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透析室看護師とは?仕事内容・やりがい・向いている人の特徴
公開日:2021/9/29
最終更新日:2023/11/21
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糖尿病や慢性腎臓病といった生活習慣病患者の増加に伴い、透析治療を受ける方も年々増加しています。今後さらに透析看護の需要は高くなると予想されますが、「むずかしそう」「いろいろ覚えることが多くて大変そう」といったイメージがあるのも事実です。
今回は、そんな透析室で働く看護師の役割・仕事内容・やりがいについて紹介します。これから透析看護に挑戦したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
透析室ってどんなところ?
透析室とは、糖尿病や慢性糸球体腎炎などで腎不全になった患者さんが「人工透析」を受ける施設です。末期の腎不全になると、「血液を濾過して体内の不要物を排泄する」という腎臓の働きが低下もしくは喪失し、そのままでいると尿毒症になり命に関わります。
そのため、患者さんは週3回ほど透析室に通い、人工透析で血液を濾過(浄化)することで健康を維持しています。透析患者さんにとって、人工透析は命をつなぐ重要な治療です。腎移植を受けない限り永久的に透析を続ける必要があり、中には30年以上透析治療を受けている患者さんもいます。
人工透析は1回につき4時間前後を要し、その間はベッドに横になって透析装置(血液回路)につながれ、自由に身動きもとれません。患者さんによっては血圧低下や不均衡症候群などの症状を起こすこともあり、常に合併症と隣り合わせの状態で治療を受けています。
このように、人工透析は患者さんにとって心身ともに負担の大きな治療です。患者さんの中には働き盛りや子育て中の方、高齢になって車椅子生活の方もおり、日常生活と治療の両立ができなければ健康を維持できません。すべての患者さんが安全で快適に透析治療を受けられるように、家庭や職場でも健康的な生活が送れるように、あらゆる角度からサポートすることが透析室看護師の役割といえるでしょう。
透析室看護師の仕事内容
では、実際に透析室看護師がどのような仕事をしているのか見ていきましょう。
透析装置の準備(プライミング)
患者さんが入室する前に、透析装置の準備を行います。血液回路のチェック・除水量の設定など、一通りの準備をしてスタンバイ。機械操作は緊張しますが、安全に取り扱えるようになるまではマンツーマンで指導を受けます。
バイタルサインチェック
患者さんが入室したら、体重測定・バイタルサインチェックを行います。ほかにも、体調に変化はなかったか、シャント(透析用の血管)のトラブルはないかなどの観察を行い治療に役立てます。入室から透析開始までは非常に慌ただしいのですが、しっかりとコミュニケーションをとり情報を把握することが重要です。
穿刺
人工透析では、「内シャント」と呼ばれる透析用の太い血管や、「グラフト」と呼ばれる人工血管に針を刺し、血液回路に接続して血液を浄化します。太い針を穿刺するため患者さんの苦痛が大きく、中には穿刺しづらい血管の方もいるので熟練の技が必要です。透析看護の中で、もっとも緊張する処置のひとつです。
透析中の観察・ケア
透析中は血圧低下や不均衡症候群などの合併症が起こりやすいため、細心の注意を払って全身状態を観察します。急激な血圧低下による意識レベルの変化、嘔吐による誤嚥のリスクもあるため、異常に早く気づき対処することが重要です。同時に、血液回路や穿刺部の異常がないかもこまめにチェックします。
また、透析患者さんの中には神経障害・末梢循環障害による「足病変」を抱えている方が少なくありません。そのような方に対しては、透析中に傷の観察や処置を行い、悪化防止のための指導を行うこともあります。
返血・抜針
血液回路から身体の中に血液を戻す作業を「返血」といいます。血液浄化が終了したら返血を行い、シャントに穿刺していた針を抜針・止血します。
透析終了後のバイタルチェック・記録
すべての治療・処置が終了したら、再度バイタルチェックや全身状態の観察を行います。状態が安定したことを確認し、安全に帰宅してもらうために必要な作業です。透析記録や看護記録の記入をし、カンファレンスで情報共有を行うこともあります。
生活指導
腎不全の患者さんは、週3回の人工透析だけでなく、普段の健康管理が非常に重要です。例えば、塩分や水分の過剰摂取は心不全の原因になり、命に関わることもあります。また、糖尿病や腎臓病などの基礎疾患を抱えている透析患者さんは免疫力が低く、風邪やインフルエンザから重症肺炎になることも少なくありません。
わずかなきっかけで全身状態が悪化することもあるため、日常的に十分な体調を管理してもらうよう、患者さん・家族へ生活指導を行っています。
透析看護はむずかしい?仕事の特徴・やりがいについて
透析室では、透析装置の操作やシャントの穿刺など、一般病棟では経験しない特殊な処置が多くあります。疾患や合併症の病態生理はもちろん、透析に関する専門的な知識・技術を身につけるため、学習と実践を繰り返しながら根気強く学び続けることが重要です。
患者さんの中には何十年と透析治療を受けている方もいるため、下手をすると「新人看護師より透析に詳しい」ということもあります。そのような患者さんにたじろぐこともありますが、患者さんからの指摘を素直に受け止め、謙虚に学び続けられる人は透析室に向いているかもしれません。
また、透析に関する専門知識や技術だけでなく、自宅での療養生活にも配慮できる幅広い視野が必要です。在宅療養を支える家族のサポートや生活指導など、包括的なケアが求められます。
このように、透析看護の醍醐味は「患者さんの生活・治療を全般的に支える」という点にあり、その分むずかしさもあります。しかし、きめ細やかな看護や指導によって全身状態が安定したり、足病変が改善したりするなどやりがいを感じられる分野です。
透析看護を極めたいという方は、透析看護認定看護師や慢性腎臓病療養指導看護師の資格取得を目指すと、さらなるキャリアアップが期待できます。
専門性の高い透析看護はやりがいも十分!
透析看護は、一般病棟とは異なる専門的な知識・技術を必要とするため、慣れるまでは大変かもしれません。しかし、知識や技術が身につけばつくほど、より専門性の高い看護が可能となり、患者さんからの信頼も得られます。
人工透析が必要な患者さんは年々増加しており、透析室看護師の需要も高い状態です。興味のある方は、ぜひ透析看護に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人遠藤愛(えんどうあい)
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関東の病院で外科・内科・地域包括ケア病棟、地域連携室に勤務。
その後、介護施設、訪問看護に従事。看護学校での外科看護臨時講師の経験あり。