「フリーランス看護師」の働き方とは。年収からメリット・デメリットまで

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組織に属さずに個人事業主としてとして働く「フリーランス看護師」は、看護師の新しい働き方として注目が集まっています。今回はフリーランス看護師の年収事情と、メリット・デメリットを踏まえて、フリーランス看護師の働き方を徹底解説します。

フリーランス看護師とは?

フリーランス看護師とは、病院や企業などと雇用契約を結ばずに、個人事業主として独立して働く看護師のことです。雇用される看護師とフリーランス看護師では、仕事上の役割や賃金・報酬が発生する理屈も異なります。

フリーランス看護師の役割

フリーランス看護師として働く場合、「雇用契約」ではなく「業務委託契約」を結ぶことになるため、業務委託先が求めている結果を提供するという役割を担います。

雇用契約と業務委託契約(委任契約・請負契約)の違いは下記の表のとおりです。

雇用契約 使用者の指示に従って労働することに対して賃金が与えられる
委任契約 委任された仕事をおこなうことに対して報酬が発生する
請負契約 請け負った仕事の成果に対して報酬が発生する

雇用者が決めたルールや指示を守って働くことが求められる雇用契約と異なり、フリーランス看護師は自分の判断と裁量で仕事を完遂することが求められます。

フリーランス看護師の需要と働き方の事例

フリーランス看護師は自律的な仕事ができることから即戦力が求められる場で需要があります。フリーランス看護師が活躍する場の例を主な仕事内容とともに解説します。

フリーランス看護師が活躍する場 特徴・主な仕事内容
病院やクリニック
  • 仕事内容は、病院やクリニックで雇用されている看護師と同じ
  • 常勤看護師の育休が明けるまで、など期間を限定しての勤務が多い
訪問看護
  • 訪問看護ステーションにフリーランス看護師として登録し、主治医が作成する訪問看護指示書に基づいたケアを提供する
ツアーナース・トラベルナース
  • 学校や企業の旅行などに同行し、急病人やケガ人の応急手当を行う
  • 一般的には宿泊を伴う
イベントナース
  • コンサート・スポーツ大会・花火大会などのイベント時に、救護室で急病人やケガ人の応急手当を担う
  • 拘束時間は長めだが、基本的に宿泊は伴わない
講師
  • 看護関係の研修や勉強会、一般市民向け講座などの講師を務める
  • 特別な資格や実績が少ないと難しい
Webメディア
  • Webメディアのライターや監修者、You Tube、SNSでのインフルエンサーとして活動して報酬を得る
コールセンター
  • 企業の福利厚生や民間保険会社の健康相談サービスとして、提供されるコールセンターのスタッフとして働く

またフリーランス看護師として100%業務委託契約のみの仕事をする人もいれば、パート・アルバイト・派遣などの雇用契約による労働と掛け持ちしながら働いている人もいます。

社会保険に加入したりしながら看護師として働くことも可能です。ただし掛け持ちする際は、雇用契約を結ぶ際に副業が禁止されていないか確認しましょう。

フリーランス看護師の働き方事例

実際にフリーランス看護師がどのように働いているのか、事例を紹介します。複数の仕事をかけもちする、時期によって仕事先を変えているなど、働き方に柔軟性が見られます。

働き方の事例①夜勤のある病院・クリニック

病棟勤務を5年間した後、複数の医療機関と夜勤専従の契約で働きました。最近ではコロナ関連のホテル勤務や、重症者病棟を中心に働いています。もともとの勤め先は夜勤メインのため時給は高めでしたが、コロナ関連の高時給の案件が増え全体的な収入が大幅にアップしました。現在はA病院で16時間夜勤を月に7~8回、コロナ専用のBホテルの12時間夜勤を月4~5回しています。休みは月に5~8日と少ないですが、その分収入は増えました。

働き方の事例②トラベルナース

夏は大規模テーマパーク、冬は北海道のリゾートホテルの救護室に看護師として勤務しています。それ以外の時期はトラベルナースやイベントナースとして単発で働き、全国各地を飛び回っています。繁忙期にピンポイントで働く看護師の需要は高いんですよ。寮を完備している医療機関で働けば住宅費も節約できて、全国各地で働けるのも魅力です。

働き方の事例③講師

看護師時代に学んだコーチングとカウンセリングの技術を活かして、コーチングの指導者として会社を設立しました。最近では企業や看護学校でコーチングやカウンセリングの技法を教えたり、オンラインで勉強会を行ったりしています。現場で働くことも好きなので、月に数回は特定の病院で勤務しています。

フリーランス看護師の報酬・待遇事情

フリーランス看護師が受け取る金銭は「給与」ではなく「報酬」といいます。「給与」は雇用契約を結んでいる労働者が雇用者から受け取るものを指すためです。

フリーランス看護師の場合は、雇用契約を結ばず業務委託契約を締結して遂行して「報酬」を得ます。給与と報酬の違いをおさえつつ、フリーランス看護師の年収や待遇について解説します。

フリーランス看護師の年収

フリーランス看護師の年収に関する公的な調査結果は存在しません。こなす仕事の数や仕事ごとの報酬金額によって年収は大きく異なるため、フリーランス看護師の年収に下限も上限もないといえます。

そこで実態の目安として、参考までにあらゆる業種を含めたフリーランス全体の年収調査結果を「フリーランス白書2022」から紹介します。

フリーランス全体の年収

参考:フリーランス白書2022

全体の約半数が400万円未満、全体の約7割が600万円未満と、決して高い水準ではないことがうかがえます。

フリーランス看護師の賞与や退職金

フリーランス看護師の賞与や退職金は原則としてありません。そのため雇用されている看護師と同等かより高い月収であっても、賞与がないことで年収はフリーランス看護師のほうが低くなることもあります。

