ナースコールは誰が取るもの? …
看護師を辞めたい。迷ったときの判断基準と対処法を解説
公開日:2022/3/17
最終更新日:2022/3/17
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人間関係や忙しさから「看護師を辞めたい」と感じたことや、転職を検討したことがある人もいるでしょう。では実際に辞めたいと思ったときはどうすればよいのでしょうか。辞める・辞めないの判断基準や辞めるデメリット、対処法について解説します。
目次
看護師を辞めたい人は多い?その理由は?
看護師を辞めたいと思った経験がある人は多くいます。「辞めたい」という気持ちになることは決して特別なことではありません。
ではどのくらいの人が辞めたいと思った経験があるのか、どんな理由で辞めたいと思うのか、看護師への調査結果を交えつつ解説します。
看護師を辞めたいと思ったことがある人の割合
ナース専科の調査では、看護師を辞めたいと考えたことがある人の割合は73%でした。およそ、4人のうち3人は看護師あるいは仕事を辞めたいと思っているようです。
※ナース専科調べ(2022年8月05日/有効回答数:300)
2017年に日本医療労働組合連合会が33402人の看護職員を対象におこなった「看護職員の労働実態調査」でも、74.9%の人が仕事を辞めたいと回答しており、ほぼ一致する結果となりました。
またナース専科がおこなった調査結果から、現在の職場から転職・離職したいと考えている人の割合が約67%にものぼることがわかりました。
※ナース専科調べ(2022年8月05日/有効回答数:300)
「看護師を辞めたい」「現在の職場から離れたい」と多くの看護師が思ったことがあり、現在もそう思いながら働いている看護師は少なくありません。
辞めたい理由とストレス
転職や離職を検討した理由を質問したところ、1位は「人間関係」でした。そのほか業務自体の多忙さ、残業の多さ、夜勤の負担などが肉体的な負担が理由として挙がっています。
また「結婚のため」「出産・育児のため」といった、ワークライフバランス実現の難しさや、キャリアややりがいの追及も辞めたいと考える要因になっているようです。
個人の問題というよりは、看護師を取り巻く環境によって「辞めたい」と思っている人が多いことが考えられます。
人間関係のストレス
看護師が日々感じるストレスの理由第1位は仕事の責任の大きさでしが、2位以降で人間関係に関する回答が数多くランクインしていました。
転職や離職を検討した理由として人間関係が1位になるのも納得できる結果です。人間関係のストレスとひとことでいっても、上司・同僚・患者さん・先輩など多方面での人間関係に悩んでいることがうかがえます。
忙しさのストレス
また看護師が日々の業務についてどのように感じているかを調査したところ「すごく忙しい」が44.7%「少し忙しい」が26.3%と、現役看護師の7割以上の人が忙しさを感じていることがわかりました。
忙しさから身体的な負担を感じやすく、結婚生活や妊娠・出産・育児などとの両立にハードルを感じて辞めたくなる看護師も多いでしょう。
辞める・辞めないの判断基準
辞める・辞めないの判断基準は、辞めたあとに後悔するかしないかを想像して考えましょう。離職・転職の理由によっては、辞めたあとに後悔することもあります。
ではどのような理由なら後悔のない離職や転職ができそうなのか、辞めて後悔しやすい理由・後悔しにくい理由の例を紹介します。
辞めて後悔する可能性が高い例
下記のような理由で辞めると後悔する可能性が高いでしょう。
- 業務内容がよくわからないから辞めたい
- コミュニケーションがうまく取れないから辞めたい
- ミスをして怒られるのが嫌で辞めたい
これらの理由は、努力や経験次第で改善する可能性が十分あるからです。すぐに辞めるのを決断するのではなく、真面目に取り組んでいれば時間が解決してくれると、楽にかまえる姿勢も大事かもしれません。
辞めて後悔する可能性が低い例
次のような理由であれば、辞めても後悔する可能性は低いでしょう。
- すでに心身に不調をきたしているから辞めたい
- 今の職場でワークライフバランスを実現できる見込みがないから辞めたい
- スキルアップ・キャリアアップのため辞めたい
無理を続けて身体や心を大きく壊す前に辞めるのは悪いことではありません。
また、異動の希望が通らない、結婚や育児などプライベートへの配慮がまったくないなど、長く働き続けるのが難しい環境だと判断した場合は、転職することで改善される可能性があります。
