近年、徐々にではありますが男性…
男性看護師は辛い?活躍の場とキャリアアップ例
公開日:2022/2/22
最終更新日:2024/2/2
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近年男性看護師の人数が増えていますが、まだまだ女性が多い看護師の世界。働き方やキャリアプランについて相談できる男性看護師が身近にいない場合もあるでしょう。今回は男性看護師の給与・年収事情や、キャリアアップを考えるうえで役立つ情報を解説します。
目次
男性看護師がやりがいをもって働くために
ナース専科で勤務先に「男性看護師がいますか?」とアンケートをしたところ「いる」は約6割で自身が男性看護師との回答は7%弱でした。つまり7割近くの職場で男性看護師は働いていることがうかがえます。
男性看護師は増加傾向
男性看護師は厚生労働省の報告によると、2008年~2018年の就業者数の年次推移は以下のようになっています。
年次 | 男 | 女 | 総数 |
2008年 | 44,884人 | 832,298人 | 877,182人 |
2010年 | 53,748人 | 898,975人 | 952,723人 |
2012年 | 63,321人 | 952,423人 | 1,015,744人 |
2014年 | 73,968人 | 1,012,811人 | 1,086,779人 |
2016年 | 84,193人 | 1,065,204人 | 1,149,397人 |
2018年 | 95,155人 | 1,123,451人 | 1,218,606人 |
引用:平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(厚生労働省)
2008年の男性の割合は5.1%だったのに対し、2018年には7.8%となり、人数も倍以上に増えてきていることがわかります。
また、日本看護協会が公開している『令和2年 看護関係統計資料集』によると、2018年の男性看護師の就業場所別の就業者数は、病院や訪問看護ステーション、診療所が多いようです。
病院 | 83,806人 |
訪問看護ステーション | 2,717人 |
診療所 | 2,329人 |
介護老人保健施設 | 1,912人 |
看護師等学校養成所・研究機関 | 1,207人 |
居宅サービス等 | 1,114人 |
介護老人福祉施設 | 970人 |
社会福祉施設 | 688人 |
事業所 | 77人 |
市区町村 | 43人 |
都道府県 | 37人 |
保健所 | 8人 |
その他 | 247人 |
男性看護師の方が女性看護師より年収が高い
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、男性看護師の平均年収のほうが128,600円高いことがわかりました。
性別(平均年齢) | 平均月収 | 平均ボーナス | 平均年収 |
---|---|---|---|
男性(37.9歳) | 359,900円 | 908,400円 | 5,227,200円 |
女性(41.1歳) | 350,600円 | 856,600円 | 5,063,800円 |
男性の年収が多くなっている理由としては、女性は妊娠・出産・育児などで非常勤に切り替わる、男性は危険手当が出るような特殊病棟での勤務が多い、住宅手当や家族手当などの上乗せがあるなどが考えられます。
年収についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。
男性看護師特有の辛いこと・悩みとは?
職場に男性看護師がひとりしかいない…という心細さだけではなく、様々な辛いことや悩みがあるようです。ナース専科では以下のような口コミ、反応が目立ちます。
- 患者さんや家族から「男性看護師NG」といわれてしまう
- トイレや更衣室、仮眠室がない、または医師と兼用で場所が遠い
- 女性大勢のなかに男性が少数だとモテる、遊んでいると勘違いされる
- 少数で目立つためか会議でリーダー、入浴担当、夜勤専従にさせられるなど、面倒な仕事を押し付けられることもある
- 突然、不機嫌になったりする、察しろ文化がわからない
- 若い女性の患者さんへの対応にすごく気を使う
- 医師やリハビリ職種と間違えられて看護師だと思われない
また、同僚や患者さんからセクハラやパワハラの被害を受けたという声も。男性だけの飲み会で裸にさせられた、患者さんにお尻や腕など身体を触られた、性的な話題をオープンな場で投げかけられた、などケースは様々ですが、ハラスメントの被害にあっても声を上げにくい現状があります。こうしたときのために、男性看護師のコミュニティで情報交換をしたり、弱音を吐いたりする機会を少しずつ作っていくことも大切です1)。
男性看護師のコミュニティ
病院などでは男性看護師会、他職種を含めたサークルなどの活動が行われていることもあります。また、匿名で相談できるカウンセラーなどが在籍していることもあるでしょう。SNSなどでも男性看護師のオフ会なども行われています。所属している施設にそうした集まりがなくとも、全国には男性看護師の集まりがさまざまあります。ここでは3つご紹介します。
団体名 | URL |
---|---|
全国男性看護師会 | https://www.samurainurse.com/ |
日本男性看護師会 | http://nursemen.net/ |
日本看護連盟青年部 | https://kango-renmei.gr.jp/about/seinenbu |
各都道府県の看護連盟青年部は男性看護師に限ったものではありませんが、若手男性看護師も多く参加しています。日頃の悩みや不快な思いをしたとき、自分を責めたり一人で抱え込まず、こうしたコミュニティを活用することもひとつの手段です。
男性看護師が活躍するシーンは?
