラダーをもとに病院や施設などが独自で作成している指標です。クリニカルラダーに含まれる指標に加えて、管理的な能力段階や専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師などキャリアに関する指標も含まれています。

看護師のキャリアパスの例

看護師のキャリア指向を大きく分けると、スペシャリスト・ジェネラリスト・マネジメントの3つがあります。それぞれの職位に必要な能力や知識が異なることから、キャリアパスも違ったものになります。スペシャリスト・ジェネラリスト・マネジメントのキャリアについて、それぞれキャリアパスの例を紹介します。

スペシャリスト

スペシャリストとは、特定の分野に特化してハイレベルなケアを実践する看護師のことをいいます。

スペシャリストを目標にする場合、認定看護師や専門看護師の資格を取ったり、スペシャリストを目指す分野での経験が積める病院で勤務したりすることがキャリアパスとして挙げられます。

ジェネラリスト

ジェネラリストについて、日本看護協会は次のように定義しています。

経験と継続教育によって習得した暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力が発揮できる者(2007年)

引用:継続教育の基準ver.2|公益社団法人日本看護協会

特定の分野ではなく、幅広い領域で質の高い看護を提供できる看護師がジェネラリストとして認められます。ジェネラリストになるために特定の資格を取る必要はありませんが、幅広い領域で質の高い看護を提供するためには、複数の診療科での勤務経験を積むことが必要です。

マネジメント

マネジメントは、患者さんによりよいケアを提供するため、次のような計画や管理を行ないます。

  • 人員の配置
  • 業務管理
  • 安全管理
  • 新人看護師の教育

リーダーシップや、限られた人員や時間を効率よく使う能力など、経営的な力が必要です。看護主任、看護師長、看護部長を目指すのが一般的で、看護師長や看護部長向けの資格である認定看護管理者の取得がキャリアパスに入ることもあります。

看護師としてのキャリアプランがないときの対処法

看護師としてのキャリアプランが思い浮かばないときには、次のようなことが必要です。

  • 興味のある分野を見つける
  • 目標となる人を見つける
  • キャリアを考える余裕をもつ

キャリアプランがない・見つからないと思う原因は、情報不足や現状だけで精一杯になっているからかもしれません。キャリアプランが立てられないときの対処法を解説します。

情報収集

セミナーや勉強会に出席するなど情報収集を図りましょう。キャリアプランを立てるためには、自分がどのような仕事をしたいのか考える必要があります。セミナーや勉強会などの学ぶ機会を経て、興味関心がもてる分野を見つけることで、キャリアプランを立てやすくなるでしょう。

キャリアモデルを見つける

キャリアのお手本になる人を見つけると、なりたい看護師像やキャリアパスが具体的にイメージしやすくなります。認定看護師や専門看護師などの資格保有者や、管理職の看護師など、キャリアアップをしている看護師は、キャリアプランを立てるときのヒントになるでしょう。

支援を積極的に受ける

今の仕事をこなすのに精一杯の状況で将来のことまで考える余裕がない場合は、あらゆる支援を受けてキャリアプランを考える機会を確保しましょう。

日本赤十字九州国際看護大学の『看護師の「職業キャリア成熟」に影響する要因』には以下のように示されています。

「家族の支援が得られることで、自己のキャリアに積極的な関心を持つ事や、キャリアへの自律的な取り組み、将来展望を持った計画を考えることができると示唆された。」

家事、育児、精神的なサポートなど、家族の力を借りるほか、家族から支援を受けるのが難しい場合は職場の支援制度や家事代行サービスなどを利用するのもよいでしょう。

引用:看護師の「職業キャリア成熟」に影響する要因|小手川 良江,本田 多美枝, 阿部 オリエ, 本田 由美, 寺門 とも子, 八尋 万智子,日本赤十字九州国際看護大学,9,15-25,2010

看護師のキャリアアップに役立つ資格

キャリアアップや、キャリアプランにおける目標達成には、資格取得が必要となることもあります。キャリアプランが漠然としている方は、興味のある資格からキャリアプランを考えるのも一つの方法です。

キャリアの観点からだけでなく、知識や能力の客観的な証明ができる点も資格取得のメリットといえるでしょう。看護師のキャリアアップに役立つ資格を紹介します。

認定看護師

認定看護師は、次のように定義されています。

認定看護師とは、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として、本会の認定を受けた看護師をいいます。

引用:専門看護師・認定看護師・認定看護管理者|公益社団法人日本看護協会

認定看護師には、次の19の分野があります。

認定看護分野(19分野)

認定看護師になるには、次のステップが必要です。

  1. 看護師免許取得後、実務研修を通算5年以上積む(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)
  2. 認定看護師教育機関へ入学
  3. 所定のカリキュラムを修了(6ヶ月・615時間以上)
  4. 認定看護師認定審査を受ける
  5. 認定看護師認定証の交付と登録を受ける

認定看護師の資格は5年ごとの更新制をとっており、看護実践と自己研鑽の実績について書類審査があります。特定の分野において知識を深め、よりハイレベルな看護を実践できるようになることは、認定看護師になる魅力といえます。

専門看護師

専門看護師は、日本看護協会が次のように定義しています。

本会専門看護師認定審査に合格し、ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有することを認められた者をいいます。

引用:専門看護師・認定看護師・認定看護管理者|公益社団法人日本看護協会

専門看護師には、次の13の分野があります。

専門看護分野(13分野)

