看護師としてのキャリアをプラン…
看護師キャリアの給与相場。看護師長・主任は年収アップが望める?
公開日:2022/3/1
最終更新日:2022/3/1
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看護師として働く上で年収・給与に関することは日々のモチベーションや将来設計のためにも、気になるところです。看護師長・主任などのマネジメント職のほかにも専門看護師など、自身が選択するキャリアによってどのくらい給与に影響を与えるのかを解説します。
目次
看護師の平均年収はどのくらい?キャリアで変わる給与
看護師の平均年収は?
看護師の平均年収は厚生労働省の調査(2021年版)によれば、491万8300円(平均年齢41.2歳)となっています。これを分解してみると給与月収は34万円、ボーナスは86万円となります。しかし年収・給与はキャリアによって大きく変化します。そこで看護師長などの管理職や専門看護師、認定看護師など、選択するキャリアによって想定される給与・年収の違いを解説します。給与・年収の相場とキャリアを理解し、今後のキャリアイメージをつかみましょう。
看護師の業務と給与体系
看護師の仕事の特徴は日勤夜勤、早番遅番、長日勤などの変則的なシフト勤務であることです。その分、夜勤手当、深夜勤務割増給の支給があります。しかし、基本給が安く、残業手当や資格手当などが占める割合が高いため、夜勤をしていないと総支給額からみると基本給の割合が少ない傾向にあります。また、主任や師長などの管理職では管理職手当がつくかわりに、条件が合わなければ時間外勤務手当や休日勤務手当が出ないため、「管理者になる前の方が給与は良かったのに、仕事は増えた」という状態が起こっていることも少なくありません。看護師の職場は女性が多く、結婚・出産・子育てなどによって夜勤のない職場を選ぶために、転職や非常勤への切り替えなどによって給与が下がる傾向もあります。スタッフが多いかわりに役職のポストが少なく、昇格する機会が少ないために昇給額が低いともいわれています。
看護師の賃金は2022年10月から3%引き上げ
「看護師の仕事は責任に比べて見合っていない」という声も多く聞かれます。そこで2021年に岸田文雄首相は看護師らの賃金引き上げに関して「看護は来年2月から1%、10月から恒久的に3%引き上げる」と発言しました。そこで、実際看護師は今の給与に対してどう感じているのかリサーチしました。
今の給与で満足は約33%。給与はいくら増えれば満足する?
実際に働いている看護師は現在の給与についてどう考えているのでしょうか。ナース専科のアンケートで「看護師としての自身の経験やスキルに対して現在の給与額の満足度はどのくらいだと考えますか?」と聞いたところ、「給与の現状に満足」は約33%(すごく満足している2.82 %+どちらかといえば満足している29.82%)となりました。さらにその不満を抱える看護師に「現実的にどのくらい年収額がプラスされれば満足するか」を聞いたところ、現在の年収に「50万円プラスされれば満足」と回答した人が一番多くいました。
ナース専科調べ(2021年9月29日/有効回答数:674)
年収額はどれくらいアップすれば満足か
Q2:「給与額に不満がある」と回答した方に質問です。現実的にどのくらい年収額がプラスされれば満足すると考えますか?
1位/年収+50万(28.43%)
2位/年収+100万(26.09%)
3位/年収+30万(17.06%)
4位/年収20万(14.38%)
5位/年収+10万(14.05%)
現状の年収にプラス50万円という額は、月で考えると約4万円プラスという計算です。これくらい増えれば、自由に使えるお金が使え、貯金もでき生活にも余裕ができるようになると想像できるでしょう。しかし、これ以上増えると仕事がさらに忙しくなる、資格勉強や見合った成果など期待されるものが大きくなるかもしれないため、これ以上は求めないという思いも考えられます。病院や施設では診療報酬という固定的な収益の中で人件費を支払っているため、その上限が決まっているという認識もあるかもしれません。
看護師キャリアと給与はどう連動するのか
看護師の賃金モデル
病院で働く看護師の賃金モデルを2つ紹介します。日本看護協会では、以下のように3つのキャリアコースに区分して評価、処遇する「複線型等級制度」というものを推奨しています。
引用:看護職の キャリアと 連動した賃金モデル ~多様な働き方とやりがいを支える評価・処遇~(日本看護協会)
複数の職群と個々の貢献に応じた等級を組み合わせることで、看護師の多様な働き方や貢献に見合った処遇の確保を図ることができるのが特徴です。
・専門職群
非管理職の一般職員
・管理・監督職群
主任以上の看護管理者
・高度専門職群
専門看護師、認定看護師、特定行為研修修了看護師の資格や高度な能力を活かして組織に貢献している職員
また、多くの病院で取り入れているクリニカルラダーを賃金処遇と連動、人事評価制度と一体化させていくことも期待しています。こうした賃金モデルについて、自分が働く職場、または転職を考えている職場ではどのような仕組みがあるのか、確認できるといいでしょう。
キャリアプランは大きく分けて3つ
看護師のキャリアを考えるうえで、専門分野を極める「スペシャリスト」、幅広い分野で活躍する「ジェネラリスト」、組織管理や教育を行う「マネジメント」(管理職)という大きく3つのパターンが考えられます。
スペシャリスト
認定看護師や専門看護師に代表される、特定の領域や専門分野を深め専門性を発揮する看護職。近年は転職などを通して複数の組織で活躍することで専門的な知識・技術を磨き、スペシャリストを目指すキャリア形成を志向する人たちが増えてきています。
ジェネラリスト
特定の領域・分野にかかわらず、その場に応じた幅広い知識や高い技術力の習得を目指し、現場の第一線で領域横断的に活躍する看護職。専門分化した現場において、スペシャリストの専門性を十分に発揮するためにはジェネラリストの存在は必要不可欠です。
マネジメント(管理職)
業務が円滑に進むことで最良の看護が提供できるように看護部や組織の管理・運営を担う看護職。関連する資格として、日本看護協会が認定している認定看護管理者という資格があります。病院や介護老人保健施設の副院長・看護部長をはじめとする管理者、訪問看護ステーションの所長など、病院内外で活躍の場を広げています。
