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特定機能病院とは?病床数や要件、役割、一般病院との違いは?看護師として働くメリットやデメリット
公開日:2021/9/28
最終更新日:2023/11/21
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「大きな病院で働いてみたい」「高度な医療環境で働きたい」という方は、特定機能病院への転職も視野に入れているのではないでしょうか。しかし、病院の規模や知名度だけで転職先を選んでしまうと、「理想と違う」と後悔することもあります。今回は、特定機能病院の特徴・適性・転職する際の注意点についてお伝えします。
特定機能病院ってどんなところ?
「大病院」のイメージが強い特定機能病院は、転職先として人気の職場です。特定機能病院への転職を本気で考えている方は、実際にどのような医療機関なのか、一般病院と何が違うのかを理解しておきましょう。
特定機能病院とは
特定機能病院は、医療提供体制や設備などの要件を満たし、厚生労働大臣の承認を受けた医療機関です。高度医療を提供する病院と地域の一般病院・診療所(かかりつけ医)を区別し、医療機関の機能分化を図るため、平成5年に「特定機能病院制度」が制定されました。
制度の目的である「機能分化」とは、医療機関の機能・役割を明確にし、病気の種類や程度に応じて患者さんを適切な医療機関に振り分けることです。これによって、発熱・腹痛・軽いケガなどの軽症患者さんは地域のかかりつけ医へ、一般病院では対応できない重症患者さんや珍しい症例の患者さんは、紹介制によって特定機能病院へと振り分けられるようになりました。
なぜ、このような機能分化が必要なのでしょうか?
例えば、「設備の整った大病院で治療してほしい」と、発熱・腹痛などの軽症患者さんが特定機能病院に殺到したとします。すると、本来特定機能病院で治療すべき人(重症患者さんや指定難病の患者さんなど)が、適切な医療を受けられない可能性が出てきます。
特定機能病院は、そこでしか提供することのできない「高度医療」「先進医療」を、それを必要とする患者さんに提供するための医療機関です。さらに、「高度医療技術の開発・評価」「高度医療に関する研修」など、研究・教育機関としての役割も担っており、一般病院とは機能・役割に明確な違いがあります。
平成31年4月1日時点で、全国の86病院(そのうち大学病院本院は79病院)が特定機能病院の承認を受けています。
特定機能病院の役割は高度な「医療」「研究」「教育」「安全管理」
特定機能病院は厚生労働大臣の承認を受けた医療機関であり、求められる役割は次の4つです。
1.高度医療の提供
2.高度医療技術の開発・評価
3.高度医療に関する研修
4.高度な医療安全管理体制
さらに、承認を受けるにはさまざまな要件を満たす必要があります。多数ある承認要件の中から、代表的なものを一部ご紹介します。
特定機能病院の承認要件
●400床以上の病床数を有すること
●医師の配置は通常の2倍以上、かつ配置基準の半数以上が専門医であること
●看護師の配置は入院患者数÷2(入院患者数の1/2)
※一般病院は入院患者数÷3(入院患者数の1/3)
●集中治療室、無菌病室、医薬品情報管理室があること
●医療安全管理体制の整備
●原則定められた16以上の診療科を標榜していること
参考)厚生労働省 特定機能病院の概要
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137801.html
このように、特定機能病院は厳しい基準をクリアした医療機関です。充実した医療設備・安全管理体制と、高度な医療知識・技術を持つ医療専門職がそろう、医療水準の高い職場だといえるでしょう。
特定機能病院で働くにはどうすればいい?どんな人が向いてる?
高度医療・先進医療を専門とする特定機能病院への転職は、一般病院に比べると狭き門といえます。そのため、「大病院だから」という単純な志望動機では選考を通りにくく、転職できたとしても理想と現実にギャップを抱いてしまうかもしれません。特定機能病院で何を学びたいか、どのような看護をしたいかなど、「特定機能病院で働く目的・意志」を明確にしておきましょう。
特定機能病院では、充実した医療設備や、優れた医療専門職に囲まれて働くことができます。裏を返せば、それに見合った知識・技術がなければ、仕事について行けない可能性もあるのです。そのため、特定機能病院で働くのは学ぶことに貪欲な人・成長するための努力を怠らない人が向いているといえそうです。
常に向上心を持ち、スキルアップに余念のない人は、高い専門性を持つ医療スタッフの中でも気後れすることなく実力を発揮できるでしょう。
また、特定機能病院は認定看護師や専門看護師の育成にも協力的です。職場のバックアップを受け、働きながら資格を取得するのも夢ではありません。専門分野を極めたい・スペシャリストを目指したい方は、特定機能病院への転職を視野に入れてみるとよいでしょう。
ネームバリューだけでなく職場の情報を十分吟味しよう
特定機能病院で働くことは、知名度の高さ・医療水準の高さ・一般病院では診ることのできない珍しい症例を経験できるなど多くのメリットがあります。しかし、ネームバリューだけで転職先を決めてしまうのは非常に危険です。
職場環境や収入面については、実際に働いた人のクチコミを確認したり、転職サイトで情報を集めたりして十分なリサーチを行いましょう。そのうえで、ご自身のキャリアプランや理想の働き方にマッチする職場を見つけることが大切です。
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この記事を書いた人遠藤愛(えんどうあい)
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関東の病院で外科・内科・地域包括ケア病棟、地域連携室に勤務。
その後、介護施設、訪問看護に従事。看護学校での外科看護臨時講師の経験あり。