フリーランス看護師が退職金を用意したい場合は、個人事業主が加入できる小規模企業共済で積み立てるか、iDeCoを活用します。小規模企業共済やiDeCoに加入すると、掛金を小規模企業共済等掛金として所得から控除できるなど節税メリットがあります。

フリーランス看護師の社会保険

一般的なフリーランス看護師の社会保険について下記の表にまとめました。

年金保険 国民年金の第1号被保険者となる
※保険料は全額自己負担
※厚生年金には加入できない
健康保険 国民健康保険に加入
※保険料は全額自己負担で、所得や自治体によって異なる
※傷病手当金や出産手当金は実質なし
雇用保険 なし
※育児休業給付金や介護休業給付金が受けられない点に注意
労災保険 なし
※業務中のケガなどの保障が必要な場合は、自身で民間の保険に加入が必要

ただし、下記の場合は上記の社会保険とは異なるので注意しましょう。

  • 配偶者などの扶養に入る
  • パートやアルバイト先で社会保険に加入する
  • 法人役員として社会保険に加入する

確定申告が必要

フリーランス看護師の場合は、自分で所得を申告して所得税を納税する必要があります。所得には種類があり、給与は給与所得、業務委託でもらっている報酬は事業所得か雑所得として扱われます。

開業届を出していれば事業所得で、出していなければ雑所得です。事業所得や300万円を超える雑所得の場合は確定申告が必要だということを覚えておきましょう。

また、法定帳簿や請求書などの書類を保存する義務もあります。記帳ソフトなどを使って記帳や確定申告を自分で行うことも可能ですが、知識に不安がある場合や多忙でできない場合は税理士に依頼するとよいでしょう。

フリーランス看護師のメリット・デメリット

フリーランス看護師として働くうえで、メリットとデメリットがあることを理解する必要があります。以下でフリーランスのメリット・デメリットについて解説するので、参考にしながら自分にベストな働き方を考えてみましょう。

メリット

  • 働く曜日や時間が自由に決められる
  • 人間関係の悩みが少ない
  • 仕事が選べる
  • 定年がない

フリーランス看護師の大きなメリットは、仕事の内容、働く時間帯、働く場所が自由に選べることだといえます。時間、場所、人間関係に拘束されるストレスが少ないことから、フレキシブルな働き方を目指す人には大きな魅力となるはずです。また、定年がないことから再雇用による収入減少を避けつつ働けるのもメリットのひとつでしょう。

デメリット

  • 収入が安定しにくい
  • 学びの機会が得にくい
  • 責任が大きい
  • 契約や事務処理も自分でする必要がある

まずフリーランス看護師のデメリットとして挙げられるのは、収入が安定しない場合がある点です。任期満了になるたびに仕事を探す必要があり、必ずしも条件に合う仕事が見つかるとは限りません。そのほか社会保険などの保障も手薄なことも収入が安定しない理由といえます。

また指導してくれる先輩看護師などもいないなかで、大きな事故を起こせば損害賠償責任を負うなど、大きな責任にプレッシャーを感じるかもしれません。そのほか、契約内容の確認や社会保険の手続、確定申告などを難しいと思う人もいるでしょう。

フリーランス看護師に向いている人

フリーランス看護師は案件を獲得するところから任務を完遂するまでが仕事です。フリーランス看護師に求められる人間性について解説します。

経験や知識に自信がある人

看護業務について人に教えられるくらいの経験や知識、資格があるなど、根拠のある自信を持っている人に向いています。フリーランス看護師には指導してくれる人がいないため、経験や知識が浅い状態では難しいためです。

判断力があり自律的な仕事ができる人

判断力と自律性を兼ね備えた人は、フリーランス看護師に向いています。指揮命令に従う働き方ではなく、自分の判断で進める働き方を求められるためです。人に方向性を指示されないと仕事を進められない状態では厳しいでしょう。

自己責任という覚悟で働ける人

全て自己責任という覚悟ができる人は、フリーランス看護師に向いています。仕事以外の確定申告や社会保険の手続に抜けや漏れがあったときの責任も自分で負うことが必要だからです。

交渉力やコミュニケーション力がある人

フリーランス看護師には、交渉力やコミュニケーション能力も求められます。業務委託契約を結ぶときには条件交渉が必要になるため、自分のスキルや市場価値を正確に判断し、見合った報酬を得られるように提案する力が欠かせないためです。

また、すでに人間関係ができあがっている職場へ入って仕事をすることもあるため、業務を円滑に進めるためにもコミュニケーション力が大切といえるでしょう。

向上心がある人

フリーランス看護師は、自主的に勉強し続けられる人が向いています。指導者や研修制度がないなかであっても、即戦力で働くための新しい知識やスキルを身につける必要があるためです。常に成長する意欲をもつと、フリーランス看護師としてより活躍できるでしょう。

フリーランス看護師の自由には責任も伴う

フリーランス看護師は、時間や仕事量などを自由に決めることができる働き方です。また実力や条件交渉次第では高収入を掴むことも可能です。しかし自律的な仕事が求められ、仕事内容だけでなく仕事に関連する事務的な作業の責任もすべて自分で負わなければいけない面もあります。
メリットもデメリットも勘案したうえで、経験や知識に自信があり自分の力を試したい看護師は、新しい働き方の選択肢になるでしょう。

参考

フリーランス白書2022|フリーランス協会

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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