看護師が理解すべき年金制度の基礎知識。受給金額の計算から手続き方法まで

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看護師は将来いくら年金がもらえるのか。 年金の仕組みを若い頃から理解していないと、将来損をする可能性もあります。今回は看護師が理解しておくべき年金制度の仕組みと、受給できる年金の種類、平均支給額、給付金額の計算方法まで解説します

年金制度の仕組みを理解する

看護師として働いて定年を迎えてから、年金はいくらもらえるのか?年金というと、年を取ってからもらうものというイメージもあり、興味がないかもしれません。年金制度は、日本国内に住所のある20歳以上から60歳未満のすべての国民に加入が義務付けられている国民年金と、民間企業に勤める人が加入する厚生年金があります。公務員・私立学校教職員が加入する共済年金は2015年に厚生年金に一本化されています。ほかにも、病気などさまざまな理由で受給できる年金制度があります。将来、安定して年金を受給するために、理解しておきたい年金制度と看護師の年金事情や損をしないためのポイントや注意点を理解しておきましょう。

看護師が知っておきたい年金制度5つのポイントを解説

看護学校でも、就職してからも教わることのない年金制度。年金制度は日本年金機構が管理している国の制度です。「年を取ってからもらう」と思っている人の多い年金制度。実は、若い人ももらえる年金制度もあります。年金の種類や特徴を正しく理解し、将来損をしないようにしましょう。

1:年金の種類

日本の公的年金制度は、主に以下の2つから成り立っています。

代表的な種類 保険料
(月額)
国民年金 日本国内に住所のある20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金制度 16,610円
厚生年金 会社員・公務員が加入する年金制度。国民年金も加入する必要がある 協会けんぽ 標準報酬月額×18.3%の半額
(半額は会社が負担)

国民年金の保険料は月額16,610円。厚生年金は普段もらう給与(標準報酬月額)×18.3%の半額です。半額は会社が負担してくれることになっていて、給与が多いと、負担額も高くなります。ボーナスからも保険料を支払う必要があり、保険料の自己負担の目安は2万円〜5万円前後です。

働き方によって加入する年金制度は決まっています。負担する年金の保険料も異なっていますし、将来もらえる年金の金額にも差があります。

20歳から60歳になるまでの40年間の保険料をすべて納めると、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。

2:年金制度の仕組み

日本の年金制度は「2階建て」と呼ばれています。1階部分の基礎になる「国民年金(基礎年金)」と、2階部分にあたる厚生年金などの上乗せ年金で成り立っています。

引用:公的年金の種類と加入する制度 日本年金機構

日本の年金制度は、日本国内に住所のあるすべての国民に加入が義務付けられていて、一人ひとりが持っている「基礎年金番号」で管理されています。どこで働き、どのような年金に何年加入し、いくら保険料を支払ったかが基礎年金番号にひもづけされています。基礎年金番号は就職や転職で年金の種類が変わる場合や、年金の支給手続きにおいて必要となります。

基礎年金番号は、日本年金機構や社会保険庁が発行した年金手帳に記載されています。

3:年金は何歳から受給できるの?

2022年2月時点で、年を取ったら受給できる「老齢年金」は65歳以上からもらうことができます。

受給開始時期は「繰り上げ受給」といって、早く年金を受給する方法があります。受給開始を60歳〜64歳に早める方法です。早く受給すると年金額は「繰り上げ月数×0.5%」に減額されてしまいます。

反対に「繰り下げ受給」といって、受給開始を遅らせる方法もあります。受給開始時期を66歳〜75歳に繰り下げると、本来の65歳から受給可能な年金額に「繰り下げ月数×0.7%」が増額されます。

ほかにも、年を取っていなくてももらえる年金制度が2つあります。障害年金と遺族年金で、老齢年金との違いや特徴は以下のとおりです。

種類 受給要件
老齢年金 65歳以上の人
障害年金 国民年金や厚生年金加入中に、病気やケガなどが原因で障害認定を受けた人
遺族年金 国民年金や厚生年金の被保険者、あるいは被保険者であった人が亡くなった場合に、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族に対して給付される

年金制度は年を取った人だけの制度ではありません。病気で働けなくなったりした場合も年金制度が支えてくれます。障害年金は、目や耳、手足の病気だけでなく、がんや糖尿病、うつ病などで働けなくなった場合も受給資格があります。病気の程度によって受給金額は変わります。障害年金の受給資格があるかは、年金事務所、主治医に相談しましょう。