さらにスキルアップなど前向きな目標がある場合も、自分の理想とする看護を実現できる職場に転職できれば後悔はしないでしょう。
看護師を辞めるデメリット
看護師を辞めるデメリットとしては、主に次のようなことが挙げられます。
- 収入が下がる可能性
- キャリアの中断
- 辞めたい原因の解決にならない
「辞めたい」という気持ちでいっぱいになっていると、デメリットに目が向きにくくなります。収入面やキャリア面でマイナスになる可能性も考慮しつつ、離職や転職が本当の問題解決になるのかを冷静に考える必要があるでしょう。
看護師を辞めるデメリットについて、公的なデータも参照しながら詳しく解説します。
収入が下がる可能性が高い
看護師ではない別の職業に就くことで、収入が下がる可能性があります。
国税庁が発表している令和3年分民間給与実態統計調査によると、給与所得者の平均給与は443万円(正職員:508万円、正職員以外:198万円)です。男女別に見ると、一般的な女性の平均給与は302万円でした。
一方、厚生労働省の「令和4年度賃金基本構造統計調査(一般労働者職種(小分類)別決まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額)」によれば、看護師の給与は月給で35万1800円、賞与年額86万2100円が平均であり、年収にすると508万1300円です。
看護師を辞めることでライフプランに影響が出ないか考慮する必要があります。
キャリアが中断される
看護師としてのキャリアがあっても、他の職業に未経験で就業すれば新人となります。また一度看護師を辞めている場合は、看護師に戻ったとしても、ずっと続けていた人に比べてキャリアアップで後れをとりがちです。
年代にもよりますが、新たに違うキャリアを築くのには勇気と覚悟が必要になるでしょう。看護師を辞めるとなれば、キャリアプランを入念に再度考える必要がありそうです。
辞めたくなる理由の解決にならないこともある
看護師を辞めることが根本的な解決にならない場合もあります。人間関係や忙しさからくるストレスから辞めたいと思う看護師は少なくありませんが、どの業種や職場であっても人間関係や多忙さからくるストレスは大なり小なり生じることがほとんどです。
外からみていると人と関わることが少なそうな仕事でも、実は影で多くの人間関係がつきまとっていることもあるでしょう。また、異業種へ転職することで、看護師時代とは異なる別の苦労に遭遇する可能性もあります。
辞めたいと思ったときの対処法
辞めたいと思ったときにすぐ離職を検討するのではなく、いまできる対処法を実行することも大切です。対処法を試すことで「辞めたい」という気持ちが和らぐだけでなく、今よりもよい環境で働けるようになるかもしれません。
信頼できる先輩や上司に相談する
勤務の調整や人間関係については、信頼できる先輩や上司に相談しましょう。新人看護師であればプリセプターに相談するのがベターですが、場合によっては他の先輩や上司でもかまいません。
業務の負担が大きい場合は受け持ちや夜勤の回数を考慮してもらえたり、体調がどうしても優れない場合は休職について相談したりすることも可能です。人間関係で目に余るハラスメントなどがある場合も、本人への注意や配置転換などがあるかもしれません。
休みを取る
思い切って有給休暇を取得し、いったん仕事から離れてみるのもよいでしょう。「辞めたい」「嫌だ」という気持ちをおさえこんで毎日通勤していると、リフレッシュが難しく、ポジティブな考えよりもネガティブな思考が浮かんできやすくなります。
身体と心を休める時間をつくることで、今の状況や今後どうするかを冷静に考えやすくなるでしょう。
異動を希望する
部署の異動によって「辞めたい」という気持ちが落ち着く可能性があります。部署が変わることで次のような変化があるかもしれないためです。
- きつく当たってくる人と離れられて人間関係の悩みが解消する
- 異動後の業務内容が合っておりやりがいを感じられるようになる
- 忙しさや緊迫感が和らぎ気持ちに余裕をもって働ける
部署異動がすぐに実現する、必ず実現する、とは限りません。しかし「辞める前にダメ元で希望を出してみる」というのも悪くないでしょう。
思い切って転職する
相談したり休みを取ったりしても「辞めたい」という気持ちが消えない場合は、思い切って転職するのも選択肢のひとつです。