賃金水準からみると、マネジメント層は基本給が高くなる傾向にありますが、その分任される仕事の多さや責任は増えることになります。認定や専門看護師などのスペシャリストでも手当が出るところもありますが、場所によって待遇には違いがあります。看護という職業内で専門分化が進むなか、自分の興味があること、やりたいことと、処遇が見合ったところで働けるように、今後のキャリアを考えていくことが大切です。
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一年目の新人からマネジメント層(管理職)の給与相場の平均
まずは、日本看護協会の報告をもとに新人看護師の初任給の平均からみていきましょう。(2020年版)
・高卒+3年課程卒の新人看護師
基本給与平均:202,289円
税込給与総額平均:262,277円
・大卒の新卒看護師
基本給与平均:208,918円
税込給与総額平均: 270,292円
・勤続10年の看護師(31~32歳、非管理職)
基本給与平均: 244,587円
税込給与総額平均:318,916円
3年課程卒と大卒で給与は変わる
こうしてみると、3年課程卒と大卒では月の基本給与で6,600~8,000円ほどの差があることがわかります。最終学歴によって基本給の基準から違いがあることも、頭に入れておきましょう。
看護師のマネジメント(管理職)の給与の平均
「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」では、管理者の賃金水準を以下のようにまとめています。
役職 | 基本給与平均(月額) |
---|---|
看護部長相当職 ※専任 (平均年齢:56.7歳) |
427,573円 |
副看護部長 (平均年齢:54.1歳) |
405,373円 |
看護師長相当職 (平均年齢:54歳) |
370,949円 |
副看護師長 (平均年齢:51.3歳) |
350,882円 |
主任 (平均年齢:50.1歳) |
327,143円 |
非管理職 (平均年齢53歳) |
323,298円 |
看護部長については病院規模が大きな施設で給与がより高い傾向にありました。
専門看護師・認定看護師の給与の平均
専門看護師・認定看護師の賃金は、基本給与平均は325,692円(平均年齢43.9歳)。賃金表の等級や号俸をあげる、上位職の資格等級に昇格させるなど賃金表情で評価していない、かつ手当のない施設は専門看護師で61.4%、認定看護師で54.8%でした。手当がある施設はそれぞれ専門看護師で17.7%、認定看護師で22.0%であり、平均は専門看護師で10,832円、認定看護師で9,773円でした。これらの資格保持者には資格相応の賃金処遇が期待されます。
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看護師の給与は様々な要素で決まる
賞与や夜勤手当の相場
基本給が安くなりがちな看護師の年収のなかで、賞与や夜勤手当が占める割合は決して低くありません。給与に大きく影響してくる、賞与や夜勤手当の相場についても確認していきましょう。
・賞与
産休、育休など休業中を除く2012年度の賞与総額は平均998,271円で80~100万円未満が19%と一番多い結果になりました。
・夜勤手当
22時~5時までの深夜時間帯の割り増し賃金を除いた額を紹介します(2020年度版)。
・三交代
準夜勤平均手当4,154円
深夜筋平均手当5,122円
・二交代
平均手当11,286円
夜勤手当の平均は10年前よりやや増加傾向にあります。
働く場所
看護師の資格があって働く場所はさまざまです。例をあげるだけでもこれだけあります。
- 病院、診療所(クリニック)
- 保健所・市町村
- 看護師等養成所
- 居宅介護支援事業所・通所介護事業所
- 介護老人保健施設・指定介護老人福祉施設
- 訪問看護ステーション・看護小規模多機能型
- 健診
- 保育所
- 企業
働く場所によっては、夜勤がないところ、シフト制ではないところもあります。そのために病院と比べて給与が下がるところもあるため、注意が必要です。
勤務形態
勤務形態には、大きく分けて正職員と非常勤があります。
・正職員
夜勤ありの常勤、日勤のみの常勤、夜勤専従、時短勤務、週4常勤
・非常勤
パートや派遣。非常勤の場合には日給や時給で計算されることもある
役職などの立場
管理者として主任、副看護師長、看護師長、副看護部長、看護部長などの役職の他に、認定看護師や専門看護師などの専門性の高い看護師などの処遇も関係してきます。
目先の給与にとらわれないことも大切
「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」では、現在の職場から離職を考えている理由に賃金に対する「不満がある」としたのは66.3%で、「不満はない」が33.3%であることがわかりました。働く上で給与は職場選びのポイントのひとつではありますが、目先の給与にだけとらわれないように気を付けましょう。例えば、手当がたくさんあり、月給としては高くても、基本給やボーナスが少ないということもあります。給与がよくても人手不足で残業ばかりであれば、過酷な環境で心身共に疲弊してしまうかもしれません。将来を見据えて自分がやりたいこと、自分にとって大切な条件、どう働いていきたいかなどを総合的に判断することで、自分なりの働き方をイメージできると思います。そのために今回紹介したデータを参考にしてみてください。
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引用・参考
1)看護職のキャリアと連動した賃金モデル ~多様な働き方とやりがいを支える評価・処遇~(日本看護協会)
2)2020年 病院看護実態調査(日本看護協会)
3)2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書
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この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。