男性看護師は辛いことばかりではありません。ナース専科で「男性看護師の活躍するシーン」をアンケートしたところ下記のような意見がありました。
- 暴れる患者さんの対応
- 患者さんの搬送や移動
- 患者さんの移譲、体位交換
- 思い機器の持ち運び
- 女性看護師がテンパっているときに、穏やかに接することができる
- 合理的で冷静な判断
- クレーム対応
- セクハラ対応
- 迷惑電話の対応
- リーダーシップがある
力が求められるような仕事はやはり欠かせない存在のよう。また、女性が慌ててしまうようなシーンでも時に男性ならではの落ち着きで対処して頼りになるという声も数多く見られました。
男性看護師のキャリアアップ例
男性看護師にはどのようなキャリアアップがあるのでしょうか。それぞれ違う分野で活躍する4人のご経歴を紹介します。
Aさん(フライトナース候補生)の場合
新卒でオペ室に配属となり3年経験を積んだ後、ICUに異動して2年働きました。そのときにドクターヘリやフライトナースの活動を知り、初期治療や災害医療などにも興味を持つようになりました。そして、フライトナース・スキルアップのために三次救急の病院へ転職。救急外来で5年経験を積み、現在はフライトナース候補生として、ACLS(二次救命処置)やJPTEC(病院前外傷教育プログラム)、日本航空医療学会のドクターヘリの講習などを受けて訓練しているところです。
※フライトナースになる条件は各施設で異なります
Bさん(訪問看護ステーション勤務)の場合
私は元々精神科で働きたかったのですが、新卒では脳神経外科病棟の配属でした。2年後に希望を出し、精神科病棟へ異動。精神科病棟では急性期病棟と認知症病棟でそれぞれ3年働きました。その間に結婚して子どもが生まれ、パートナーも看護師で夜勤をするのは厳しい状況だったので、精神科に特化した訪問看護ステーションに転職をしました。オンコールは週に1回程度はありますが、毎回出勤するわけではないのと、現在は病棟で夜勤をやっていたときと同じくらい給与をいただけているので満足しています。仕事も家族との時間も大切にしていきたいです。
Cさん(クリニカルスペシャリスト)の場合
看護学校を卒業してからはICUと外来カテーテル室で6年ほど働いていました。結婚したことをきっかけに病院を離れ、医療機器を扱う企業に転職。クリニカルスペシャリストとして、担当病院をまわり、医師や臨床工学技士、看護師などに対して扱っている医療機器の教育指導、営業などをしています。ビジネスマナーや営業スキルなどを身に着ける大変さはありますが、ICUや外来での経験、知識が生きてくるので楽しく仕事しています。
Dさん(認定看護管理者)の場合
新卒で救急外来に配属されて5年、小児科病棟に異動して約10年になります。小児科病棟には男性看護師は常に1~2人と少数で、思春期の女児のケアなど難しさを感じることもありますが、ドラマの影響か最近では男性看護師に対する風当たりは少し柔らかくなったように思います。数年前には認定看護管理者のファーストレベルの教育課程を修了し、小児科病棟の主任となりました。男性看護師で看護管理者はまだまだ少ないかもしれませんが、看護師の教育、マネジメントにも力を入れていきたいと思っています。
男性看護師としての働き方とキャリアプランについて理解を深めよう
看護師の世界でもまだまだ少数派の男性看護師。男性特有のさまざまな辛いことや課題もあるなか、全国や施設ごとにそれぞれ工夫されていることも多いようです。男性看護師としてのキャリアも多様化するなかで、具体的なキャリアイメ―ジや活用できるコミュニティの情報を把握して、働き方やキャリアプランを考えていきましょう。これからは男性看護師という言葉がなくなるくらい一般的にも看護師のなかでも馴染んでいくようになればと願っています。
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この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。