看護師が活躍できる場は病院に限らず、クリニック、企業、レジャー施設、学校などさまざまなフィールドがあります。また、フルタイムだけでなくパートタイムという働き方も可能です。
自分に合った職場へ転職することで、看護師のキャリアを中断させずに働き続けられるかもしれません。
転職するときに気をつけること
辞めたくてつらい時期かもしれませんが、何も考えずに離職して転職活動をすると良い結果にはならない可能性が高くなります。
先々で後悔しないために計画的な行動をとりたいところです。転職時に気をつけたいポイントを3つ解説します。
転職のタイミングを見計らう
転職するタイミングによっては、有利にも不利にもなることがあります。たとえば、入職1年~2年目の新人期間は中途採用されにくいけれど、3年目~5年目になるとキャリアアップも視野に入れた転職が狙える、といったタイミングによる違いがでてきます。
また月ごとに求人件数は増減しており、求人件数が多い月もあれば少ない月もあります。転職活動をするタイミングを見計らうことで、スムーズな転職を狙えるでしょう。
看護師の転職におすすめの時期を詳しく知りたい方は、以下の記事でベターなタイミングや月別の求人状況などを解説しています。
キャリアプランを立てなおす
転職した後、どのようにキャリアを描いていくのかを考える必要があります。人間関係や業務の忙しさで頭がいっぱいのときは「今の状況から逃れられさえすればよい」という思考に陥りがちです。
しかし、キャリアプランを立てずに転職をすると、転職先の業務内容にやりがいが感じられないなど別の悩みが出てくる可能性があります。
転職によって解決したい問題だけでなく、どのような業務をどのようにこなしていきたいのかを考えて転職先を選びたいところです。
情報収集を入念に行なう
給与や勤務時間、勤務地などの条件面だけで単純に転職先を決めるのではなく、どんな人が働いているか、職場全体で共有されている価値観などまで細かく情報を集めたいところです。
表面的な情報収集しかできていないと、面接で志望動機がうまく伝えられず内定がもらいづらくなります。仮に転職したとしても、新しい職場でギャップを感じることが出てくるかもしれません。
情報収集には、看護師向けの転職サイトや転職エージェントを活用するのもおすすめです。ここでは2つのサービスを紹介します。
ナース人材バンク
ナース人材バンクは、年間10万人以上の看護師さんが利用する転職支援サービスです。
都道府県、市町村、条件などをかけあわせて看護師の求人が探せます。各都道府県に担当のキャリアパートナーが在籍し、病院やクリニックの内情まで把握するようにしているため、求人票には載っていないけれど気になる部分についても問い合わせが可能です。
看護師に特化したキャリアの積み方や働き方も相談できるため、転職後のキャリアプランを見据えながらベストな求人を探したい人にぴったりです。
ナース専科求人ナビ
ナース専科求人ナビは、全国各地の人材紹介会社と提携することで、業界最大級の求人数を一括検索することができます。人材紹介の年間登録者数70万人、サポート実績は1万件以上と、豊富な実績も魅力のひとつです。
コールセンターが設置されており、無料で転職の電話サポートやアドバイスが受けられるのもナース専科求人ナビを利用するメリットといえます。転職活動が初めての看護師の心強い味方になってくれることでしょう。
辞める・辞めないの判断は慎重に
複数の調査から、多くの看護師が辞めたいと思った経験があることがわかります。今現在「辞めたい」と思っている看護師がいても、自分を責める必要はありません。
ただし、心身に不調がある場合など辞めて後悔しづらいケースがある一方で、安易に辞めてしまうと収入低下やキャリア中断などで後悔する可能性もあります。
看護師が活躍できる場は病院以外にもあるため、キャリアプランを再考しながら職場を変えるのもひとつの方法です。看護師のキャリアを諦めることなく、心身の健康や価値観を大事にしながら働ける職場を探してみてくださいね。
参照
令和4年度賃金基本構造統計調査(一般労働者職種(小分類)別決まって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額)|厚生労働省
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この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。