HCU看護師になりたい人必見!看護の特徴や適性について解説

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HCUでは、重症患者さんのケアをはじめとして様々な経験ができるため、看護師としての成長ややりがいを感じることができます。看護師としてのキャリアを積む上でぜひおすすめしたい勤務部門ですが、「どのようなところかわからない」「看護が難しそう」「何か資格が必要なのでは?」というイメージを持つ人も多いかもしれません。

この記事では、HCUにおける看護の特徴やHCU看護師として働くために必要な適性などについて解説します。

HCUとは

HCUは「High Care Unit」の頭文字をとったものであり、日本語では「高度治療室」や「準集中治療室」と訳されます。患者さんの重症度・看護必要度から考えると、ICUと一般病棟の中間にあるのがHCUだといえます。そのため、HCUで対応するのは、ICUで管理するほど重篤な状態ではないけれど一般病棟で過ごすには危険が大きいという患者さんです。

具体的には、侵襲の大きい手術後・心筋梗塞など重篤な疾患の回復期・何らかの原因によって心肺機能が低下・脳出血や大動脈解離などによる出血予防などの患者さんを受け入れます。つまり、“現状安定しているように見えても、いつ全身状態が悪化するかわからない”患者さんを看護する場所なのです。

またHCUでは、看護師の他にも医師・薬剤師・リハビリテーションのセラピスト・栄養士・臨床工学技士・ソーシャルワーカーなど、様々な職種が協力して患者さんのケアにあたります。

HCUとICUの違い

日本集中治療医学会によると、ICU(Intensive Care Unit:集中治療室)は「集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、ならびに生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療単位」と定義されています。つまり、絶えず厳重なモニタリングが必要な、時には生命維持装置が手放せないような、重篤な患者さんを対象としています。

一方のHCUでは、重篤な状態を脱した患者さんを対象とするため、“患者さんの重症度”に違いがあるといえます。そのため、看護配置はICUが患者さん2名に対し看護師1名、HCUが患者さん4名に対し看護師1名となっています。ただし、ICUを設置していない・ICUの病床が足りないなどの場合では、本来ICUの対象となるような重症度の高い患者さんをHCUで受け入れる場合もあります。

また、“患者さんの多様性”にも違いがあります。ICUの患者さんは重篤な状態で床上安静ですが、HCUの患者さんの重症度は様々で歩行可能な人もいます。そのためHCUでは、多様な状況の患者さんに対応することが必要になります。

HCUにおける看護の特徴

HCUにおける看護の特徴として大きなものは、「対象者の幅広さ」だといえます。HCUの患者さんに共通するのは“いつ急変してもおかしくない”ことのみで、疾患の種類やADL(日常生活動作)の状況などは千差万別です。

そのため、“いつ急変してもおかしくない”ということ念頭に置いて、緊張感を持ちつつ患者さんの状態に合わせた個別の対応が求められます。人工呼吸器を装着している患者さんの全身管理も、ADLが自立している患者さんへの教育的かかわりも、HCUには混在しています。

また、ICUでは生命を維持することに主軸が置かれていますが、HCUではそれに加えて患者さんが日常生活へ戻っていくことを支援するという視点が必要になります。そのため、心身の状態と生活の状況を細かくアセスメントし、“安全かつその人らしい生活を送るためにはどうすればいいのか”を追求する必要があります。

さらに、身体的な援助だけではなく、心理的なケアも重要になります。生命の危機状態にあり、HCUという特殊な環境に置かれた患者さんや家族は不安が強く、時には一時的な認知障害に陥ることもあります。そのような場合にも安心・安全に過ごせるような関わりが求められます。

そして多くの場合、HCUの患者さんは入れ替わりが激しいため、一人の患者さんに関わる期間があまり長くないという特徴もあります。限られた時間の中で患者さんと信頼関係を築き、目標を共有して看護実践することが必要になります。

HCU看護師になるためには

HCU看護師になるために、特別に必要な資格はありません。新卒で配属されることもあり得ます。幅広い対象者に応えるための学習ができ、急変と隣り合わせの状況に耐えられる力があれば、誰でもHCU看護師になることが可能だといえます。

一方で、HCU看護師として働くことに役立つのは、BLS(Basic Life Support:一次救命処置)やACLS(Advanced Cardiovascular Life Support:二次心肺蘇生法)の研修受講・ 急性期看護や全身管理に関するセミナーへの参加などです。また、HCU看護師としてスペシャリストを目指すのであれば、クリティカルケアの認定看護師や急性・重症患者看護の専門看護師を取得し、さらに専門性を高めることも良いでしょう。

HCU看護師に必要な適性

HCU看護師には、患者さんの異変を速やかにキャッチし、急変にいたらないように対処することが求められます。また、多忙で緊張感の強い環境の中でも心身の健康を保ち、学び続ける姿勢が必要です。

勘が鋭い

患者さんが急変するサインは、時にとても微細なものです。HCU看護師には、どれほど小さなサインも見逃さず、「何かおかしい」と感じ取ることが求められます。その時点でうまく言語化できなくても構いません。とにかく違和感を見逃さない勘の鋭さが必要なのです。

「何かおかしい」を捉えたら、患者さんに何が起こっているのかを多角的にアセスメントします。

スピード感がある

HCUにいる患者さんの状態は、急激に変化する可能性があります。少しの時間的ロスが予後に影響する場合も皆無ではありません。そのためHCU看護師には、判断や処置をスピーディーに行うことが求められます。正確なアセスメントに基づいて速やかに意思決定できる・スピード感のある処置も安全に実施できるという人には、適性があるといえるでしょう。

心身がタフ

HCUでは、様々な状況の患者さんが常に入れ替わるために多忙です。そのうえ、急変など予定外のできごとが起こることも少なくなく、業務がスムーズに進まない場合もあるため、過重労働になりがちです。

また、患者さんの急変と隣り合わせの環境では緊張感やプレッシャーが強く、救えない患者さんもいるために悲しみや無力感を味わうこともあります。このように心身へのストレスが強い状況の中でも、自分のコンディションを乱さないタフさがあれば、HCU看護師として活躍が期待できます。

学習意欲が高い

HCUでは、対象となる患者さんの疾患が限定されないので、様々な疾患の知識が必要になります。また、全身状態をアセスメントするための知識・多くの医療機器を扱うための知識なども、幅広く求められます。そのことを負担というだけではなく、成長の機会として前向きに捉えられる人ならば、HCU看護師として多くのスキルを身につけることができるでしょう。

HCU看護師はスキルアップの宝庫!適性がある人はぜひチャレンジを

HCUは、幅広い患者さんへの対応・急変と隣り合わせの環境であるため、そこでの看護は生易しいものではありません。ですが、だからこそ様々な経験ができるために、看護師として多くのスキルを身につけることが可能な場でもあります。そして、生命の危機状態を脱した患者さんを見送ったときには、大きな喜びと達成感を味わうことができます。

HCU看護師になるために、特別な資格やキャリアは必要ありません。患者さんの小さな変化を捉えることに自信がある・スピード感のある対応が苦手ではない・とにかく頑丈・看護師として成長したいと思っている人などは、ぜひHCU看護師にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。HCU看護師として身につけたスキルは、その後どんな分野に進んでも間違いなく役に立ちます。

この記事を書いた人
美沢藍
看護専門学校卒業後、総合病院で10年間勤務勤務した診療科は心臓血管外科・泌尿器科・整形外科・婦人科・放射線科など。
看護学修士課程への入学を機に退職し、在学中は複数の施設でのアルバイトを経験修士課程修了後、総合病院看護師・看護大学教員として勤務、出産を機に退職。

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