スペシャリストとジェネラリスト。看護師キャリアの2つの選択肢を解説

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看護師としてのキャリアをプランニングする際に重要な「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」という2つの選択肢。それぞれの定義・役割の違いから、どんな人に適正があるのかまで解説。さらに資格の種類や看護師としてのキャリアプランの具体例まで紹介します。

看護師における「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」とは?

看護師としてキャリアをプランニングする際に多くの看護師が最初に迫られるのが「スペシャリストとジェネラリストのどちらを選ぶのか?」ということではないでしょうか。

スペシャリストとジェネラリストは特定の専門領域があるか、という違いはありますがどちらも看護の専門家です。その違いを大きく分けると「得意な分野を追求したいならスペシャリスト」、「幅広く学びたい・経験したいのであればジェネラリスト」と考えてみるとよいでしょう。現場では、ジェネラリストは看護のなかで主要な役割を担っているため、大部分の看護師はジェネラリストとして活動しています。

「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」のどちらを目指す?

ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:304)

Q:将来的に想定しているキャリアイメージを教えてください

1位/ジェネラリスト(様々な分野の知識と経験をもち現場で活躍する)(25.55%)

2位/スペシャリスト(認定看護師、専門看護師など)(23.36%)

3位/その他(17.52%)

4位/マネジメント(看護部長や認定看護管理者など、病院内での管理職としてのキャリアアップ)(11.68%)

5位/研究職(大学院への進学)(9.49%)

6位/独立(フリーランスなど)(6.57%)

7位/起業(5.84%)

ナース専科調べ(2021年12月29日/有効回答数:109)

入職2年目以上の看護師にアンケートをしたところ、「キャリアにおける明確な計画はありますか?」との問いに「ある」と回答したのは35%。あると回答した看護師に「将来的に想定しているキャリアイメージ」を聞いたところ、ジェネラリストを目指す看護師が25%と一番多い結果となりました。看護におけるスペシャリストとジェネラリスト、それぞれの役割の違いを理解したうえで、自分が目指すべきこれからのキャリアを考えてみましょう。

看護師のスペシャリストとジェネラリストの違いを解説

スペシャリストとジェネラリストの2つのキャリアにどんな違いがあるか、定義を解説します。

スペシャリストの定義は?

日本看護協会によると、スペシャリストは以下のように定義されています。

スペシャリストとは、一般的に、ある学問分野や知識体系に精通している看護職をいう。特定の専門あるいは看護分野で卓越した実践能力を有し、継続的に研鑽を積み重ね、その職務を果たし、その影響が患者個人に留まらず、他の看護職や医療従事者にも及ぶ存在であり、期待される役割の中で特定分野における専門性を発揮し、成果を出している者である。

引用:看護にかかわる主要な用語の解説 ―概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈―(日本看護学会)

スペシャリストは「専門看護師」と「認定看護師」の2種類存在する

看護師の仕事は複雑かつ高度な特殊業務が増加傾向にあり、専門性の高い看護師が早急に求められるなか現在の専門看護師(CNS)が作られました。しかし、当時は専門看護師になるために必要な看護系大学院の修士課程が少なかったこともあり、大学院修士課程を修了していなくても認定看護師教育機関の課程を修了すればなれる認定看護師(CN)が作られました。こうしてスペシャリストとしての専門看護師と認定看護師という位置づけとなりました。

種類1:専門看護師

専門看護師は、資格取得の条件として実務経験が5年以上(うち3年間以上は専門分野)であること・看護系大学院修士課程修了者であることが挙げられています。また、資格取得後も5年ごとに更新審査を受ける必要があります。出産や病気などの場合は更新審査を延長できますが、基本的には資格取得後も絶えず専門分野での活動を継続することになります。専門看護師は現在全国に2,714人。がん看護専門看護師が937人と一番多く、次いで精神看護専門看護師が364人、急性・重症患者看護専門看護師が312人となっています。(2021年9月23日現在)

種類2:認定看護師

認定看護師は、資格取得の条件として専門看護師と同様に実務経験が5年以上(うち3年間以上は認定分野)であること・認定看護師教育機関の課程を修了していることが挙げられています。また、看護実践と自己研鑽の実績についての書類審査を通して5年ごとに更新するのも専門看護師と同じです。認定看護師は現在全国に20,673人。感染管理認定看護師が2,824人と一番多く、次いで緩和ケア認定看護師が2,495人、皮膚・排泄ケア認定看護師が2,272人となっています。(2021年9月23日現在)

日本看護協会によると、ジェネラリストの定義は以下のようになっています。

ジェネラリストとは、特定の専門あるいは看護分野にかかわらず、どのような対象者に対しても経験と継続教育によって習得した多くの暗黙知に基づき、その場に応じた知識・技術・能力を発揮できる者をいう。

引用:看護にかかわる主要な用語の解説 ―概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈―(日本看護学会)

ジェネラリストはさまざまな領域に対応できる実践能力の高い看護師として、組織のなかで長く通用するために、ローテーションにより多くの領域を経験させ、知識や技術を修得させることも行われています。スペシャリストが担う役割が専門分化していくなかで、各領域のスペシャリストの能力を十分に発揮しつつ看護ケアの質を高めるジェネラリストの存在も大きくなっています。

「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」のそれぞれの適正

スペシャリスト

スペシャリストは「その分野が好きだ」という気持ちを持ち、学び続けたいというモチベーションがあるというのが必要な適性です。また、スペシャリストとしてのキャリアの選択をするためには専門領域で継続して勤務することなど様々な条件があります。