専門看護師になるには、次のステップが必要です。

  1. 看護系大学院修士課程修了者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得する
  2. 実務研修を通算5年以上積む(うち3年間以上は専門看護分野の実務研修であること)
  3. 認定審査(書類審査と筆記試験)
  4. 専門看護師認定証の交付と登録

専門看護師も5年ごとの更新制となっており、更新のためには看護実践や研修の実績、研究業績などの書類審査に通過する必要があります。難易度の高い資格ですが、看護師として臨床の場で高度な看護を実践できるほか、教育活動や研究活動において病院内外を問わず活躍する道があります。

認定看護管理者

日本看護協会では、認定看護管理者を次のように定義しています。

認定看護管理者は、病院や介護老人保健施設などの管理者として必要な知識を持ち、患者・家族や地域住民に対して質の高いサービスを提供できるよう組織を改革し、発展させることができる能力を有すると認められた看護師です。

引用:専門看護師・認定看護師・認定看護管理者|公益社団法人日本看護協会

認定看護管理者になるには、日本看護協会が毎年1回実施している認定看護管理者認定審査を実施に合格し、登録手続きをする必要があります。

認定看護管理者認定審査の受験資格は次のとおりです。

  1. 日本国の看護師免許を有すること。
  2. 看護師免許を取得後、実務経験が通算5年以上あること。そのうち通算3年以上は看護師長相当以上の看護管理の経験があること。
  3. 以下のいずれかの要件を満たしていること。
    1) 認定看護管理者教育課程サードレベルを修了している者
    2) 看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を取得している者※

※「看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を取得している者」とは、次の①及び②を満たしている者をいい、単に看護管理に関連する単位(科目)を取得した場合はこれに該当しない。
①修了証、履修単位証明書、成績証明証等において、看護管理に関連する学問領域を専攻していることが確認できる、または、看護管理特論、看護管理演習、看護管理研究、経営組織論、経済論、労務管理、保健医療福祉政策等の管理に関連する単位を取得している。
②修士論文において、看護管理に関する内容を記載している。

引用:専門看護師・認定看護師・認定看護管理者|公益社団法人日本看護協会

認定看護管理者も5年ごとに認定更新審査が行われており、看護管理実践や自己研鑽の実績などが審査されます。認定看護管理者の資格を取得すると、昇給や昇進も期待できます。スペシャリストやジェネラリストがキャリアアップするための資格としても役立つでしょう。

ケアマネジャー(介護支援専門員)

ケアマネジャーとは、介護を必要とする方が適切なサービスを受けられるよう、ケアプランを作成したり、施設や自治体などと調整を図ったりする職業です。令和4年度の試験では、合格者のうち看護師が占める割合は17.9%と2割弱でした。

看護師がケアマネジャーになる場合、次のステップが必要です。

  1. 看護師の仕事を5年以上かつ900日以上経験して受験資格を得る
  2. 介護支援専門員実務研修受講試験に合格する
  3. 研修を受講する
  4. 登録と資格証の交付

ケアマネジャーの資格取得後は、そのまま病棟の看護師として働くほかにも、地域包括支援センターや介護施設などへの転職も考えられます。看護師経験から得た医療的な知識と、介護の知識をかけ合わせた仕事ができるため、患者さんの役に立てる実感が得られるでしょう。

保健師

保健師は、地域の人々が健康な生活を送れるようにサポートする仕事です。保健師国家試験に合格する必要があり、看護師国家試験に合格していることが受験要件です。

4年制の看護系大学で保健師選択過程を修了していれば、看護師国家試験合格後にそのまま保健師国家試験を受験できます。3~4年制の看護系大学、短大、専門学校を卒業している方は、看護師国家試験合格後に所定の機関で専門教育を修了したあとに保健師国家試験を受験できます。

参考:保健師|職業情報提供サイトjobtag

乳児から高齢者まで多くの人と関わったり、病気予防の啓発をして人々の健康を守ったりと、さらに多くの学びや経験につながる資格といえます。

助産師

助産師は、分娩の介助だけでなく、妊産婦や新生児および乳幼児のケアを行なう仕事です。さらに、女性のライフステージに応じた健康教育や相談、指導をするなどウイメンズヘルスにおける役割も担っています。

助産師になるには、次のステップが必要です。

  1. 看護師の免許取得
  2. 大学院、短大や専門学校などで1年以上の助産師課程を修了
  3. 助産師国家試験に合格

助産師は開業権が得られるため、自分で助産院を運営するという選択肢が増えます。さらに、病院などで勤務しながらアドバンス助産師の認証を目標にするなど、さらなるキャリアアップも目指せる資格です。

キャリアプランを立ててキャリア形成やワークライフバランスを実現しよう

看護師がキャリアプランを立てるときには、どんな仕事をしたいか、どのように働きたいかを中長期的な視点で考える必要があります。
キャリアプランがあれば、何をすべきなのかを考え、行動していくことが可能です。目標達成やワークライフバランスを実現するためにも、キャリアプランを考える機会をつくりましょう。

【参考・引用】

(動画)JNAラダーの基本的考え方|公益社団法人日本看護協会

看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)|公益社団法人日本看護協会

キャリアラダー段階図|香川県立中央病院

継続教育の基準ver.2|公益社団法人日本看護協会

看護師の「職業キャリア成熟」に影響する要因|小手川 良江,本田 多美枝, 阿部 オリエ, 本田 由美, 寺門 とも子, 八尋 万智子,日本赤十字九州国際看護大学,9,15-25,2010

専門看護師・認定看護師・認定看護管理者|公益社団法人日本看護協会

第25回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省

保健師|職業情報提供サイトjobtag

助産師の声明・綱領|日本助産師会

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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