4:年金をもらえないこともある

65歳になっても年金をもらえないことはあります。年金は65歳以上で「10年間の年金の受給資格期間がある人」に支給されます。受給資格期間とは年金保険料を支払った期間と支払いを免除・猶予された期間のことです。合わせて10年以上ないと老齢年金は支払われません。

5:転職しても年金はもらえる

転職しても年金はもらえます。転職で年金制度が変更されていても、基礎年金番号で情報が一元管理されています。きちんと決められた期間、国民年金保険料や厚生年金の保険料を支払っていれば受給できます。

あなたはいくらもらえる?年金の計算方法を解説

年金の受給資格期間が10年以上ある人が65歳以上になると、老齢年金を受給できます。実際に、年金はいくらもらえるのでしょうか。平均支給額や計算方法を解説します。

平均支給額

日本年金機構のホームページによると、2021年4月以降の年金支給額の目安は以下です。

月額
国民年金(老齢基礎年金(満額)) 65,075円
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) 220,496円

目安の年金支給額は、ボーナスを含む平均的な月給43.9万円で40年間働いた場合の厚生年金と、夫婦2人分の老齢基礎年金を合計した金額です。平均月給が少ない場合や、一人暮らしの場合には支給額は少なくなる可能性があります。

計算方法

実際に自分がいくらもらえるのか、計算してみたいと思う人もいるでしょう。インターネットでは、さまざまな計算方法がありますが、簡単に計算できるのは日本年金機構のホームページにある「かんたん試算」を利用する方法です。

正確に知りたい人は「詳細な条件で試算」で、より詳しく知ることができます。

正確な金額は「ねんきん定期便」で確認する

計算するのはちょっと面倒、時間もないという人は「ねんきん定期便」で確認する方法がおすすめです。特に、転職を繰り返していたり、結婚や子育てで夫の扶養になっていたりするなど年金の計算が複雑になる人におすすめの方法です。日本年金機構が発行する「ねんきん定期便」は誕生月に郵送され、今までの加入実績に応じた年金額を通知するお知らせです。誕生月に手元に届いたら、確認するようにしましょう。

将来損をしないために、知っておきたい注意点

年金の保険料を支払っていれば、年金を受給するときに損をしたくないですよね。パートやアルバイトでの年金制度と、転職時の注意点を解説します。

パート・アルバイトは就業時間・日数で年金制度が変わる

パートタイマー・アルバイトでは就業時間・日数によって、国民年金だけに加入するか、厚生年金に加入するかが変わります。条件は以下になります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上ある
  2. 雇用期間が1年以上見込まれる
  3. 賃金の月額が8.8万円以上
  4. 学生でない
  5. 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めている

※被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
※国または地方公共団体に属する事業所および特定適用事業所以外の適用事業所で、労使合意に基づき、短時間労働者を健康保険・厚生年金保険の適用対象とする申し出をした適用事業所

目安としては、週3日以上勤務すると厚生年金に加入します。国民年金だけでは、将来の年金受給のときに1階建てになってしまい、受給額が少なくなります。年金の受給額を考えると、厚生年金にも加入し、2階建てにしておきたいですよね。どれくらい働いたらいいか悩む人は、将来を考えて、週3日以上働くことを目安にしておくのがおすすめです。

転職の空白期間で年金が途切れないように注意!

年金の資格喪失日は退職日の翌日です。退職した同月に転職するか、月末に退職して翌月に転職するなら、空白期間はできません。空白期間なしの場合には、会社が手続きしてくれるため、自分で手続きする必要はありません。少し休んでから転職したい、転職先は決まっているけれど入社が数カ月先といった場合には、継続して厚生年金に入ることができません。いったん国民年金に加入するため、自分で国民年金加入手続きをする必要があります。転職時には、うっかり年金の空白ができてしまいがちです。十分注意しておいてください。

年金制度を理解し、将来損をしないために備えよう

複雑そうにみえる年金制度。日本国内に住所のある20歳~60歳のすべての人が加入する国民年金と、サラリーマンやアルバイトが加入する厚生年金に分かれていることを覚えておきましょう。さらに、年を取っていなくてももらえる年金制度があるという点だけでも理解していれば大丈夫です。年金は老後にもらえるだけでなく、障害や死亡のリスクにも対応して、生活を支えてくれる制度です。将来何かあった時のために、知識だけでも持っていてくださいね。

将来の年金受給額は、給料や加入する期間、働き方によって変わります。正社員からアルバイト・パートに変わるときには、納入漏れや働く日数に注意しましょう。将来「受給額が少なかった」「損した」とならない働き方をしていきたいですね。

参考

1)ねんきんネット 日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/n_net/index.html

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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