ジェネラリスト

ジェネラリストには、様々な分野の知識や経験やその時々の環境に適応して適切な看護ができる柔軟性が求められます。幅広い患者特性の看護経験が必要になるため、多様な経験を積んでスキルを磨く必要があります。

キャリアプランをケーススタディで解説

スペシャリストとジェネラリストの役割の違いについて、実際にどのようなキャリアプランがあるのか、4人の看護師さんの事例を紹介していきます。スペシャリスト、ジェネラリストとしての道を選んだきっかけやその後の行動について参考にしてみてください。

スペシャリストのキャリアプラン

Aさん(皮膚・排泄ケア認定看護師)の場合

外科病棟で多くのストーマ管理をしていたことや褥瘡委員会に入っていたことから、皮膚トラブルの勉強にハマりました。看護師であれば、病院以外のどこで働いていても皮膚ケアには関わるもので需要が高いと考え、看護師10年目で褥瘡のトータルマネジメントを行う皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)になりました。現在は、専門部署2名体制で活動しています。日勤メインの勤務です。各部署であげられた皮膚トラブルハイリスク患者、褥瘡発生報告をもとに発生要因をアセスメントし、不足しているケアのアドバイス、NST回診、医師や栄養士、薬剤師、理学療法士など他職種との調整などを行っています。また定期的に院内勉強会も開催しています。

Bさん(急性・重症患者看護専門看護師)の場合

新卒からオペ室、救急外来で働き、より専門性を持ってクリティカル領域で働きたい、そして管理者としてもキャリアアップしたいと考え、看護師13年目で急性・重症患者看護専門看護師となりました。現在はICUで主任として勤務しています。重症患者さんの全身ケア全般、患者家族の精神的ケアや意思決定支援、看護師の困りごとへの支援、重症患者サポートチーム活動などを行っています。また、研究発表やフィジカルアセスメント研修や看護学校への講義など、教育・指導も計画的に進めています。現在は院内救急対応チーム(RRS:Rapid Response System)の立ち上げ準備中です。

働くなかで「この分野が好き」「もっとこの分野を勉強したい」と気づくきっかけがあり、今後のキャリアを見据えたうえで専門看護師や認定看護師の資格を使っていることがわかります。資格取得がゴールではなく、その先にどうなりたいかをイメージできることがポイントとなりそうです。

ジェネラリストのキャリアプラン

Cさん(総合内科病棟勤務)の場合

私は感染症やリウマチ・膠原病、代謝・糖尿病、腎臓疾患の患者さんをみる総合内科病棟で勤務しています。看護師5年目のときに外科も内科もみられるようになりたいと思い、外科病棟から希望を出して異動しました。混合病棟のため、AチームとBチームで診療科はわかれますが、定期的にチーム替えがあるため、さまざまな疾患の患者さんの看護を幅広く学んでいます。8年目にしてチームリーダーと教育担当も兼任。新人看護師とチームマネジメントのサポートをしています。病棟には糖尿病療養指導士(CDE)の資格を持つスタッフがいるため、ケアの相談や定期的に勉強会の開催なども進めています。

Dさん(病棟から外来勤務)の場合

看護師9年目です。長らくこども病院の病棟で働いていましたが、出産を機に一時日勤のみの外来へ異動しました。現在は夫がリモート勤務のため病棟に戻り、月に数回は夜勤や外来にも入っています。術後、長期入院後の通院や生活指導のフォローなど、病棟での看護の延長として関わっています。病棟には小児プライマリケア、新生児集中ケアの認定看護師、助産師が在籍しているため、チーム内で解決できないことはよく相談しています。今後、病院に在宅支援病棟の開設予定で、立ち上げスタッフとして準備中です。

外科と内科の経験、かたや病棟と外来の経験をもとに、新人教育や新しい部署の立ち上げなど柔軟性が求められるポジションとなった二人。これまでの経験をうまく組み合わせて何ができるのかを考え、自ら発信していけるようになると、自分の強みとして他にはないアピールポイントとなりそうです。

自身のキャリアをプランニングしよう

スペシャリストとしては専門看護師や認定看護師として働く道がイメージしやすいかもしれませんが、資格の種類や専属として働く道はさまざまあります。スペシャリストとしてその分野を極めようと思っても、その後経験を積んでいくなかでジェネラリストとして切り替えることもあるでしょう。また、反対にジェネラリストとしてさまざまな場所で経験を積んでいくなかで、興味のある分野に出会うこともあります。スペシャリストは看護現場に限らず、看護に関係する倫理的課題への取り組みや、看護研究・看護教育といった学問的な貢献も視野に入れたキャリアを想定できます。

一方ジェネラリストは、領域横断的な知識と経験で、多職種や各専門領域をつなぎ、臨床現場での円滑な看護ケアに向き合っていくキャリアプランを想定できます。病院だけでなく、在宅や学校、企業など、看護師として働く場所もキャリアの選択肢も広がってきています。スペシャリストとジェネラリストそれぞれの特徴をもとに今後のキャリアプランを考えるうえでこの記事を参考にしてみてください。

引用・参考

1)田村恵子:ジェネラリストとがん看護専門看護師が紡ぐケア,日本看護研究学会雑誌,32(2):127,2009
https://www.jsnr.or.jp/meeting/docs/34_04.pdf
2)看護にかかわる主要な用語の解説 ―概念的定義・歴史的変遷・社会的文脈―(日本看護学会)
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/guideline/yougokaisetu.pdf
3)専門看護師(Certified Nurse Specialist)とは(日本看護協会)
https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns
4)認定看護師(Certified Nurse)とは(日本看護協会)
https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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